サクラエビ春漁と秋漁 資源回復へ操業規制(静岡県水産・海洋技術研究所)【旬の魚・こぼれ話】

 1894年に由比で始まったとされるサクラエビ漁は、国内では駿河湾のみで行われ、春と秋の2回漁期がある。30年前に3千トンあった漁獲量は近年大きく落ち込んでいたが、2021年に282トン、22年に384トンと徐々に増えつつある。

サクラエビの生活史と漁業者による自主規制
サクラエビの生活史と漁業者による自主規制

 サクラエビは初夏から秋に産み出された卵が、1日ほどでふ化して0歳エビとして成長する。翌年の初夏から秋に1歳エビとして産卵した後、1年半の生涯を終える。漁業者はこのような生活史に基づき、自主的な操業規制によって資源の回復を促している。
 具体的には、10~12月の秋漁では産卵を終えた1歳エビを狙って漁獲することで、翌年産卵する0歳エビを保護する。3~6月の春漁では卵巣が青黒く色付いた、いわゆる「頭黒[あたまぐろ]」と呼ばれる産卵直前の親エビが増えてきたら終漁する。このような規制によって、産卵する親エビをできるだけ多く確保している。
 当研究所では、産み出された卵の数を調べたり、調査船から海中に超音波を発信したりしてサクラエビの量を把握する研究や、卵から0歳エビまで生き残る条件を明らかにする研究を、他の研究機関と共同で行い、資源状態の把握に努めている。サクラエビの資源を回復させるために解明すべき課題は多いが、静岡県が誇るサクラエビが将来にわたって安定的に利用でき、身近な食材に復活することを目指して、漁業者をはじめ関係者と協働した取り組みを続けている。
 3月に春漁が始まり、新鮮なサクラエビが売り場に出回るようになる。ようやく増えてきたサクラエビを大切に味わいながら、春の訪れを感じていただきたい。(静岡県水産・海洋技術研究所)

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