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18歳成人で何が変わる? 気を付けることは?

 民法の改正により、4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられました。若者の社会参加が早まる一方で、消費者トラブルなどに巻き込まれやすくなることも懸念されています。民法に規定されている「未成年者取消権」の適用から外れてしまうためです。これまでは、本人や保護者が後から契約を取り消すことができましたが、様々な判断を自分で慎重に行わなければなりません。成人年齢引き下げによって、18歳からできるようになること、それに伴って気を付けるべきことはなんでしょうか。1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・石岡美来〉

消費トラブルの増加懸念 相談機関や学校、対策急ぐ

 民法改正で1日(※2022年4月)から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることを受け、静岡県内で消費者トラブルに対応する機関と、高校、大学など教育現場の担当者が懸念を募らせている。スマートフォン所持率の高まりとコロナ禍による休校を背景にここ数年、ゲーム課金やネット通販などに関する20歳未満の相談は全国的に増加中。「新成人」を悪質商法からどう守るか、新年度を前に県内の関係者は手探りで準備を進める。

消費者教育講座で成人年齢の引き下げに伴う注意点を学ぶ生徒=2021年11月、静岡市清水区の清水桜が丘高
消費者教育講座で成人年齢の引き下げに伴う注意点を学ぶ生徒=2021年11月、静岡市清水区の清水桜が丘高
 静岡市内の女子大学生(19)は昨年、動画サイトの広告で試供品として購入したはずのサプリメントが「定期購入契約だ」と請求を受けた。民法は未成年者の契約について保護者の同意がない場合は原則、取り消すことができるとされる。女子大学生はサプリメントの契約を取り消せたが「4月で成人になったら、もう未成年者として守ってはもらえないことを肝に銘じたい」と話す。
 静岡市消費生活センターの相談件数は全体が微減傾向の中、20歳未満の相談件数は2018年から20年にかけて76%増えた。同センター担当者は「若者の消費者トラブルは全国的に増加している。キャッシュレス決済やネット通販の普及で、契約への意識的なハードルが下がっているのでは」と分析する。
 高校では消費者教育を含む「金融教育」を盛り込んだ新学習指導要領が22年度から始まる。清水桜が丘高や駿河総合高などは21年度、外部講師を招いて消費者トラブルや契約について学ぶ授業を実施した。金融機関の職員に授業を依頼した駿河総合高の担当教諭は「売買契約の基本的なルールを知らない生徒が多く、卒業前に実施できて良かった」と手応えを示した。
 1、2年生の多くがまとまって新たに成人となる県内各大学の警戒も強い。新入生向けのガイダンスに消費者トラブル防止の講義を加えるなど、被害予防に腐心する。常葉大の担当者は「学生を守るため、さらに対策の強化を検討したい」との方針を示す。
 人生経験が少ない新たな成人は悪質商法の勧誘ターゲットになりやすい。静岡市の消費者教育推進員として学校などで講演する森竹純一さん(62)は「高校や大学などとの連携で、消費者教育を急ぎ進める必要がある」と指摘する。
〈2022.4.1 あなたの静岡新聞〉

成人年齢18歳に 何ができる? 何ができない?

 成人年齢を18歳に引き下げる改正民法が4月に施行される。国家資格の取得や性別変更など、日常生活のさまざまな場面に変化をもたらす中、焦点となるのが消費者契約だ。保護者の同意が必要なくなり、自分自身の判断のみで契約が可能となる一方、トラブルや被害に巻き込まれる懸念があり、未然にどう防ぐかが課題となる。

18歳になったらできること、できないこと
18歳になったらできること、できないこと
  ローンや携帯電話の契約に、クレジットカードの作成-。成人年齢が引き下げられると、18、19歳が結べるようになる契約は多様だ。社会の一員として活動の幅が広がる半面、本人や保護者が後から契約を取り消せる「未成年者取り消し権」は対象外となり、社会経験の少ない「大人になりたて」の若者が、詐欺的な商法などの標的になることが予想される。
  国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数を年齢層別の平均値でみると、2020年度は、成人から間もない「20~24歳」で9356件。成人前の「18~19歳」の5689件に比べて約1・6倍だった。20~24歳の相談は「高額収入を得るノウハウ」などの情報商材やダイエットサプリメントの購入、美容医療サービスの契約トラブルが多く、金額も18~19歳より高額だ。
  政府は消費者契約法を改正し、恋愛感情を利用するデート商法や不安をあおる商法など「困惑する状況で結んだ契約」に関しては、成人でも取り消しを可能にするなど対策を強化。消費者庁も、契約やお金に関するQ&Aなどを盛り込んだ高校生向け教材「社会への扉」を作成して教育や啓発に力を入れる。
〈2022.3.23 静岡新聞朝刊〉

18歳、19歳のローン契約 県内金融機関の対応は?

 成人年齢が引き下げられる4月以降の18歳、19歳からのローン申し込みについて、静岡県内の4地銀と9信用金庫は28日までに、対応方針を固めた。カードローンやフリーローンに対し、4地銀と浜松いわたなど7信金は「20歳以上」とする現状の規定を据え置く。しずおか焼津と富士宮の2信金は審査を厳格化するなどして受け付けるが、「あくまで返済できることが前提」としている。

 4地銀と7信金は、資金の使用目的を把握しにくいカードローンなどについて、4月の改正民法施行後も従来規定を維持し、18歳、19歳からの申し込みを受け付けない意向。その理由を「金融知識が乏しく、安定した収入もない若者がむやみに利用すれば、多重債務に陥る恐れがある。きちんと保護する必要がある」(静岡銀行ダイレクトチャネル営業部)などと説く。
 しずおか焼津、富士宮の両信金は、これらローンの受け付け自体は認めるが、申込時に源泉徴収票や所得証明書など、安定収入があることを示す書類の提出を義務付ける。両信金は「実際に利用できるかどうかは別問題。あくまで返済能力の有無を重視する」「何歳であっても、収入のない人には貸せないという原則は変わらない」とくぎを刺す。
 教育、マイカー、住宅などの目的別ローンは対応が異なる。スルガ銀や清水銀、浜松いわた信金、静清信金などは資金使途が明確で乱用の恐れが少なく、返済状況を金融機関側が把握できるとして受け付けを「18歳以上」に引き下げる。静岡中央銀や沼津信金などは、就職して自動車通勤や仕事で運転が必要なケースが見込まれるとして、マイカーローンのみ引き下げる。

〈メモ〉成人年齢引き下げに伴う金融関係の変化 改正民法が施行される4月以降、18歳になれば親の同意がなくてもクレジットカードを作成したり、株式などへの投資を行ったりできる。法的にはローンも組めるようになるが、金融に関する知識が乏しい若者が乱用した場合、多重債務に陥りやすいなどの問題も指摘される。特に、借り入れ目的が明確でなくても利用可能なカードローン、フリーローンに対する懸念が強い。
〈2022.3.29 あなたの静岡新聞〉
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