新型コロナ5類移行 医療機関数、目標に届かず 「絵に描いた餅」懸念も【表層深層】

 新型コロナウイルス感染症が5月8日に5類に移行することが正式に決まった。厚生労働省が公表した移行後の医療提供体制の概要によると、外来診療をする医療機関は約4万4千施設となる。現在より約2千施設増えるが「約6万4千施設に増やす」との政府目標には移行時点では届かない。実現には相当なてこ入れが必要で、専門家からは「絵に描いた餅だ」との声も上がる。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相=27日午前、厚労省
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相=27日午前、厚労省
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相(奥)=27日午前、厚労省
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相(奥)=27日午前、厚労省
新型コロナウイルス感染者の治療に当たる東京医科歯科大病院の医師ら=1月、東京都文京区(同大学提供、画像の一部が加工されています)
新型コロナウイルス感染者の治療に当たる東京医科歯科大病院の医師ら=1月、東京都文京区(同大学提供、画像の一部が加工されています)
新型コロナ5類移行後の医療体制
新型コロナ5類移行後の医療体制
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相=27日午前、厚労省
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けなどに関し、記者会見する加藤厚労相(奥)=27日午前、厚労省
新型コロナウイルス感染者の治療に当たる東京医科歯科大病院の医師ら=1月、東京都文京区(同大学提供、画像の一部が加工されています)
新型コロナ5類移行後の医療体制

 ▽労力
 「限られた医療機関の特別な対応から、幅広い医療機関による通常の体制に移行する」。加藤勝信厚労相は27日、5類移行を正式表明した記者会見で、今後の医療の在り方をこう語った。
 外来診療をする医療機関は、発熱外来を主体とした現在の約4万2千施設から、季節性インフルエンザの体制を念頭に一般の内科・小児科など最大約6万4千施設に増やす想定。厚労省関係者は「診療報酬も減ったため、相当苦労した」とこぼし、約4万4千施設とした今回の数の積み上げに労力を要したと明かす。
 これまでも感染者が急増し医療逼迫が深刻化するたびに、外来の拡大が課題となった。ただ高齢の医師が1人で運営している診療所や、都会のビルの一室にある狭いクリニックなどでは、院内感染対策が難しく、受け入れが進まなかった。
 ▽メリット
 厚労省は、設備整備や個人防護具の確保などの支援を継続し、過度な感染対策には見直しを促すなど、新規参入のハードルを取り除く取り組みを打ち出す。ただ外来や入院に対応する医療機関に手厚くしていた診療報酬の特例措置は縮小されるため、診療を始めるメリットは小さくなる。
 厚労省担当者は「医療機関と相談し、何がネックなのか把握する必要がある」と話し、今後も対応医療機関の増加に取り組むと強調するが、一筋縄ではいきそうにない。
 一方、入院では、移行から9月末までで、病院約7400施設と診療所約千施設の計約8400施設が、最大計約5万8千人を受け入れる。感染力が強いオミクロン株が主流になった流行「第6波」以降の最大入院者数は約5万3千人で、数字上は上回る見込みだ。
 厚労省によると、これまで受け入れの主力だった確保病床がある医療機関は、重症者らに重点化し約2万3千人分。受け入れ経験がない施設を含め他の医療機関が、軽症の入院患者ら計約3万4千人分を担う。端数を含め合計で約5万8千人分だ。
 ▽緊張
 高齢者ら重症化しやすい人が多く集まる医療機関で院内感染が起きれば被害が大きくなる恐れがあり、移行後も緊張が続くとみられる。
 東京医大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「新型コロナの感染力は季節性インフルエンザよりも強い。特別な感染予防策が必要だ」と指摘。リスクの高い慢性疾患の患者を抱える診療所では、新型コロナ患者の受け入れは現実的ではないとみる。
 感染対策でコストがかかるのも事実で、診療報酬の加算などのインセンティブが今後も必須だと訴える。「単に医療機関へ要請するだけでは絵に描いた餅に終わりかねない。今年も流行の波が来ることが予想されるが、このままでは再び医療逼迫が起こる恐れはある」と警鐘を鳴らした。

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