「濁り 幼生成長に悪影響」 荒川教授(東京海洋大)らのグループ 英科学誌に論文掲載【サクラエビ異変】

 サクラエビの主産卵場がある駿河湾奥に富士川水系から強い濁り水が注いでいる問題で、荒川久幸東京海洋大教授(海洋光環境学)らの研究グループが、濁水が幼生の生育に悪影響を与えることを突き止め、1日までに英国の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に論文が掲載された。一定濃度以上の濁水にさらされたサクラエビの幼生は栄養を取り込めず、飢餓状態となり成長できなくなった。

荒川久幸 東京海洋大教授
荒川久幸 東京海洋大教授
異なる粒子濃度でのエラフォカリス幼生の成長比較。1リットル当たり20ミリグラム以上の濃度で10日間飼育した場合ほぼ成長が見られなかった。縦軸は体長、横軸は飼育日数を表す(研究グループの論文より抜粋)
異なる粒子濃度でのエラフォカリス幼生の成長比較。1リットル当たり20ミリグラム以上の濃度で10日間飼育した場合ほぼ成長が見られなかった。縦軸は体長、横軸は飼育日数を表す(研究グループの論文より抜粋)
荒川久幸 東京海洋大教授
異なる粒子濃度でのエラフォカリス幼生の成長比較。1リットル当たり20ミリグラム以上の濃度で10日間飼育した場合ほぼ成長が見られなかった。縦軸は体長、横軸は飼育日数を表す(研究グループの論文より抜粋)


 研究グループはふ化数週間たった「エラフォカリス幼生」を異なる濁水の濃度下で10日間飼育。1リットル当たり無機粒子6・9ミリグラム以下の濃度では、10日経過時点でもともと692マイクロメートルだった体長は約1・5倍の1000マイクロメートル以上に成長したが、20ミリグラム以上の濃度では成長がほぼ見られなかった。
 高濃度下で飼育した幼生の胃には浮遊粒子が含まれていたことも確認し、グループは「消化機能に悪影響を与えた」などと分析した。
 無機粒子濃度と卵のふ化率の間には負の相関関係があることも判明した。1リットル当たり無機粒子139ミリグラムを加えた場合、卵のふ化率は6割以下に減少した。ふ化直後の「ノウプリウス幼生」を同濃度の濁水で72時間飼育すると、幼生が生き残る確率は73・6%まで下落。卵や幼生の表面に粒子が付着しガス交換などに支障が生じた。
 研究グループの調査では富士川河口などからは、幼生や卵の成長を阻害する高濃度の濁水が海に流入している。グループは「幼生や卵が浮遊する駿河湾奥の表層を直撃している」と指摘。浮遊粒子は微細で長時間浅い水深にとどまるため、産卵場付近で浮遊する幼生との関連についても詳細な調査を行う。
 (「サクラエビ異変」取材班)

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