【路線バス】運転手不足、廃止相次ぐ 交通網維持へ支援強化

 地域交通の「最後のとりで」とされる路線バスが苦境から抜け出せない。赤字の累積に加え、安全運行を担う運転手の不足で廃止や減便が相次いでいる。国はバス網の維持へ対策を強化しており、運賃支払いの完全キャッシュレス化はその一環だ。

主要な路線バス事業者の収支状況
主要な路線バス事業者の収支状況

 ▽離職
 国土交通省がまとめた全国の主要事業者(保有車両30台以上)の収支状況によると、コロナ禍が直撃した2020年度の赤字額は1992億円に上った。22年度は917億円に縮小した。しかしコロナの影響がなかった18年度の2倍以上の水準で、228事業者の85%に当たる194事業者が赤字だった。
 さらに事業者を悩ませるのは運転手の不足だ。コロナ禍で多くが離職した後、急速な人流増加と訪日客回復が起きた。今年4月に時間外労働規制が始まり人繰りは悪化。日本バス協会は、24年度は必要数約12万9千人に対し約2万1千人が足りないと試算する。
 路線は08年度から22年度までの15年間で約2万キロが廃止となった。減便も止まらず、今春のダイヤ改正では横浜市や福岡市など都市部にも及んだ。
 国交省幹部は「これまでは人口減少で乗客が少なくなり、運行をやめるという流れ。これからは需要があるのに運転手が足りなくて維持できない時代に入る」と危機感を募らせる。
 ▽効果
 業界側は、現金での運賃収受をやめる「完全キャッシュレスバス」実現を求めてきた。バス協会の清水一郎会長(伊予鉄グループ社長)は「運賃箱は新札になれば改修も必要になる。東京で現金払いは5%程度。すべてのバスに運賃箱を置くのは負担が大きい」としている。
 完全キャッシュレス化は、バスを時刻表通りに走らせる定時性の向上や、運転手が運転業務に専念できるといった効果も期待できる。運賃支払時の両替や、支払額の確認など現金特有の対応が不要になるためだ。
 最大の課題は、電子決済を使っていない利用者への対応。効率化を急ぐあまり置き去りにすれば、トラブルやさらなるバス離れを招きかねない。運行中の機器故障やシステムエラーへの備えも必要となる。
 国交省の担当者は、完全キャッシュレス化を強制する意図はないとした上で「地域性や利用者の実情を最も分かっているのは事業者。できるところから少しずつ取り組んでほしい」と話した。

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