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コロナ急拡大で医療逼迫 感染したかも?と思ったときは

 静岡県内でも急激に感染拡大が進んだ新型コロナウイルス。県は医療体制が適切に提供できなくなる段階にあるとして、「医療逼迫(ひっぱく)警報」を発令しました。「コロナに感染したかも?」と思ったとき、私たちはどうすればよいのでしょうか。感染状況を踏まえつつ、県や医療機関が呼び掛けている対応をまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

県内の感染状況は? 7月3週目から急拡大 病床使用率も高止まり

県は医療逼迫警報を発令 「かつてない医療危機の状態」

 静岡県は29日、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大で県内の医療体制は適切に提供できなくなる段階にあるとして、国指標に基づく感染状況のレベルを県独自に「3相当」に引き上げ、「医療逼迫(ひっぱく)警報」を発令した。県民に不要不急の外出を控えるよう求めた。

静岡県が求める具体的な取り組み
静岡県が求める具体的な取り組み
 県内の1日平均の新規感染者は4800人近くに上り、病床使用率は70%を超えた。記者会見した鈴木宏幸感染症対策担当部長は「一律に行動制限を求めないが、かつてない医療危機の状態にある」と強調した。
 若者に早期のワクチン3回目接種を訴えたほか、「基礎疾患のない60歳未満はまず市販薬で対応を」として発熱、救急外来の適正受診を呼びかけた。小児科に診療希望が殺到している状況を踏まえ、必要に応じて「静岡こども救急電話相談」の利用を推奨した。マスク着用の再徹底も求めた。
 県はコロナ受け入れ病床の回転率を高め、医療体制の維持に努める。発熱外来に抗原検査キットを配布する。
 国指標に基づく感染レベルについては、国と協議した結果、正式な引き上げは認められなかった。一方で医療体制の逼迫度は実質的にレベル3に相当すると判断し、県独自に引き上げた。
 〈2022.07.30 あなたの静岡新聞〉

救急外来に軽症者殺到 医療機関「風邪症状は様子見て」

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、静岡県内の救急外来に軽症の感染者が殺到し、緊急度の高い患者に迅速に対応できない事態になっている。軽症者は大半が入院に至らないといい、医療機関は「発熱などの風邪症状なら市販薬を使って経過観察してほしい」と、救急外来の適切な受診を訴える。県は29日、医療逼迫(ひっぱく)警報を発出した。

浜松医大付属病院の救急外来に来た新型コロナ患者(7月)
浜松医大付属病院の救急外来に来た新型コロナ患者(7月)
 「発熱や咽頭痛ですぐに病院に来る状況。これでは救急外来が回らない」。浜松医科大付属病院(浜松市東区)救急部の高橋善明医師は危機感をあらわにする。今月中旬以降、救急を利用するコロナ患者が急増した。10~26日の当該患者は108人。だが、そのうち86人は解熱剤の処方を受けるなどしてそのまま帰宅したのが実情だ。
 高橋医師によると、救急外来に自家用車で来院する患者が多い2次救急医療機関には、浜松医大付属病院より多くのコロナ患者が来ているとみられる。
 救急要請を受けた際、症状から緊急性がないと判断し、受け入れを断ることも多い。日中にかかりつけ医を受診できず、「不安だから」と来院する人は少なくないという。
 入院する感染者の大半は、基礎疾患のある高齢者。発熱や脱水症状の進行による状態の悪化、誤嚥(ごえん)性肺炎などを伴う人がほとんどで、高橋医師は「インフルエンザ流行期に高齢者の入院が相次ぐ状況と変わらない」と話す。
 県内では18~24日、53件の救急搬送困難事案が発生した。同病院でも心筋梗塞の患者を受け入れられなかったことがあり、高橋医師は「今後、重症患者が病院にたどり着く前に救急車内で亡くなるケースが出てもおかしくない」と危惧する。
 松山幸弘院長は「企業や学校が診断を求める状況も控えてもらいたい。風邪症状なら家で様子を見て救急医療を守ってほしい」と語気を強める。
 県は専門家会議の会合などを通じ、救急外来の逼迫は全県的な問題だとの認識を持っている。29日の記者会見で「発熱したらまずは市販薬で対応し、受診は平日の日中にお願いしたい」などと呼びかけた。
 〈2022.07.30 あなたの静岡新聞〉

「多くの人は自宅安静と市販薬で治る」 県、冷静な対応呼び掛け

 新型コロナウイルスの新規感染者が県内で過去最多5890人を記録した22日、県健康福祉部の後藤幹生参事は記者会見で「現在のオミクロン株は、多くの人は自宅安静と市販薬で治る病気」と強調し、県民に冷静に対応するよう訴えた。

静岡県庁
静岡県庁
 後藤参事は、置き換わりが進むオミクロン株「BA・5」は重症化事例が非常に少なく、特に60歳以下はほぼ軽症で済むと説明。救急医療が逼迫(ひっぱく)する現状を挙げ、「専門家会議の委員から、せき止めや解熱剤で十分治ると聞いている。風邪症状だけで夜間休日に受診するのは控えて」と呼び掛けた。
 病院や診療所の発熱外来に検査希望が殺到し、一般診療に影響が出かねない状況も指摘した。
 一方で、対策を緩めれば感染がさらに拡大し、社会機能が低下する事態などを踏まえ、「警戒は続けてほしい。ワクチンの追加接種も検討を」と付け加えた。
〈2022.7.22 あなたの静岡新聞〉
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