南ア 守り抜いた世界一 史上2チーム目の連覇、最多4度目V 頂上決戦で伝統の「壁」発揮 2023ラグビーW杯フランス大会

 【サンドニ(フランス)共同】ラグビーの第10回ワールドカップ(W杯)フランス大会最終日は28日、パリ郊外サンドニで決勝が行われ、南アフリカがニュージーランドを12-11で振り切り、2大会連続で単独史上最多4度目の優勝を果たした。

決勝でハイパントを競り合う南アフリカのポラード(右)とニュージーランドのテレア=パリ郊外サンドニ(AFP時事)
決勝でハイパントを競り合う南アフリカのポラード(右)とニュージーランドのテレア=パリ郊外サンドニ(AFP時事)
ラグビーW杯 決勝トーナメント
ラグビーW杯 決勝トーナメント
ラグビーW杯決勝トーナメント決勝 ニュージーランド―南アフリカ・スコア、メンバー
ラグビーW杯決勝トーナメント決勝 ニュージーランド―南アフリカ・スコア、メンバー
決勝でハイパントを競り合う南アフリカのポラード(右)とニュージーランドのテレア=パリ郊外サンドニ(AFP時事)
ラグビーW杯 決勝トーナメント
ラグビーW杯決勝トーナメント決勝 ニュージーランド―南アフリカ・スコア、メンバー

 2連覇は第8回までのニュージーランドに続いて2チーム目。南半球勢の制覇は5大会連続9度目となった。
 南アフリカは前半にSOポラードの4PGで12-6とリード。後半は押されたが1点差で逃げ切った。前半にフランカーのケーン主将がレッドカードで退場したニュージーランドは追い上げが実らず、頂点を逃した。
 1大会最多に並ぶ8トライを挙げたニュージーランドのWTBジョーダンがトライ王に輝き、75得点をマークしたイングランドのバックスのファレルが得点王となった。

 【評】南アフリカが堅守で逃げ切った。前半にSOポラードが4PGを決めて12-6で折り返した。後半は2度、一時退場者を出したが、力強いタックルで反撃をしのいだ。ニュージーランドは前半にフランカーのケーン主将がレッドカード。後半18分にFBのB・バレットのトライで1点差に迫ったものの逆転を狙った同34分のPGは決まらなかった。
 (共同)
3戦連続1点差勝ち 粘り強さ最後まで  多言語多人種の「虹の国」の期待を背負って体を張り続けた選手は、激戦を制すと飛びついて固く抱き合った。南アフリカの連覇を引き寄せたのは伝統の堅守だった。雨が降る中、力強く優勝杯を掲げたフランカーのコリシ主将は「スポーツだけでなく人生でも団結すれば不可能はない。それを示すことができた」と誇らしげに語った。
 滞空時間が長く正確なキックを蹴り、厳しく競り合って重圧をかけた。素早く間合いを詰め、防御網を突破されてもすぐにカバー。屈指の攻撃力を持つニュージーランドの反則やミスを誘って前半の4PGでリードし、最後の20分以上を1点差で耐え切った。
 チームで唯一フッカーを本職とするムボナンビが序盤に負傷交代するアクシデントも乗り越えた。代役で出たフーリーは21回のタックルで活躍。28回だった身長2メートルのフランカー、デュトイを筆頭に屈強な選手がひたむきに動き回り、タックル回数は相手の2倍以上の208回を数えた。
 アパルトヘイト(人種隔離)政策でつくられた旧黒人居住区出身のコリシは「ここにいることを夢見ることすらできなかった」と語る。貧富の差など問題を抱える国の希望となり、準々決勝、準決勝に続いて1点差の勝利。W杯決勝で負けなしという勝負強さを受け継ぎ、CTBクリエルは「(自陣の)22メートルラインの後ろには家族、そして母国がいるんだ」。世界一の称号を守り抜いた。
 (共同)
NZ痛かった主将の退場  ニュージーランドは14人になっても真骨頂の試合運びでボール保持率は6割を超えた。それでもあと一歩及ばなかった。前半の危険なタックルにより、W杯決勝で史上初の退場となったフランカーのケーン主将は「一生悔いが残る」と言葉を絞り出した。
 6-12で迎えた後半に相手もシンビン(一時退場)で14人になると一気に追い上げた。同14分に鮮やかな連係からSHスミスが決めたと思われたトライは前のプレーの反則で認められなかったが、4分後にB・バレットが飛び込んで1点差に。
 押せ押せムードとなったが、34歳のスミスは「逆転のチャンスは何度もあったが決め切れなかった」。終盤にハーフライン付近から狙ったJ・バレットのPGはわずかに外れて万事休した。
 第1回大会を制した「オールブラックス」の準優勝は南アフリカに敗れた1995年以来2度目。またも天敵に屈し、優勝回数でも先を越された。フォスター監督は「われわれのおかげでドラマチックな決勝になった」とプライドをにじませた。
 (共同)
村田亙の視点 キックの差が勝敗に表れた大会  南アフリカはハーフ団のポラードとデクラークが百戦錬磨の味を出した。最終的にはプレースキックの差。ポラードのキックで勝ったと言っても過言ではない。デクラークは、負けたくないという闘志満々のプレーをしていた。
 ニュージーランド(NZ)に退場者が出て、すぐに勝負が決まるかと思ったが、NZのスキルフルなプレーで試合は拮抗(きっこう)した。後半10分の敵陣中央のペナルティーはPGを狙い、3点差にして重圧をかけるべきだった。相手に一時退場者が出て、お互いが14人の時間帯だったからかもしれないが、結果的にはトライを狙って得点できなかった。後半19分の左からのゴール(失敗)はトップレベルの選手であれば8割くらいは決める位置だが、コルビのキックチェイスもあってか、モウンガは蹴り急いだ感じに見えた。逆転できるキックを2度、外したことが最終的に響いた。
 やはりトーナメントになると守備が大事。自陣で反則をしたら3点を失う。敵陣でプレーすることを一番意識していたのが南アフリカだった。自陣から無理な攻撃はせず、コンテストキックか、相手の陣地に蹴り出すかをしていた。敵陣で得意のディフェンスをやっていれば負けることはない。
 最後まで、すごい試合を見られて感動した。今大会はカードが出ることが多かったが、それに対応できるチームが最後まで残っていた。3位のイングランドは1次リーグのアルゼンチン戦で、14人になってもキックだけで勝った。臨機応変にできるのが世界。日本はそこで差がある。やはり強い相手との試合経験を積むしかないのだろう。
 (時事)
 村田亙(むらた・わたる)東福岡高から専大を経て、1990年に東芝府中(現BL東京)入り。攻撃的なSHとして、96年度からの日本選手権3連覇などに貢献した。99年に日本人初のプロ選手としてフランスリーグのバイヨンヌ(当時2部)と契約し、2シーズン在籍。帰国後はヤマハ発動機(現静岡)で40歳まで現役を続けた。日本代表41キャップで、W杯には91、95、99年に3大会連続で出場。現役引退後は7人制男子日本代表監督、専大監督を歴任した。55歳。福岡市出身。
 (時事)
ライバル対決 W杯3勝3敗  南アフリカはW杯出場8度目で4度の制覇と、優勝確率が50%になった。アパルトヘイト(人種隔離)政策によって国際舞台から締め出され、第2回大会までは不参加だった。
 決勝に進んだのも4度目で全て勝利。後半18分にニュージーランドのFB、B・バレットが挙げたトライは、南アフリカにとって決勝で許した初めてのトライとなったが、勝負強く逃げ切った。
 ライバルのニュージーランドからはW杯で1999年大会以来の白星を挙げ、W杯での対戦成績を3勝3敗の五分に戻した。通算では40勝4分け62敗となった。
 (共同)
リーグワン勢 決勝に計13人  決勝には両チーム合わせ、12月開幕のリーグワンでプレーする計13人が出場した。南アフリカで横浜所属のCTBクリエルは「日本のリーグは世界有数。もっと世界でテレビ放送され、レベルの高さを知ってもらえるといい」と願った。同僚のSHデクラークとともに開幕戦から出場可能とし、日本語で「めちゃめちゃうれしい」と優勝の喜びも口にした。
 ニュージーランドではFBのB・バレットとSHスミスがトヨタに加入。スミスは「2019年W杯でとてもいい時間を過ごせた。本当にわくわくしている」と語った。
 (共同)
ジョーンズ豪監督辞任 日本代表HC 後任候補  オーストラリア代表を率いたエディー・ジョーンズ監督(63)が辞任すると、複数の地元メディアが29日に報じた。同国初の1次リーグ敗退に終わり、去就が注目されていた。
 ジョーンズ氏は自身2度目の母国オーストラリアの監督に就任。地元でW杯が開催される2027年までの契約を結んだ。W杯フランス大会で敗退後、今月17日には「常にオーストラリアに力を注いできたし、より良くしたい」と述べ、続投に意欲を示していた。
 今後に関し、オーストラリアン紙のインタビューでは「オファーはない。12月になったら別の代表チームで指導することを考え始める」と述べた。関係者によると、ジョーンズ氏は日本代表ヘッドコーチの後任候補として名前が挙がっている。
 (共同)
35歳リーチが4年後に意欲  W杯フランス大会に出場した日本代表のリーチ・マイケル(BL東京)が29日、次回2027年W杯オーストラリア大会へ改めて意欲を示した。東京都内で報道陣の取材に応じ、35歳のベテランは「(今大会が)最後じゃないと思っている。出たい気持ちは変わらない」と話した。
 稲垣啓太(埼玉)と松島幸太朗(東京SG)は元日本代表の福岡堅樹さんとともに都内でトークショーに参加。稲垣は既にトレーニングを再開し「体が万全であれば(代表に)またチャレンジしたい」と決意。松島は今後の代表活動について「やらないという選択をしているわけじゃない。(所属先で)自分のプレーにしっかり集中していきたい」とリラックスした表情で語った。
 (共同)

 

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