7カ所流量減少予測 上流部の沢影響解析 リニア国交省専門家会議

 リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響について議論する国土交通省の第10回専門家会議が23日、東京都内で開かれ、JR東海が大井川上流部の沢の流量に与える影響の解析結果を示した。上流部35カ所の沢のうち7カ所は掘削前と比べて10%以上の流量減少が予測され、そのうち1カ所では、トンネル湧水量を低減させる工法の「薬液注入」を施しても渇水期に流量が極めて小さくなる傾向があったと説明した。=関連記事5、8面へ

リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響について議論した国専門家会議=23日午後、都内
リニア中央新幹線トンネル工事が南アルプスの自然環境に与える影響について議論した国専門家会議=23日午後、都内


 JRは一部の沢で生物に影響が出たとしても大井川上流域全体として生物の保全を図るとの考え方を示唆したが、委員からは「保全措置に言及するのは時期尚早」との意見が相次ぎ、保全のあり方については引き続き検討することになった。森貴志副知事も会議後の取材で一部の沢への影響を許容することは「乱暴な議論」との認識を示した。
 工事に伴う流量減少の傾向が見られたのは悪(わる)沢、蛇抜(じゃぬけ)沢、蛇沢、ジャガ沢、流(ながれ)沢、スリバチ沢、二軒小屋南西の沢の7カ所で、いずれの沢も流域に主要断層とトンネル掘削部分を含む。このうち流沢は薬液注入後も冬場の流量が極めて小さくなる解析結果が出た。
 JRは過去のトンネル工事の実績に基づき、薬液注入を実施した場合の詳細な解析結果を示した。ほかの6カ所の沢では、断層とトンネルの交差部に薬液注入を実施することで、渇水期を含め年間通じて一定の流量が確保できるとした。
 東京大教授の徳永朋祥委員(地下水学)は解析結果には不確実性があることを踏まえた上で、「流域内で断層とトンネルが交差する沢で影響が大きいとの傾向が分かったのは重要な情報」と一定の評価を示した。
 (政治部・尾原崇也、東京支社・中村綾子)

 

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