犯人性「成り立たず」 袴田さん弁護団主張 再審第5回公判 静岡地裁

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した後、裁判のやり直しが認められた袴田巌さん(87)の再審第5回公判が20日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。大きな争点となっている「犯行着衣」のほかに袴田さんの犯人性を裏付ける事情があるかどうかを巡り、検察側と弁護団の双方が主張・立証を展開。弁護団は検察側の言う犯人性は「成り立たない」とした。

袴田巌さんが着ていたパジャマは鑑定のために生地が切り取られている。再審第5回公判で実物が展示された(支援者提供)
袴田巌さんが着ていたパジャマは鑑定のために生地が切り取られている。再審第5回公判で実物が展示された(支援者提供)

 弁護団は、袴田さんの逮捕当時に「血染め」と報道され、事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで「5点の衣類」が見つかるまで検察側が犯行着衣と説明していた袴田さんのパジャマを展示。鑑定のために生地があちこち切り取られた状態を間近で確認した姉ひで子さん(90)は閉廷後の記者会見で「血染めではなく、こんなものかと思った」と感想を話した。
 検察側は冒頭陳述で、質屋の利用を重ねていたなどとして袴田さんには金品を入手する動機があったと主張。刃物屋店員の証言を踏まえ「凶器」のくり小刀を事件前に購入・所持していたことがうかがわれるとした。犯行当夜に左手中指などに傷を負っていたほか、事件直後に着ていたパジャマから他人の血液型の血痕や混合油が検出されたとして「全体として、犯人性を裏付けている」と述べた。
 弁護団は逐一反論した。刃物屋店員は後に弁護団に証言を否定する告白を行っているとし、左手中指の傷は専務宅の消火活動中に負ったものだと強調。肉眼では判然としないパジャマの「血痕」から血液型鑑定ができたはずはなく、信用できないと否定した。専務宅に売上金があるのは従業員なら誰でも知っていることで、強盗殺人の動機とするには「論理の飛躍が限度を超えている」と批判した。
 (社会部・佐藤章弘) photo03

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