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森林、草地に入るときは要注意! マダニ媒体感染症、確認相次ぐ

 マダニが媒介する感染症で、症状が悪化すると死亡する恐れのある「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の人への感染事例が静岡県内で相次いでいます。どのように対策を取ればよいのでしょうか。現状と注意点をまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 安達美佑〉

静岡県、今年に入り6人感染と発表

 静岡県は(7月)5日、県西部保健所管内に住む高齢男性がマダニの媒介による重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染したと発表した。今年に入って5例目(8月16日時点で6人の感染を確認)。

人を吸血するタカサゴキララマダニ(静岡県提供)
人を吸血するタカサゴキララマダニ(静岡県提供)
 県によると、男性は1日から発熱や嘔吐(おうと)があり、医療機関に救急搬送されて入院した。県環境衛生科学研究所のPCR検査で感染が判明した。
 マダニにかまれた跡は確認されていないが、男性は普段から農作業をしていて、ダニにかまれることが多かったという。
 SFTSはウイルスを保有するマダニにかまれたり、感染した犬猫の体液に触れたりして感染する。重症化した場合、死に至ることもある。県は野山や畑などに入る際、肌の露出を少なくするよう呼びかける。(社会部・佐野由香利)
 〈2022.07.05 あなたの静岡新聞〉

「かまれないことが最も重要」 長袖、長ズボンで肌の露出控えて

 マダニが媒介する感染症で、症状が悪化すると死亡する恐れのある「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の人への感染事例が静岡県内で相次いでいる。昨年本県で初めて確認されたが、今年は既に昨年1年間の状況を上回った。県感染症対策課は「野外で活動する機会が増える夏場は特に注意が必要」と呼びかける。

 県内では昨年4人、今年は8月16日時点で6人の感染が確認された。10人のうちの8人は農作業や山林での伐採中にマダニにかまれたとみられる。居住地別では県西部が6人で、中部が3人、東部が1人。
 SFTSは、主にウイルスを保有するフタトゲチマダニやタカサゴキララマダニにかまれることで感染する。発症したペットのイヌやネコの体液を介した感染の可能性もあるという。
 初期症状は発熱や全身の倦怠(けんたい)感、嘔吐(おうと)、下痢など。重症化すると意識障害やけいれん、呼吸不全などが現れる。国立感染症研究所は致死率を6~30%としている。
 県内では、県が2013~15年に行った調査でSFTSウイルスを保有するマダニが見つかった。人への感染は西日本で多かったが、野生動物に付着して運ばれ、東日本でも徐々に広がってきた。
 治療は対症療法のみのため、「マダニにかまれないことが最も重要」(県感染症対策課の担当者)。マダニが多く生息する森林や草地に入る場合は長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴などを着用して肌の露出を控え、虫よけスプレーを塗るなどの対策を勧めている。かまれた場合は早めに医療機関を受診し、マダニの除去や洗浄を受ける必要がある。
 県環境衛生科学研究所(藤枝市)微生物部の有田世乃班長は「今後は県内でも人への感染が増える可能性がある。過度に恐れる必要はないが、十分な対策を心がけてほしい」と訴える。
 〈2022.08.17 あなたの静岡新聞〉

ペットも注意! 獣医師会が診断・対応マニュアル作成

完成した「SFTS感染動物対応マニュアル」について説明する県獣医師会の杉山和寿副会長=14日、静岡市清水区
完成した「SFTS感染動物対応マニュアル」について説明する県獣医師会の杉山和寿副会長=14日、静岡市清水区
 ※2021年6月17日 あなたの静岡新聞から
 マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」によって犬や猫が感染、発症し、死ぬ例が静岡県内で相次いで確認されている。感染した動物から人にうつるケースも判明し、県獣医師会は迅速な診断と対応に向けてマニュアルを作成。注意喚起に本腰を入れる。
 県内では昨年(2020年)8月に浜松市で猫への感染を初確認し、12月からこれまで同市で猫5匹が感染した(うち死んだのは4匹)。犬は静岡市で2匹が感染し、いずれも死んだ。2~17歳とさまざまで、室内飼いも多数含む。
 感染は動物が発熱したり、立ち上がれなくなったりして、飼い主らが動物病院を受診したことをきっかけに診断された。1カ月ほど入院し、検査で陰性確認後、退院した回復例もある。
 マニュアルは実例を基に、診断方法や治療者の防護策、死骸の処理方法などを盛り込んだ。このほど同会総会で会員に説明した杉山和寿副会長=静岡市清水区=は「感染していても症状を示さず、一見分かりにくい場合も想定される。西日本が発生地域とされてきたが、静岡県も該当するようになったという意識で注意喚起したい」と話す。動物の感染事例は一般的に周知されておらず、人のように届け出の義務がなく、同会では飼い主に協力を求めて犬や猫の抗体検査を行う大規模調査も検討する。
 同会によると、SFTSの致死率は人が約10~30%、犬が約40%、猫だと約60%に上る。同会はホームページで17日から飼い主向けのリーフレットを掲載する。(社会部・大須賀伸江)

 <メモ>動物の重症熱性血小板減少症候群(SFTS) SFTSウイルスが原因の感染症。主にウイルスを保有するマダニにかまれて感染する。人間だけが発症するとされてきたが、2017年に和歌山県で猫、徳島県で犬の発症が確認され、世界初事例となった。猫は発症率が高いとされ、犬は一定数が症状が表れない「不顕性感染」を見込む。発症すると発熱や食欲低下を引き起こす。感染した動物の排せつ物の処理時や、かまれるなどして人にもうつるとされる。
地域再生大賞