小児がん、国内未承認薬を投与へ 国立センター、有効性を臨床研究

 小児や「AYA」と呼ばれる若年世代のがん患者に、海外では承認されているものの国内では適応外や未承認となっている治療薬を投与する臨床研究を、国立がん研究センターが始めることが14日、分かった。厚生労働省の専門家会議が計画を了承すれば、来年1月にも開始する。

国立がん研究センター中央病院=東京都中央区
国立がん研究センター中央病院=東京都中央区

 必要とする患者に薬を迅速に届けるのが狙い。臨床研究で有効性が確認されれば薬事承認を目指す。同センター中央病院の小川千登世小児腫瘍科長は「使いたい薬を使えない患者をなくしたい」と訴える。
 「分子標的薬」と呼ばれる、がんの原因となる遺伝子に作用する薬を使用。従来の抗がん剤に比べ副作用が抑えられるとされ、世界的に開発が進む。一方、近年は海外で承認された新薬の国内での承認が遅れる「ドラッグラグ」や、承認に向けた開発のめどが立たない「ドラッグロス」が深刻化しており、小児・AYA世代の分子標的薬にも多い。
 臨床研究では、国内で適応外や未承認となっている慢性骨髄性白血病や腎細胞がん、肺がんなどの分子標的薬を使う。対象は0~29歳で、分子標的薬の使用が、病理学的に有効と診断されたり、遺伝子を調べる「がん遺伝子パネル検査」で推奨されたりしたがん患者。
 薬の種類ごとにそれぞれ最大30人を受け付ける。保険診療を併用して患者の申し出を受けて適応外薬などを投与できる「患者申出療養制度」を活用。治療薬は企業が無償提供し、参加する患者の追加負担は生じない予定という。今後、使用する分子標的薬を増やすことも検討する。
 臨床研究で得られたデータは企業に提供し、国内での開発や承認申請を促す。

 AYA世代 AYAは「思春期と若年成人」を意味する英語「Adolescent and Young Adult」の頭文字。主に15~39歳を指す。国立がん研究センターによると、年間約2万人のAYA世代が新たにがんと診断されると推定されている。進学や就職、結婚、出産など身の回りの環境が大きく変わる時期となるため、個人に寄り添った治療や支援が求められる。小児で発症することが多いがんと、成人で発症することが多いがんが重なる世代でもある。15~19歳は白血病、30代は女性の乳がんが最も多い。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞