台湾経済に暗雲 主力の半導体が需要減 対中関係、総統選にも影響【大型サイド】

 新型コロナウイルス禍でも堅調な成長を遂げた台湾経済に暗雲が広がっている。金融引き締めで景気が悪化する主要国への輸出が振るわないためだ。世界的な需要減で特に主力の半導体が勢いを失っている。経済の減速は中国との関係や来年1月の次期総統選にも影響を与えそうだ。

台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾の実質GDPの推移
台湾の実質GDPの推移
台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾北部・基隆港に並ぶコンテナ=2月(ロイター=共同)
台湾の実質GDPの推移

 ▽成長鈍化
 「世界経済は不確実性に満ちている」。2月下旬、経済団体の会合に出席した蔡英文総統は、世界的なインフレなど不安要素が依然多い点を踏まえ、中小企業向けの支援を約束した。
 台湾は主要国に比べ新型コロナの感染拡大を抑えたとされ、2021年の実質国内総生産(GDP)は前年比6・53%増と高い成長率を示した。
 しかし行政院(内閣)が今年2月に発表した22年の速報値では2・45%増に減速し、23年予測値は2・12%増に鈍る。23年1~3月期は2四半期連続の前年同期比マイナスとなる見通しだ。
 ▽在庫調整
 背景には輸出の落ち込みがある。財政部がまとめた貿易統計によると、2月の輸出額は前年同月比17・1%減で、マイナスは6カ月連続だ。
 台湾経済の成長は近年、半導体がけん引してきた。第5世代(5G)移動通信システムの発展やコロナ禍での在宅特需に応えた。しかし世界半導体市場統計によると、今年の世界市場は4・1%縮小し、19年以来4年ぶりにマイナスとなる。
 受託製造の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)の黄仁昭財務長も1月の記者会見で「末端需要が引き続き低調で、在庫調整が続いている」との見方を示した。
 ▽中国
 日本貿易振興機構(ジェトロ)の小林伶リサーチ・マネジャーは「台湾が(市場の)9割を占めるスマートフォンや5G向けの先端半導体は今後も需要が期待できる。在庫調整が落ち着くとみられる今年後半には輸出が好転するはずだ」とも話す。
 鍵となるのは電子部品の輸出先の6割を占める中国・香港との関係だ。コロナ感染の拡大を抑え込む「ゼロコロナ」政策の終了は輸出拡大に好材料となるが、日米欧による半導体の対中輸出規制は回復の足かせともなり得る。
 蔡政権は経済の脱・中国依存を推進する。しかし輸出面での対中依存度は依然高い。経済の減速が続けば中国の重要度が見直され、対中政策が主要テーマになる次期総統選にも影響を及ぼす可能性がある。(東京共同=山上高弘)

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