茶園の厄介者、防除へ道筋 ヤマノイモの生態、静大生が冊子に

 静岡大農学部4年の石渡加純さん(22)=三島市=が卒業研究の一環で、茶園で厄介者の雑草として扱われるヤマノイモを調べ、生態や防除のポイントをリーフレットにまとめた。茶園のヤマノイモは先行研究が乏しく、生態には謎も多かったという。茶の有機栽培に力を入れる県も成果に着目し、防除技術の開発に生かす考えだ。

茶園のヤマノイモを調べ、リーフレットにまとめた石渡加純さん=2020年12月下旬、藤枝市の静岡大藤枝フィールド
茶園のヤマノイモを調べ、リーフレットにまとめた石渡加純さん=2020年12月下旬、藤枝市の静岡大藤枝フィールド
茶園で生産者を悩ませているヤマノイモのつる(静岡県茶業研究センター提供)
茶園で生産者を悩ませているヤマノイモのつる(静岡県茶業研究センター提供)
茶園のヤマノイモを調べ、リーフレットにまとめた石渡加純さん=2020年12月下旬、藤枝市の静岡大藤枝フィールド
茶園で生産者を悩ませているヤマノイモのつる(静岡県茶業研究センター提供)

 とろろ汁の材料として知られるヤマノイモ(自然薯=じねんじょ)は、つる性の多年草。石渡さんはヤマノイモの除草経験があり、研究テーマに設定した。茶葉の収穫時につるが混じると、製茶した際に味や香りに影響して品質が低下する。生態を把握し、適切な防除時期が分かれば「農家さんの役に立てると思った」と動機を話す。
 同大藤枝フィールドの茶園で研究を進めたところ、つるを伸ばす「伸長型」に加え、茶園の下部に「林床型」のヤマノイモがあることなどを発見。林床型は主にムカゴ由来で、翌年のつる発生に影響を与えるという。つるは途中で切れると側枝にムカゴができ、翌年のヤマノイモが増加する要因となる。そのため、石渡さんは防除のポイントを「新芋が大きくなる前の7月ごろに根元から抜くことが大事」と結論付けた。
 県は本年度、つる性雑草の防除技術開発などを柱とする3カ年計画のプロジェクトに乗り出した。県茶業研究センター(菊川市)茶環境適応技術科の内山道春科長は「生態が分からなければ、どう防除したらいいかも分からない」と研究の意義を指摘する。石渡さんを指導した稲垣栄洋教授は「茶園のヤマノイモの生態は、ほぼ明らかになったと言えるのでは」と評価した。
 石渡さんは4月の日本雑草学会(オンライン開催)で発表する。
 リーフレットの希望者は、稲垣教授のメールアドレス<inagaki.hidehiro@shizuoka.ac.jp>へ。

 ■除草作業 負担重く
 静岡県内50カ所の茶園を調査した県茶業研究センターの市原実上席研究員によると、つる性雑草の中で生産者を最も悩ませているのがヤマノイモだった。茶の有機栽培では除草が作業の8割を占めているため、負担軽減は大きな課題になっている。
 「つるがはびこっちゃうと大変。早め早めに、こまめに抜くしかない」。牧之原市の茶生産者、長谷川正治さん(56)は普段の心掛けをそう語る。自然薯の生産者でもある長谷川さんだが「ヤマノイモは茶園にほしくない芋」。秋になるとムカゴが付くため「落とさないことが大事」と話した。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞