ヤングケアラー支援に奔走 元当事者、経験生かし 学校訪問やSNS相談【スクランブル】

 大人に代わり日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーを支援するため、コーディネーターを配置する自治体が増えている。今年4月に東京都品川区から委託を受けた2人は、自身も元当事者。経験を生かし、学校訪問や交流サイト(SNS)での相談対応など、行政との橋渡し役になるべく奔走している。

コーディネーターの宮崎成悟さん(左)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区
コーディネーターの宮崎成悟さん(左)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区
自身の体験を語るコーディネーターの宮崎成悟さん(奥右)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区の私立青稜中
自身の体験を語るコーディネーターの宮崎成悟さん(奥右)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区の私立青稜中
コーディネーターの活動のイメージ
コーディネーターの活動のイメージ
コーディネーターの宮崎成悟さん(左)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区
自身の体験を語るコーディネーターの宮崎成悟さん(奥右)と小林鮎奈さん=7月、東京都品川区の私立青稜中
コーディネーターの活動のイメージ

 「ヤングケアラーは誰でもなり得る。気軽に相談してほしい」。7月中旬、品川区の私立青稜中で開かれた訪問授業で、コーディネーターの宮崎成悟さん(34)と小林鮎奈さん(32)が、3年生約180人に語りかけた。
 幼少期から病気の母親を介護してきた経験を持つ2人。授業では、ヤングケアラーや自らの体験について説明した。母親が交通事故で家事ができなくなった母子家庭などの想定で、誰に相談するのか、将来どうするのかといったことを考える時間も設けた。三矢さくらさん(14)は「あまり聞く機会がないのでためになった」と話した。
 ヤングケアラーは学校のクラスに1、2人いるとされるが、子どもが自分の状況を十分理解できていないケースもあり、行政がいかに早期発見し、支援につなげられるかが課題となっている。
 宮崎さんは、2021年に一般社団法人「ヤングケアラー協会」を設立。就職支援や、当事者同士が交流するオンラインサロンの運営を手がけており、小林さんも一員として活動している。
 品川区の委託を受けた4月以降は、支援が必要な子どもの情報を求め学校や児童館を訪問。ケアマネジャー向けの研修会開催のほか、SNSで当事者の相談に乗るなど、学校や行政と連携して支援態勢づくりを目指している。
 「自分がヤングケアラーという認識はなかった。周囲に助けを求める言葉もスキルもなかった」と振り返る小林さん。助けになったのは幼なじみの母親や、学校の先生だったといい「気にかけて、自分がどうしていくべきか整理してくれた。気楽に話せる大人の存在はとても大事」と話す。
 宮崎さんはヤングケアラーを「霧がかかった暗い森を歩き、目の前の道しか見えない状況」に例える。介護のため大学に通えなかったり仕事を辞めたりした。「『何が変わるのか』と思い誰にも相談しなかったが、大人には知見があり、いろいろな選択肢を示してくれる。これでもいいという道を選べれば自分らしく生きられる」と話す。
 区の担当者は「経験者だからこそ寄り添える。孤立して奮闘している子どもたちと、支援に携わる人たちをつないでほしい」と期待を寄せる。

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