富士に避難の堀川さん夫妻「心は今も浪江に」 故郷への思い語る

 東日本大震災から10年を迎えた11日、福島県浪江町で被災し東京電力福島第1原発事故の影響で、富士市北松野で避難生活を続ける堀川文夫さん(66)と妻の貴子さん(67)が同市内の講演会で震災体験を語った。文夫さんは「ここ(富士)で生きることを決めたが、帰りたい気持ちはずっとある」と話し、貴子さんは「心は今も浪江に置いたまま。引きちぎられて富士にいるという感覚が10年たっても抜けない」と故郷への思いを語った。

東日本大震災発生から10年を迎え、被災体験や避難生活などを語る堀川さん夫妻=富士市内
東日本大震災発生から10年を迎え、被災体験や避難生活などを語る堀川さん夫妻=富士市内

 同町で学習塾を経営していた夫妻は自宅から約10キロの距離にあった原発事故で町を離れ、富士市に避難してきた。ひきこもる時期もあったが、震災体験を語る経験や元塾生との交流で再起し、12年に市内で塾を再開。17年に「震災と原発事故でふるさとを奪われた人々の思いを記録に残したい」と体験を絵本にまとめ、思いを伝えている。
 同日は同市のNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」が講演を企画。体験を振り返り、絵本を朗読した。やむなく取り壊された浪江町の自宅が解体される様子を撮影した作品も上映。会場ではすすり泣く声が響いた。
 文夫さんは「我々の体験を知り考えてほしい。もう避難はしたくない。危険な原発は一刻も早く無くしてほしい」と訴え、貴子さんは「マニュアルを守って亡くなった人もいる。あらゆることを想像し、自分で考えて行動できるようにしてほしい」と語り掛けた。
 文夫さんは「浪江町で小中学校の解体が決まり、元の住民と今の町の間で気持ちにずれも起きている」と時の経過に複雑な心境も吐露した。(富士支局・青島英治)
■14日、藤枝で講演会
 藤枝市の高校生や教員らでつくる市民団体「エバーグリーン藤枝」は14日、東京電力福島第1原発事故から10年に合わせ、講演会「愛するふるさとのためにわたしには何ができるのだろう」を市生涯学習センターで開く。福島県浪江町から避難し、移り住んだ富士市で学習塾を構えた堀川文夫さん(66)が講師を務める。
 堀川さんは事故から得た教訓を語るほか、飼い犬「桃」の目線から震災の経験をつづった絵本「手紙 お母さんへ」の朗読を行う。意見交換会も行う。
 午後0時半受け付け開始。堀川さんの講演は同1時半から。問い合わせは同団体の橋本純さん<電090(1864)4887>へ。

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