富士川水系の凝集剤不法投棄 10年間、合計22トン 山梨県が調査結果発表

 富士川水系雨畑川で採石業者ニッケイ工業が長年続けていた、高分子凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)の大量不法投棄で、山梨県は合計約22トンの凝集剤が河川内に投棄された、との調査結果を26日までに発表した。また、河川内への不法投棄は2009年から本紙が19年5月に報道するまでの約10年間続いていたことも新たに分かった。

富士川水系雨畑川でのニッケイ工業による凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)の不法投棄の瞬間=2019年4月下旬、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
富士川水系雨畑川でのニッケイ工業による凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)の不法投棄の瞬間=2019年4月下旬、山梨県早川町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 22トンの凝集剤は、ニッケイ工業が砕石を製品化する際に出る汚水に添加され、濁り成分の沈殿に使われた。同社は沈殿したポリマー汚泥を雨畑川に不法投棄していた。ポリマー汚泥の総量について山梨県は依然明らかにしていない。
 同県が同社に書面での報告を行政指導し、同日までに回答があった。発表によると、ポリマー汚泥に含まれていた凝集剤は3種類で、計21・9トンだった。凝集剤成分として利用されることが多いアクリルアミドポリマーを含む凝集剤は2種類で、6割以上に当たる13・3トン。残りの8・6トンの凝集剤の成分は調査中という。
 不法投棄が始まった時期については地元住民らから「不法投棄の引き金になったのは、11年夏の台風で1キロ上流の日本軽金属雨畑ダムが放水し、汚泥処理装置が流されたため」との指摘があった。しかし、実際にはこれよりも2年早い09年から河川内への不法投棄が繰り返されていたことも同社の文書による報告で判明した。
 同県は2019年5月の報道を受け、雨畑川の投棄場所にあったポリマー汚泥4400立方メートルを除去させ、刑事告発などは見送った。本紙はことし5月、東京海洋大研究室と連携して行った富士川水系の泥の分析実験で、いまもポリマー汚泥が河川内に残留している可能性が高いことを指摘していた。
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 山梨県の長崎幸太郎知事と静岡県の川勝平太知事は27日、静岡県庁で覚書を交わし、「富士川の豊かな水環境の保全に向けた山梨県・静岡県協働プロジェクト」をスタートさせる。同水系でのポリマー汚泥の残留の実態などを明らかにする。
 (「サクラエビ異変」取材班)

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