迅速実用化、人類に貢献 ワクチン開発ノーベル賞

 【解説】遺伝物質を利用したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、新型コロナウイルス感染症の本格的な流行開始からわずか約1年の短期間で実用化された。世界が未知のウイルスの底知れぬ脅威に直面する中、人々の命を救ったり重症化を防いだりして対策の鍵となった。人類に対する大きな貢献であり、カタリン・カリコ氏らの基盤技術はノーベル賞にふさわしい。
 新型コロナが最初に報告されたのは2019年12月。震源地は中国湖北省武漢市だった。日本では20年1月中旬に初めての感染者が確認され、瞬く間にアジアや欧米など世界中に拡大した。
 カリコ氏らの技術を基にドイツのビオンテックと米ファイザーが共同開発したRNAワクチンの接種は20年12月、英国で開始。直後に米モデルナ製も続いた。以前から基礎的な研究を重ね、流行後に国が強力に開発を後押ししたことも功を奏した。
 臨床試験では、どちらのワクチンも発症を防ぐ効果が90%超という高い性能が示された。変異したオミクロン株に対しては効果が落ちたが、改良を繰り返し、複数の派生型に対応したワクチンが実用化している。
 英インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、ワクチン接種によって20年12月~21年12月に世界で約2千万人の死亡を防ぐことができたと推計。RNAワクチンを多く打てた国が特に恩恵を受けたと分析している。
 新型コロナワクチンは高所得国にいち早く普及した一方、発展途上国や難民の接種に時間がかかった。将来の新たな感染症に備え、国際的に公平かつ迅速に分配する取り組みが重要になる。

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