「社会の要請に応えた」 環境保全議論 国交省会議の中村座長【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの環境保全策を議論してきた国土交通省専門家会議の中村太士座長(北海道大教授)は7日、斉藤鉄夫国交相に提出した報告書の内容について「社会の要請に応えている」と強調した。沢の流量減少やそれに伴う生物種の生息場の変化には不確実性が残るとして、今後も生物情報などを拡充し、予防的な対応を検討する重要性を訴えた。斉藤氏との面会後、取材に答えた。
 中村座長は、当初からおよそ2年という議論の期間を「頭の中に置いていた。あまり長く続けるようでは国民の理解は得られないと思っていた」と明かした。県が要請していた生物の具体的な調査や工事前の影響評価に関しては「個体数の把握だけでも大変な作業。2年から3年かかる。研究としては大事だが、社会的な要請としてはあまりにも時間がかかりすぎる」と述べ、会議に求められていた役割、目的とは隔たりがあったとの認識を示した。
 会議期間中に県を通じて寄せられた県有識者会議専門部会の意見は、課題の指摘の範囲にとどまり、建設的な提案ではなかったと批判。「『こういう形でやれば、解決できる』ということをわれわれに投げかけてくれれば良かったが、少なくともそういう形の関係にならなかったのは残念だった」と不満をにじませた。
 JR東海には「(報告書に)書かれたことを誠実に実行してほしい」と求め、特に情報公開の徹底を注文した。自らを含む委員が流域自治体に直接出向き、関係者や住民に報告書を分かりやすく説明をすることも必要としつつ、会議としては「いったん区切りをつけたい」との考えも述べた。
 (東京支社・関本豪)

 知事「県の意見が反映されず遺憾」
 川勝平太知事は7日、リニア中央新幹線トンネル工事の環境保全に関する国土交通省専門家会議の報告書がまとまり、公表されたことを受け、「県の意見が十分に反映されなかったことは極めて遺憾」とのコメントを発表した。
 知事は報告書について「生態系に及ぼす影響の予測、評価や回避、低減のための具体的な保全措置が十分示されていない」と指摘し、内容が不十分との認識を改めて示した。その上で、年明けから再開予定の県有識者会議専門部会での議論を「リニアの整備と南アルプスの自然環境の保全との両立を図るため、国や関係自治体と協力し、JR東海との対話を進めていく」とした。
 県はこれまでに6回にわたり国交省に意見書を提出した。5日には川勝知事が環境省を訪れ、伊藤信太郎環境相宛てに過去の環境相意見が報告書に反映されるよう積極的な働きかけを求める文書を提出していた。

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