裁判員制度、12万人超が経験 辞退63%、環境づくり課題

 裁判員制度は21日で開始から15年を迎えた。最高裁によると、今年2月末までに裁判員と補充裁判員を務めた人は延べ約12万4千人に上った。これまで選定された候補者のうち辞退した人の割合は63・9%と高く、市民が参加しやすくするための環境づくりや刑事司法への関心を高める工夫が課題だ。

裁判員を務め、判決後に記者会見する人たち(手前)=2009年8月
裁判員を務め、判決後に記者会見する人たち(手前)=2009年8月

 成人年齢の引き下げに伴い昨年から審理に加わることとなった18、19歳では少なくとも26人が裁判員を務めた。
 最高裁のまとめによると、裁判員制度の下で約1万6千人に判決が言い渡され、うち死刑判決は46人、無罪判決は157人だった。原則辞退できないが、学生や仕事で重要業務がある人などは例外的に認められ、辞退率は開始直後の09年は53・1%。徐々に上昇して12年以降は60%台で推移し、23年は66・9%と高止まりの状態が続く。
 初公判から判決までの平均審理期間は9・6日だが、22年は17・5日、23年は14・9日で、導入時よりも長期化している。性犯罪では量刑が導入前より重くなる傾向にある。
 最高裁が23年に裁判員経験者に調査したところ、選ばれる前は「やりたくなかった」「あまりやりたくなかった」とした人が43・4%を占めた。一方、参加後に「非常に良い経験と感じた」「良い経験と感じた」とした人は96・5%に達した。
 経験者の評価と高い辞退率のギャップの原因は何か。一般社団法人「裁判員ネット」代表理事の大城聡弁護士は守秘義務により実情が分からないことで、未経験者の心理的ハードルが高くなっているのが一因と指摘。「誰がどの意見を述べたかなどの個人の特定につながる内容以外については裁判員経験者が第三者に語れるようにし、制度や評議の透明性を高めた方がいい」と提案する。

 裁判員制度 刑事裁判に市民感覚を反映させるのを目的に、有権者から無作為に選ばれた裁判員と裁判官が共同で審理する制度。2009年5月に始まった。構成は原則、裁判員6人と裁判官3人。有罪・無罪を判断し、量刑も決定する。対象事件は殺人や傷害致死など。成人年齢引き下げに伴って裁判員に選ばれる年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられ、昨年から審理に加わるようになった。

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