JR、田代ダム案説明へ 流域の意見集約不透明 27日に利水関係協議会【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線トンネル工事に伴う湧水の県外流出対策としてJR東海が示した田代ダム取水抑制案について、大井川流域の市町や利水団体が説明を受ける大井川利水関係協議会(事務局・県)の会合が27日、県庁で開かれる。JRはダムを管理する東京電力リニューアブルパワー(東電RP)と具体的な協議を開始するにあたり、流域の関係者から事前了解を得たいとしているが、県は「JRが提示した協議の前提条件には意味が不明瞭な部分が多い」として、会合で意見がまとまるかは見通せないとしている。

最後の定例記者会見に臨む金子慎JR東海社長=24日午後、東京都
最後の定例記者会見に臨む金子慎JR東海社長=24日午後、東京都

 JRは東電RPとの協議開始の前提として、ダム案は①永続的に行うものではなく、東電RPの水利権には影響を与えない②工事の一定期間(約10カ月間と想定)に取水抑制する案として検討③協議内容に高速長尺先進ボーリングからの湧水に対しての適用を含む―の3点を提示した。JRによると、①②は東電RP側の意向という。
 県は①について「水利権更新時の流域との協議を指しているとしたら、そもそも大井川利水関係協議会に権限はない」と指摘する。2025年末に許可期限を迎える田代ダムの水利権(取水量)と河川維持流量を巡る議論は大井川水利流量調整協議会で扱っている。今回ダム案について説明を受ける関係協議会では最終的な判断ができない可能性が高いという。
 ②でダム案の実施期間を「約10カ月間」と言及していることについても県は「トンネル湧水が県外流出する期間中、同時期に湧水量と同量を大井川に戻す対応を求めていて、10カ月とは限らない」としてJRに確認を求める意向。③の高速長尺先進ボーリングも「どのボーリングのことを指しているのか不明瞭」としている。

JR社長 県境ボーリング巡り「県の懸念受け止める」
 金子慎JR東海社長は24日の定例記者会見で、リニア中央新幹線トンネル工事に伴い山梨県から静岡県境に向けて削孔(さっこう)を始めた高速長尺先進ボーリングについて「県の水資源に対する懸念をしっかりと受け止める」と述べ、湧水量の管理値を設けるなど県境付近で慎重な削孔を行うとした理由を説明した。県が求めているボーリング湧水の相当量の返還に応じるかは「県の意見を伺い、対話していく」と述べるにとどめた。
 一方で、「山梨県内で工事を進めている間に県内の水資源に影響を与えることは考えにくい」との見方は維持した。県内の地下水への影響回避を求める県と認識が異なっているのではないかと問われたのに対し、金子社長は「焦点は大井川中下流域の水利用に迷惑をかけないこと。静岡県と(認識は)共通している」と反論した。

JR金子氏 次期社長に託す「地元に丁寧な対応を」
 3月末で退任するJR東海の金子慎社長(67)が24日、東京都内で最後の定例記者会見に臨んだ。5年間の在職中の心残りとして、リニア中央新幹線トンネル工事の県内区間に着手のめどをつけられなかった点を挙げた。「地元の水資源や環境に対する懸念を解消するために引き続き、丁寧に対応していかなければいけない」と述べ、次期社長の丹羽俊介副社長(57)に後を託した。
 リニア工事を巡る県との協議は、JRが2018年10月に「トンネル湧水全量を大井川に戻す」と表明したものの、その後、工事中に湧水を戻せない期間があることが判明。国の専門家会議で問題点を整理するなど議論に時間を要している。金子社長は「大井川流域の皆さんの懸念、心配を解消しないと問題は解決しないと思って(全量戻しと)発言した」と当時を振り返った。21年12月に国の会議の中間報告が出たが、「即座に懸念解消にはならない。水を戻す方策を一生懸命協議していく」と話した。
 目標とする27年の品川―名古屋間の開業が困難な理由については「全体の工事は着実に進んでいる」として県内区間の未着手が要因と説明した。
 金子社長は4月から代表権がある会長に就く。

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