リニア27年開業延期へ 川勝知事とJR社長、物別れ 静岡県庁で初会談

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題で、川勝平太知事とJR東海の金子慎社長による初のトップ会談が26日、県庁で行われた。2027年のリニア開業時期を左右するとしてJRが6月中の同意を県に求めた静岡工区のヤード(作業基地)工事について意見交換したが、一致点は見いだせず、会談は物別れに終わった。JRは来週にも27年開業の延期と計画の見直しを表明する見通しとなった。

リニア中央新幹線建設について会談する川勝平太知事(左)とJR東海の金子慎社長=26日午後、県庁(代表撮影)
リニア中央新幹線建設について会談する川勝平太知事(左)とJR東海の金子慎社長=26日午後、県庁(代表撮影)
川勝知事と金子JR東海社長の会談の主な発言
川勝知事と金子JR東海社長の会談の主な発言
JR東海が静岡県に求めるリニアのヤード工事(イメージ)
JR東海が静岡県に求めるリニアのヤード工事(イメージ)
ヤード工事の着手が遅れている工区
ヤード工事の着手が遅れている工区
リニア中央新幹線建設について会談する川勝平太知事(左)とJR東海の金子慎社長=26日午後、県庁(代表撮影)
川勝知事と金子JR東海社長の会談の主な発言
JR東海が静岡県に求めるリニアのヤード工事(イメージ)
ヤード工事の着手が遅れている工区

 大井川の水問題に関しては川勝知事が、近年、渇水が頻繁に起きていることを指摘し、金子社長も「水の問題をおろそかにするつもりはない」として重要性の認識は共有した。
 焦点になっていたヤード工事については、金子社長が「なし崩しにトンネル掘削を始めることはしない。国の有識者会議で方向性が出たら素早く次のステップに行ける準備だけはしたい」と主張。これに対し、川勝知事は大井川流域10市町の意向を踏まえ、国や県の有識者会議の結論が出る前に着工に同意しない考えを伝えた。金子社長は静岡工区の3カ所のヤードで6月中に着工できなければ27年開業が困難になるという認識を変えず、両者は折り合わなかった。
 会談の終盤、川勝知事が環境保全のための協定締結を引き合いにヤード工事に同意したとも受け取れる発言をし、終了後に報道陣から川勝知事や県幹部が確認を求められる一幕があった。川勝知事はJRが求めている工事は「本体工事と一体」だとして同意しない考えを改めて示した。
 川勝知事は金子社長を県庁正面玄関に出迎える異例の対応を見せた。会談では大井川の水を使っているとして牧之原産の緑茶や焼津産の日本酒を紹介し、金子社長に贈った。会談そのものはおおむね和やかな雰囲気で進んだことから、県幹部は「信頼関係構築の一歩になった」との見方を示した。

 ■有識者会議の議論充実を
 川勝平太知事とJR東海の金子慎社長による初めてのトップ会談で、両者の主張は平行線のまま議論はすれ違い、一致点を見いだすことはできなかった。大井川水問題の対策を科学的に議論する国土交通省や県の有識者会議が結論を出す前の段階で、問題の解決を目指してトップ同士が会談すること自体に無理があった。
 会談は1対1で、実務担当者が入らない形で行われたが、議題の中心はヤード(作業基地)工事がトンネル工事に直結するかどうかや、トンネル工事による利水者への影響など技術的な内容。両者がそれぞれの主張を言い合うだけで議論は深まらず、結論も明確にならなかった。議論が前進したとも言えない。
 国や県の有識者会議はJRの事前調査不足やデータ開示が不十分なため議論が停滞している。まずは国や県の有識者会議で議論を充実させるため、JRがデータや資料を十分に提供すべきだ。事業認可した国交省にも、JRに強く指導する責任がある。

 ■JR要請「全面否定ではない」 国交省鉄道局長
 川勝平太知事とJR東海の金子慎社長の会談を視聴した国土交通省の水嶋智鉄道局長は、静岡新聞社の取材に「公開された会談を見る限り、JRの要請が必ずしも全面的に否定されたわけではない印象だ。2027年に向けて、リニア中央新幹線の早期開業と、大井川の水問題解決と自然環境への影響の軽減の両立を図る取り組みが続けられる可能性が残された」との認識を示した。
 会談で知事は、ヤード工事に関しJR東海が県条例を順守する必要性に言及したが、着工を認めるかどうか明確に表明しなかった。水嶋氏は「会談では結論で理解できない部分が残った。もし両者で認識の相違があるなら、早急に2回目の会談を行うべきだ」と指摘した。
 大井川の水問題を議論する国交省主催の専門家会議に関しては、日程や内容に「影響はない」とした。

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