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富士登山 安全に楽しむには? 夏山シーズン最盛期

 夏山シーズンの最盛期に入った富士山。静岡県や富士山周辺の自治体は、登山者に安全に楽しんでもらうため、さまざまな工夫を凝らしています。行政の取り組みやその背景についてまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

落石注意! 登山時にはヘルメット 無料貸し出しで定着図る

 富士山の登山者の安全確保と意識啓発に向け、富士宮市が夏山シーズンの間、富士宮口5合目で登山ヘルメットの無料貸し出しを行っている。市の担当者は「登山イコール『ヘルメットを着けるスタイル』を定着させたい」と狙いを語る。登山口への配備は噴火の際の対応など、防災面でも期待できる。

登山ヘルメットを借りる家族=富士山富士宮口5合目
登山ヘルメットを借りる家族=富士山富士宮口5合目
 2019年に山梨県側登山道で、落石で登山者が亡くなる事故が発生したことを踏まえて無償貸与を始めた。富士山では突然の風雨に襲われたり岩場では落石の危険性があったりすることから、20年度にクラウドファンディングを活用するなどしてヘルメットを購入した。大人用と子供用を計50個配備し、21年夏から富士宮口5合目の富士山総合指導センターで貸し出しを始めた。
 今夏は7月10日の開山日から8月1日までに50件近い利用があった。子ども用として借りていく人も多いという。静岡市清水区から妻と娘とともに訪れた会社員加藤博之さん(50)は「偶然見かけて3人分借りた。宝永山で落石の危険があると聞いたので助かった」と話した。同センターに常駐する富士登山ナビゲーターは「昨年よりも登山者が増えた分、利用も増えている印象」と語る。
 ヘルメットは期間中、午前6時20分から午後5時10分ごろまで貸与していて、返却箱も用意している。 (富士宮支局・吉田史弥)
 〈2022.08.03 あなたの静岡新聞〉

きっかけは2019年の死亡事故 山梨側登山中

 ※2019年8月26日 静岡新聞夕刊から

夏の富士山頂付近=2020年8月9日撮影(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号から」)
夏の富士山頂付近=2020年8月9日撮影(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号から」)
 26日午前7時ごろ、富士山の山梨県側登山道の頂上付近で「落石が女性に当たりけがをした」と119番があった。山梨県警富士吉田署によると、登山をしていた20代女性の頭に石が当たり、死亡が確認された。山頂付近が通行止めになった。
  山頂付近の登山道は以前に石積みが崩れたため、ネットで覆った仮復旧の状態になっていて、一部は登山道の幅が狭くなっている。署が身元や落石の原因を調べている。署によると、通行止めになっているのは、標高3450メートル付近にある山小屋の「御来光館」から山頂まで。女性は複数人で登山していた。

安全情報を随時発信 静岡県、今夏からツイッター運用

 静岡県は今夏、富士山の安全登山に役立つ情報を随時発信する公式ツイッターの運用を開始した。富士山の頂、中腹、麓にいる地元関係者の協力を得て、天候の様子や登山道の混雑具合、周辺道路の交通状況などを写真付きで情報提供している。

富士登山の安全情報を随時発信しているツイッター。今夏から運用が始まった=富士山富士宮口登山道(写真部・小糸恵介)
富士登山の安全情報を随時発信しているツイッター。今夏から運用が始まった=富士山富士宮口登山道(写真部・小糸恵介)
 ツイッターのアカウント名は「静岡県 富士登山安全情報」。富士山で活動する山小屋のスタッフや登山ガイド、交通事業者らが1日当たり計20~30件を投稿している。1日午後2時、富士宮口5合目からは「気温25度 雲の隙間から太陽が見えます」などと投稿があった。
 標高日本一の富士山は気象条件が厳しく、空模様や気温、風速などは目まぐるしく変わる。中腹から山頂にかけての人出や5合目行きシャトルバス、タクシー乗り換え駐車場の空き状況など、現地でないと分からない点も多い。富士登山を計画する人から「随時情報がほしい」との要望があり、県はツイッターの運用を決めた。
 県富士山世界遺産課によると、登山者からは「非常に便利」と好評を得ているという。同課の担当者は「予算を全くかけずに効果的な情報発信ができている。地元の皆さんと協力して、富士山の今を伝えていきたい」と意気込む。 (政治部・鈴木文之)
 〈2022.08.02 あなたの静岡新聞〉
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