酒、しょうゆ、みそ、焼酎 豊かな麹の世界【発酵のひみつ⑤】
発酵食品でしばしば使われる麹[こうじ]は、穀物にカビを生やしたものです。しかし、穀物にもカビにも複数の種類がありますから、麹にもさまざまな種類があることになります。
![種麹の表面](/news/images/n147/1464760/IP240325GJI900063000_O.jpg)
日本酒造りに使われるのは、米にコウジカビを生やした米麹です。
しょうゆでは、小麦と大豆を混ぜたしょうゆ麹が使用されます。みそでは、米をはじめ、大豆、小麦それぞれで麹を作ることがあり、米みそ、豆みそ、麦みその味の基盤となっています。いずれもコウジカビを使います。
一方、焼酎を造る場合にはクロコウジカビ、沖縄の発酵食品である豆腐ようの製造では、モナスカス属の赤いカビ、ベニコウジカビが使われます。
日本の麹は、穀物の粒の形が残った散[ばら]麹という独特の物です。一方、中国や朝鮮半島をはじめ、日本を除くアジアの国の多くは、穀物を粉にして練り、まんじゅう状やせんべい状にした餅麹が使われ、使用するカビはクモノスカビが多いです。
ところで造り酒屋では、麹を種麹という麹から作ります。種麹は、胞子を大量に作らせるための物で、蒸した米に木灰をまぶし、コウジカビを長い期間培養します。木灰を混ぜると、胞子の形成が促進されます。こうして作った種麹を保存し、いつでも同じような品質の麹ができるようにしています。
(細矢剛・国立科学博物館植物研究部長)