英葬儀業者が遺体放置、親族に別人遺灰返却? 全容不明、被害者憤慨

 英中部ハルで3月、葬儀業者が少なくとも35人の遺体を火葬したように見せかけ、葬儀場内に放置していた事件が発覚した。親族には別人の遺灰を渡していたとみられ、被害者らは「なぜそんな狂ったことを」「人の死への冒瀆(ぼうとく)だ」と憤慨している。業者の評判は良かったという。動機を含む全容は明らかになっておらず、捜査の行方に注目が集まっている。

葬儀場の前に置かれた花束やろうそく=3月15日、英中部ハル(共同)
葬儀場の前に置かれた花束やろうそく=3月15日、英中部ハル(共同)
英国・ハル
英国・ハル
葬儀場の前に置かれた花束やろうそく=3月15日、英中部ハル(共同)
英国・ハル

 「大好きな祖父を失った悲しみに追い打ちをかけられた」。地元警察が事件を発表した約1週間後の3月15日夕、一人の女性(20)がシャッターが閉まったままの葬儀場「LEGACY(レガシー)」をにらんでいた。
 女性の祖父は昨年11月にここで親族に見送られ、火葬場へ運ばれた。「遺灰」を手渡された親族は、スタッフの手を握って感謝を伝えた。
 警察によると、事件は「故人の扱い」を巡る通報により3月6日に発覚。捜査で火葬されたはずだった遺体が次々と見つかり、経営者の男(46)とその娘(23)が、埋葬に関する法律違反や詐欺の疑いで逮捕された。
 女性らは火葬場に同行しなかったため、うそに気付かなかった。発見された祖父の腕に入院時のタグが付いたままだったことから身元が分かった。渡された「遺灰」の身元特定は困難で、女性は「私たちは一体何を大切に保管していたのか」と嘆いた。
 同様の手口を繰り返したとみられ、発見された35人より多くが火葬されなかった可能性もある。
 シャッターの前には被害者らが供えた花束が置かれ、遺体の数にちなみ、ろうそくが「35」の形に並べられていた。警察には、15日までに葬儀場を利用した市民らから1500件以上の電話があった。殺人課を中心に120人以上の態勢で捜査している。
 最大の謎は動機だ。業者のホームページによると、2010年に創業し、遺体があった葬儀場を含め3カ所に拠点を置く。昨年8月に祖父の葬儀を依頼した別の女性(42)は「評判が良く、地元住民の信頼を集める業者だった。経営が苦しくて、火葬にかかる費用を削ろうとしたのだろうか」とため息をついた。
 英メディアによると、行政機関に支払う火葬関連の費用が相当額未払いとなっていた。一方、事業所の一つに隣接する美容関連店の女性店員は「商売は順調そうに見えた。経営者もまともな人だと感じていたのに、何があったのか」と首をかしげた。
 (ハル共同)

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