指摘前に静岡県外流出認識 トンネル湧水、JR東海社長「考え方に齟齬」【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、JR東海の金子慎社長は19日、名古屋市内で開いた定例記者会見で、焦点になっている工事期間中のトンネル湧水の県外流出に関し、2018年11月に静岡県主催の有識者会議で問題視される以前から、工事関係者が認識していたことを明らかにした。ただ、当時、JRとしては湧水県外流出を問題視していなかったとし「(県側と)考え方の齟齬(そご)があった」と説明した。

会見するJR東海の金子慎社長=19日午後、名古屋市
会見するJR東海の金子慎社長=19日午後、名古屋市

 県境と工区境の位置が一致しないために貫通まで山梨、長野両県に湧水が流出する問題は、県有識者会議でトンネル工学の専門家が指摘するまで表面化していなかった。
 金子社長は、自身が問題に気付いたタイミングについては、県有識者会議で指摘されてからだったとした上で、18年10月より前の段階で「(県外に)水が流れていくという事実は関係者は認識していた」と述べた。
 また、流域の水資源への影響回避に向けて対策を検討する専門家会議を社内に設置していたとし「(当時から)一貫して流域に迷惑を掛けないという考え方で取り組んでいた」と強調した。湧水県外流出の要因になった工区の設定時期に関しては「私は良く承知していないので申し上げられない」とした。


 ■一問一答 静岡県要請にしっかり応える
 19日に行われたJR東海・金子慎社長の記者会見での主なやりとりは次の通り。
 ―県は環境影響評価(アセスメント)が不十分で、事後調査の途中段階という認識だ。JRの認識は。
 「法の手続きを終えた後、(各県の要請で)条例に基づいて事後調査している。静岡県の場合も要請、質問をいただいているので、しっかりと応えていかなければならない」
 ―国土交通省専門家会議の中間報告を踏まえて、今やらなければならないことは。
 「まずは中間報告についての(流域の)理解が前提で、それがある程度進んで、分かりやすい資料も地域で説明し、質問を受けて答えていく。併せて、モニタリング(水位や水質などの継続的な観測)に対する認識共有を(地域と)やっていかないといけない」
 ―山梨工区は2015年3月までに設定されている。工事期間中のトンネル湧水の県外流出に関し、県有識者会議で18年11月に指摘されるまで、問題だという認識はなかったのか。
 「問題ではないかとなったのは私たちが全量を戻すと言ってからの時期だった。それ以前の段階で、水が流れていくという事実は(工事)関係者は認識していた」
 ―流出は分かっていたが、影響を与えるかどうかの問題意識がなかったということか。
 「大臣意見を取り入れて、流域に影響がないように対策を取りましょうという話を受けて(社内に)専門家会議を発足している。そういう意味では一貫して流域に迷惑を掛けない考え方で取り組んできた。そのために何が必要か、どういうことをしなくてはいけないかについて、(県と)考え方の齟齬(そご)があった」

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