石川祐希/バレーボール男子主将 52年ぶり五輪表彰台へ 経験値の差克服 日本をけん引【挑戦 2024】

 メダルの有力候補としてパリに乗り込む。バレーボール男子の主将でエースの石川祐希(ミラノ)は日本が優勝した1972年ミュンヘン以来、52年ぶりの五輪表彰台に挑む。「もう強い相手にも気後れしない」。世界ランキングを4位に上げた自信を胸に夏を待つ。

パリ五輪予選のスロベニア戦でスパイクを決める石川祐希=2023年10月、国立代々木競技場
パリ五輪予選のスロベニア戦でスパイクを決める石川祐希=2023年10月、国立代々木競技場
バレーボール男子・石川祐希のイタリアで所属したクラブと日本代表での主な成績
バレーボール男子・石川祐希のイタリアで所属したクラブと日本代表での主な成績
パリ五輪予選のスロベニア戦でスパイクを決める石川祐希=2023年10月、国立代々木競技場
バレーボール男子・石川祐希のイタリアで所属したクラブと日本代表での主な成績

 初めて五輪に出た2021年東京は29年ぶり8強入りの原動力になったが「達成感はない。悔しさしかなかった」という。普段は淡々とした男が準々決勝でブラジルに負けるとコートで涙した。感じた強豪との違いは「経験値の差」だった。ぎりぎりの勝負をいくつ経験し、乗り越えたか。世界トップと戦うため東京からの3年間は積み重ねを重視した。
 昨年は五輪3度制覇のブラジルに公式戦で30年ぶりに勝った。ネーションズリーグは3位で、46年ぶりに主要国際大会のメダルを得た。秋は4大会ぶりに自力で五輪出場権を獲得。キャプテンとしてけん引し「結果を出していることが一番の上積み」と語る。
 勝利のため、自らに課したのは勝負どころで得点する心身のタフさだ。世界最高峰のイタリア1部リーグでは仲間と積極的にコミュニケーションを取り、今季はけがの主将に代わり、コートキャプテンも担う。
 ミラノのセッター、ポッロは「重要な場面や点が欲しい時に任せられる」と信頼する。アルゼンチン代表で東京五輪3位のミドルブロッカー、ロセルは「リーダーがどうあるべきか知っている。多くのものをチームにもたらした」と評した。
 肉体面は米の量を毎食グラム単位で量るなど細心の注意を払う。初めてイタリアに来た当時は嫌いだったトマトも克服。今は積極的に食べる。
 シーズン中は主に自炊で「バレー以外で頭を使いたくない」とメニューは栄養バランスだけを重視する。焼いた肉と野菜スープなど毎日ほぼ同じ内容で成人男性1日の必要カロリーの約1・5倍となる4千キロカロリーを取る。10年前は74キロだった体重は88キロに増え、海外勢に見劣りしない体格で力強さが増した。
 主将の色がチームに出るというのが持論だ。「発言や行動が影響する」と考え、道を示した。22年は「リーダーシップを取れる人が複数いないと勝つのは難しい。個の力を上げることが必要」と周囲に奮起を促した。23年は「組織力で戦わないといけない」と団結を求めた。日頃から模範となることも意識し「指示するためには一番ちゃんとしていないといけない」と練習では最後まで球を追う姿勢を示した。
 8年前に東京五輪の目標を「メダル獲得」と答えたが、意識は「出るからにはメダルを目指したいというレベル」だった。確かな実績と成功体験を重ねた今は違う。「パリでは銅メダルを超える結果を残したい」。それをつかむことが目標の「世界一の選手」になるための条件でもある。

 いしかわ・ゆうき 愛知・星城高で2年時から全国高校総体、全日本高校選手権を2連覇。国体も選抜チームでの出場を含め、2度制した。中大1年の14年に初めて代表入りし、仁川アジア大会銀メダル。中大在学中からイタリア1部リーグでプレー。18年と22年の世界選手権出場。妹の真佑(フィレンツェ)は女子日本代表。ミラノ。192センチ。28歳。愛知県出身。

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