新型コロナ5類移行 普通の風邪にはなお時間 変異株発生に警戒を【表層深層】

 新型コロナウイルス感染症の法律上の扱いが「5類」に移行した。だがウイルスがなくなったわけではなく、流行が今後も繰り返すことは間違いない。流行状況を大きく左右する変異株が発生するリスクもあり警戒が必要だ。社会全体が免疫を獲得し、以前からある他のコロナウイルスと同様の「普通の風邪」とみなせるようになるには長期間が必要とみる専門家は多い。流行が続くことを前提に、いかに共生するかが今後の鍵になる。

ヒトに感染する主なコロナウイルス(新型コロナを除く)
ヒトに感染する主なコロナウイルス(新型コロナを除く)
新型コロナウイルス・オミクロン株の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)
新型コロナウイルス・オミクロン株の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)
ヒトに感染する主なコロナウイルス(新型コロナを除く)
新型コロナウイルス・オミクロン株の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

 ▽免疫
 「ワクチンがなければ、従来株の毒性を100とするとオミクロン株は80程度。ウイルス自体の毒性が大きく下がったわけではない」。現在の流行の主流になっているオミクロン株の病原性について、長崎大の古瀬祐気教授はこう解説する。
 政府が5類移行を決めたのは、国内の新型コロナ感染者の重症化率や致死率が季節性インフルエンザ並みに下がったことが大きな理由だ。オミクロン株に置き換わったことが低下の主因と考えている人が多いが、古瀬教授は、ワクチンの接種がある程度行き渡ったことと、感染して免疫を獲得した人が増えた影響の方が大きいと強調する。
 ただ、獲得した免疫は時間が経過するにつれて低くなる。日本は欧米と比べると感染した人が少ない。今後も冬場を中心に定期的に流行が続くと予想され、古瀬教授は「重症化リスクの高い人などには、当面は年1回のペースでワクチンの追加接種を続けていくのが望ましい」と話す。
 ▽プロセス
 新型コロナが風邪のようになる時期は来るのだろうか。国立感染症研究所によると、人に感染すると風邪の症状を引き起こす、いわゆる「普通の」コロナウイルスは4種類ある。また、2003年に発見された重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスもコロナの一種だ。
 独協医大の増田道明教授によると、普通のコロナの一つ、OC43という種類が確認されたのは1960年代のこと。だが2005年に発表された論文によると、19世紀末には既に出現しており、ロシアから世界に広まったらしい。当時「ロシアかぜ」と呼ばれるパンデミックが発生していた。
 ロシアの内陸部で広がった肺炎は欧州に波及、死者が増加した。さらに米国や日本にも到達、その後定着したようだ。起源は牛のコロナとみられる。増田教授は「動物のコロナが人間に広がり、変異を繰り返して風邪コロナとして定着するプロセスを人類は何度か経験している可能性は高い」と指摘する。
 ▽ゲームチェンジ
 各個人が生涯で何度も感染を繰り返すことで、社会全体が安定的に免疫を獲得する。その段階でようやく普通のコロナ並みになると考えられる。古瀬教授は「新型コロナが社会に与える影響をほとんど気にしなくなるまでには長い年月がかかるのではないか」と指摘。「コロナとともにいることが日常になる。他人の対応を尊重するような社会づくりが必要になる」と話す。
 ただ新たな変異株への警戒は引き続き必要だ。国内ではオミクロン株の新たな派生型「XBB・1・9」が広がりつつある。京都大の西浦博教授らは、オミクロン株のように流行状況を大きく変える変異株について、出現確率は1年間で25%と試算する。4年に1度の割合だ。「まだゲームチェンジがありそうだ。備えておく必要がある」と警鐘を鳴らす。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞