時論(8月7日)学力テスト もう一つの論点

 全国学力テストの結果が出るたび、学力とは何か、教育評価とは何かを考えさせられる。
 テストは、正答の状況を数値化して評価の資料にする。満点に近づけば「学力が高い」と評価され、点数が下がってくると「学力低下」と判断する。ただ、忘れてならない論点は、テスト結果は授業を改善するための資料でもあるという点だ。
 その論点は、病院での検査になぞらえることができる。医師は検査結果に基づき、患者の治療方針を決める。薬を処方し、必要なら手術をする。慢性疾患なら生活改善を促すことがある。検査は手段であり、その精度が治療の成果を左右する。
 学力テストの結果を授業改善に生かす観点に立てば、教育委員会や各校は誤解答や未解答が多かった設問に、より注目することになる。
 静岡県の結果は、小6算数は図形の問題が全国平均を下回り、中3数学は出題された4領域のうち、関数の問題のみが全国平均を下回った。
 指導方法は適切だったか、教材の活用に問題はなかったか。同時に実施した学習状況調査も踏まえ、多くの教諭が授業改善に知恵を絞っている。教委はこうした地道な取り組みを積極的に情報発信し、家庭、地域と一体となった教育力向上につなげたい。
 本県は小6の各教科の正答率が全国平均並みか下回り、中3は全国平均を上回る状況が続く。過去問題を頻繁に解かせ、テスト慣れさせれば都道府県別の正答率の順位が上がる可能性がある。選抜試験に役立つとして保護者の関心は高いかもしれないが、学力テストの目的は何かという問いに突き当たることになる。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞