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⚽SBS杯国際ユースサッカー 2022年の熱戦振り返ります

 8月25日から28日まで、静岡県内3会場で熱戦が繰り広げられた2022SBSカップ国際ユースサッカー。3年ぶりに開催された今大会は、最終戦でU-18ウズベキスタン代表がU-18日本代表をPK戦で破り、初優勝しました。世界各国のスター候補たちが激突した3日間のダイジェストをお届けします。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 村松響子〉

勝利へ執着心 ウズベキスタン代表が栄冠

 2022SBSカップ国際ユースサッカー(日本サッカー協会、県サッカー協会、静岡新聞社・静岡放送主催)は最終日の28日、エコパスタジアムで最終戦2試合を行い、U-18(18歳以下)ウズベキスタン代表が初優勝した。

日本―ウズベキスタン 前半、ゴール前でウズベキスタン選手と競り合う日本の五木田(手前左)=28日夜、袋井市のエコパスタジアム
日本―ウズベキスタン 前半、ゴール前でウズベキスタン選手と競り合う日本の五木田(手前左)=28日夜、袋井市のエコパスタジアム
 ウズベキスタンは1-1からPK戦の末にU-18日本代表を破り、勝ち点を7に伸ばして頂点に立った。2位には勝ち点6で静岡ユースが入り、U-18日本代表は3位、U-18ウルグアイ代表が4位だった。 
  
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ウズベキスタン 1(0―1 1―0 PK5―4)1 日本
▽得点者【ウ】イスラモフ(ジュラボエフ)【日】坂井(名願)

 【評】日本は後半に追い付かれ、PK戦の末、ウズベキスタンに敗れた。
 日本は前半17分、左サイドを崩し、最後は坂井が中央で押し込んで先制した。後半は高い位置を取る相手に押し込まれ、20分にミドルシュートを許して同点とされた。その後は前掛かりに攻撃を仕掛けたが、決定力を欠きPK戦で力尽きた。

 

またPK 日本、静岡戦の経験生かせず

 日本はまたも後半に同点に追い付かれ、逃げ切りに失敗。PK戦でウズベキスタンに敗れ、優勝をさらわれた。全く同様の展開だった静岡戦の苦い経験をこの日も生かすことはできなかった。
 終盤の不用意なパスで失点したのを教訓に、試合の締め方を確認して意思統一したはずだった。だが、後半20分、球際の強さで圧倒されてこぼれ球を回収されると、遠目からのシュートをたたき込まれた。右サイドバックに入って先制点を挙げた坂井は「最後に体を張る場面や決定力は海外選手が上手だった」と脱帽した。
 全体練習は1~2回のみで本番に臨んだ急造の日本。冨樫監督は各選手が自チームとは異なる守備システムでも「いいトライをしてくれた」とたたえた。一方「大胆に足を振ることがなかなかできなかった」と3試合で3得点に終わった決定力不足を課題に挙げた。
 敗れはしたが、将来A代表に選ばれる可能性がある選手たちは世界レベルを身をもって感じた。GK中村は「結果は出なかったが、静学に帰ってまた日の丸を付けるようにグレードアップしたい」と決意を新たにした。(名倉正和)

 

勝利への執着心勝る ウズベキスタン

 勝利への執着心で勝ったウズベキスタンが栄冠をつかんだ。今大会2得点を挙げたアブドゥラザコフ・ノディルベク主将は「相手は自分たちを格下だと思っていただろうが、チームの結束力で負けなかった」と歓喜をかみしめた。
 球際の強さとシュートの威力は際立っていた。日本戦は前半に先制されたが、後半20分にイスラモフのゴールでしぶとく追い付き、PK戦に持ち込んだ。初日の静岡戦に続くPK勝ち。主将は「PKを想定して練習してきたので勝つ自信があった」と振り返った。
 チームの要として奮闘したのは最優秀選手に選ばれたフォミン。チームメートより1歳年下だが、視野が広くピッチで攻撃のタクトを振るった。ニショノフ監督は「すべて選手の力。自分たちで考え、成長してくれた」と目を細めた。

2位に静岡ユース ウルグアイ圧倒、世界に力示す

静岡―ウルグアイ 後半36分、チーム3点目のゴールを決める静岡・斎藤晴=エコパスタジアム
静岡―ウルグアイ 後半36分、チーム3点目のゴールを決める静岡・斎藤晴=エコパスタジアム
静岡 3(1―0 2―0)0 ウルグアイ
▽得点者【静】斉藤(後藤)オウンゴール、斎藤晴(山藤)

 【評】攻撃がかみあった静岡が3-0でウルグアイを圧倒した。
 静岡は前半39分、高橋、後藤とつなぎ、斉藤柚のシュートで先制した。後半28分に石川のクロスがオウンゴールを誘ってリードを広げると、36分には途中出場の斎藤晴がショートカウンターからGKとの1対1を冷静に決め、ダメ押しの3点目を奪った。

 

恐れずパスつなぐ 静岡のスタイル証明

 短いパスを恐れずつなぎ、静岡の力を世界に示した。南米の雄ウルグアイを圧倒し3-0。行徳主将は「静岡代表の誇りを持って戦い、自分もチームも成長できた」と胸を張った。
 日本代表との試合はPK戦で勝利したが、内容には不満が残った。ボールを奪った次のプレーの質を上げることをテーマに臨んだ最終戦。攻守で複数人が常に連動し、好機をつくった。
 先制点は鮮やかだった。右サイドから高橋がドリブルで中に切り込み、後藤にスルーパス、マイナスの折り返しを斉藤柚が確実に決めた。「チームで狙っていた形。短時間だったが、仲を深められた」。斉藤柚は充実感をにじませた。
 海外選手の強度とスピードを経験し、各自大きな財産を得た。MFの安藤が「スライディングで足が2、3歩伸びてきた」と驚けば、DFの行徳も「ボールがない時の相手FWとの体のぶつけ方や距離の取り方を学べた」と振り返った。
 3試合で他チームを上回る計7得点を挙げ、静岡のスタイルが通用すると証明した。鈴木監督は「世界を体感し、選手は自信を深めたはず。所属チームに帰ったら周囲に経験を伝え、静岡のサッカーを底上げしてほしい」と期待した。(寺田拓馬)

 

静岡が上回っていた ウルグアイ代表マルセロ・ブローリ監督の話

 U-18ウルグアイ代表マルセロ・ブローリ監督の話 静岡が私たちを上回っていた。日本が最近遂げた成長はユースにも表れている。ダイナミックでスペースの攻め方もうまい。今回の国際試合は貴重な経験になった。

 

 

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静岡ユース―U―18日本代表 前半、相手の猛攻からゴールを守る静岡ユースのGK石坂(中央)=草薙総合運動場陸上競技場(写真部・田中秀樹)
 

第2日に金星、PK戦で日本代表を撃破

静岡(3) 1(0―0 1―1 PK4―3)1 日本(4)
▽得点者【静】斉藤(PK)【日】名願

 【評】試合終了間際に追い付いた静岡がPK戦で日本を下した。
 前半からボールを支配したのは日本。両サイドを広く使い、クロスからゴールを狙った。静岡も38分高橋、山藤とつなぎ、斉藤がいい形でシュートを放った。
 日本の先制点は後半29分、コーナーキックからのこぼれ球を名願が決めた。静岡は追加時間に斉藤のPKで同点としてPK戦に突入すると、GK石坂が2本のシュートを止めて勝利した。

GK石坂(藤枝東高) 勝利の立役者に


 チームの一体感を示し、静岡が金星を挙げた。「激しく泥臭くを体現できた」。同年代の日本代表を下し、鈴木監督は選手の奮闘をたたえた。
 コロナ禍で国体出場の機会を失った世代で、県選抜としてごく短い活動期間で今大会に臨んだ。初戦のウズベキスタン戦は3失点して守備の課題が浮き彫りになったが、この日は1対1ではなく数的優位をつくって我慢強く守った。
 勝利の立役者は藤枝東高のGK石坂。県総体で敗れた悔しさを胸に、「自分の特長は手の長さ。実力を知らしめたい」と誓っていた。見せ場は同点に追い付いて迎えたPK戦。PKには苦手意識があったが、冷静に相手の動きを見極め、シュートを2本ストップ。勝利が決まると、仲間の元に駆け寄った。
攻撃面では右サイドの高橋に厳しいマークが付き、チーム全体でシュート4本に終わった。終了間際に得たPKを決めた清水ユースの斉藤は「自分がボールを収め、攻撃の起点をつくりたかった。もっと成長しないと」と決意を示した。
 28日はわずかに優勝の可能性を残し、ウルグアイと対戦する。指揮官は「結果を意識せず、挑戦者として戦いたい」と前を見つめた。(寺田拓馬)

 

女子U-16 静岡選抜が山梨選抜に逆転勝ち

 26日の第2日に行われた女子U-16のエキシビションマッチで静岡選抜は終盤に攻撃力を発揮し、5-2で山梨選抜に逆転勝ちした。女子U-16は国体サッカーで今年創設された種別。東海を制して全国舞台に挑む静岡は、同じく国体切符を持つ山梨との前哨戦に勝ち自信を深めた。

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静岡選抜―山梨選抜 後半18分、3点目のゴールを決める静岡選抜の藤原(左)

 3、4点目を挙げたのは藤枝順心高の藤原。50メートル7・0秒の快足と正確なシュートで試合を決め「後半の失点に絡んでしまい、ギアを上げた。周囲とつながる意識がゴールにつながった」と振り返った。
 前後半とも開始から10分以内に失点したのは課題。同じく藤枝順心高の弦間主将は「全体で連動し、声をかけ合ってコンパクトに保たないといけない」と守備面を反省した。
 東海ブロック大会決勝も0-2から愛知に逆転勝ちし、先制されても動じないのがチームの強み。渡辺監督は「得点能力が高く、選手の意志で勝ちきる力がある。守備を修正して国体に臨みたい」と意欲を新たにした。

 

歴代優勝チームは? 今大会に出場した4チームの特徴もおさらいします

 

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 SBSカップは1977年、静岡放送の開局25周年を記念し、日本と韓国の高校親善大会としてスタートした。第5回大会から欧州や南米のクラブを招待。2002年の日韓W杯に合わせ、海外の各国代表と日本代表、静岡ユースが争う現在の方式になった。
 日本で最も歴史あるユース年代の国際大会で、過去にはブラジルのロナウジーニョら世界的選手が真夏の静岡で経験を積み、世界に羽ばたいた。
 

今大会出場チーム紹介

 ⚽静岡ユース ハードワークで泥臭く

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 静岡ユースは県内高校とクラブユースからバランス良くタレントを集めた。攻守に全員がハードワークし、ボールを保持しながら泥臭さも兼ね備えたサッカーを目指す。
 攻撃の軸は清水ユース勢でキープ力に優れたFW斉藤とサイド突破が武器のMF安藤。静岡学園高の小柄なドリブラー高橋にも注目だ。守備では強さと技術を兼ね備えた静岡学園高のCB行徳の統率力に期待が掛かる。

 

 ⚽U-18日本代表 高いプレーの質、強度

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 プレーの質と強度で高い要求に応えられるタレントが集まった。
 攻撃をけん引するのは、周囲と常に連動して動く川崎ユースのFW五木田と、ドリブルが武器の大宮ユースのFW高橋。守備陣は状況判断に優れた大宮ユースのDF小沢、フィジカルが強い横浜FCユースのDFヴァン・イヤーデンらが軸になる。清水ユースのDF石川、静岡学園高のGK中村のプレーにも注目が集まる。

 

 ⚽U-18ウルグアイ 攻守のバランスを重視

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 南米らしくボールの扱いと攻守のバランスを重視する。上のカテゴリーでプレーする選手も多い。FWレンソ・サンチェスはスピードと決定力を兼ね備え、MFアウグスト・スカローネはテクニックとキックに優れている。
 ともにU-20代表経験も持つ。国内1部リーグでプレーするMFフランコ・ゴンサレスは攻守に貢献する。

 

 ⚽U-18ウズベキスタン 柔軟さ、瞬発力も武器

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 相手チームのスタイルを見て臨機応変に対応する柔軟性に優れた戦い方を志向する。
 主将のアブドゥラザコフ・ミルコミルは対人などに強さを発揮するDF。攻撃の鍵を握るのは、MFアブドゥラザコフ・ノディルベク。速い動きと瞬発力で攻撃の起点になる。
 前線で力強さを発揮するイスラモフ・リアンの得点力にも警戒が必要。
〈2022.08.24 あなたの静岡新聞〉

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