オンデマンド交通 細るバス網、足どう確保 担い手減少、AI活用も【大型サイド】

 路線バスの利用客減少や運転手不足が深刻化する中、生活の足をどう確保するかが課題となっている。利用者の要望に応じて運行する「オンデマンド交通」は、人工知能(AI)の活用で効率化が進むと期待が大きいが、乗り合いが少なく地域のニーズに合っていないとの声も。専門家は「行政や住民らが一体となって本当に利用したい公共交通をつくり上げる必要がある」と指摘する。

オンデマンド交通の実証運行で使用されている車両とアプリの予約画面=11日、北海道石狩市(アプリ画面の一部を画像加工しています)
オンデマンド交通の実証運行で使用されている車両とアプリの予約画面=11日、北海道石狩市(アプリ画面の一部を画像加工しています)
近鉄富田林駅前のバス停に張られた、金剛自動車のバス事業廃止を伝えるお知らせ=10日、大阪府富田林市
近鉄富田林駅前のバス停に張られた、金剛自動車のバス事業廃止を伝えるお知らせ=10日、大阪府富田林市
オンデマンド交通の実証運行で使用されているアプリの予約画面
オンデマンド交通の実証運行で使用されているアプリの予約画面
大阪府富田林市で運行されている金剛自動車の路線バス。12月でのバス事業廃止が決定している=10日
大阪府富田林市で運行されている金剛自動車の路線バス。12月でのバス事業廃止が決定している=10日
路線バスの輸送人員
路線バスの輸送人員
路線バスの廃止距離
路線バスの廃止距離
オンデマンド交通の実証運行で使用されている車両とアプリの予約画面=11日、北海道石狩市(アプリ画面の一部を画像加工しています)
近鉄富田林駅前のバス停に張られた、金剛自動車のバス事業廃止を伝えるお知らせ=10日、大阪府富田林市
オンデマンド交通の実証運行で使用されているアプリの予約画面
大阪府富田林市で運行されている金剛自動車の路線バス。12月でのバス事業廃止が決定している=10日
路線バスの輸送人員
路線バスの廃止距離

 ▽八方ふさがり
 「12月20日をもってバス事業の廃止を決定しました」。近鉄富田林駅(大阪府富田林市)前のバス停に張られたお知らせ。苦渋の決断を下したのは富田林市など4市町村で路線バスを運行する金剛自動車(同市)だ。
 新型コロナウイルス禍で利用客が激減、2020~22年度は計2億円の赤字だった。観光需要が回復すると、運転手は待遇の良い観光バス会社に流出。運転手の時間外労働に上限を課す「2024年問題」も眼前に迫り、八方ふさがりに陥った。
 国土交通省によると、21年度までの10年間で毎年千キロ前後の路線が廃止された。運転手の低賃金や長時間労働も課題。日本バス協会(東京)の調査では、30年度に運転手が必要人数の3割弱に当たる約3万6千人不足する見込みという。
 ▽補完
 北海道石狩市は22年、公共交通の空白地帯を解消しようとオンデマンド交通の実証運行を始めた。利用者は電話かアプリを使って車両を予約。AIがコンビニなど市内約600カ所から最寄りの発着地点とルートを導き出し、複数の予約があれば乗り合いとなる場合もある。
 定時・定路線と比べ少ない人員で運行でき、市企画課交通担当の上窪健一課長は「既存の路線バスが動脈とすればオンデマンド交通は地域をつなぐ毛細血管。競合ではなく補完する役割を担える」と期待する。利用者の満足度も高く、24年度以降の本格運行を見据えている。
 しかし新たな交通手段に課題も浮かぶ。名古屋大大学院の加藤博和教授(公共交通政策)は「AIで効率的に輸送するには同一方向へのまとまった移動需要が必要だ」とし「乗り合いにならなければタクシーと変わらず運行のコストが大きい」と指摘する。
 生活の足をどう維持すべきか。加藤教授は「利用しない人もさまざまな恩恵を受けていると認識し、地域全体で公共交通を支えるべきだ」と強調。その上で「長年変わらなかった運賃の値上げや補助金の増額も不可避だ」と指摘した。

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