5類移行後のコロナ医療費 高額薬支援で負担急増回避 他の病気とバランス重視【表層深層】

 新型コロナウイルス感染症の5類移行後の医療費を巡り、政府は原則として自己負担を求める一方、高額な薬や入院医療については、公費支援を一定期間継続する方針だ。受診控えを避けるため急激な負担増が起きないように配慮しつつ、インフルエンザなど他の病気にかかった場合との公平性を重視した。

厚労省が開いた専門家による感染症部会=1月、東京都港区
厚労省が開いた専門家による感染症部会=1月、東京都港区
5月8日以降の医療費のイメージ
5月8日以降の医療費のイメージ
厚労省が開いた専門家による感染症部会=1月、東京都港区
5月8日以降の医療費のイメージ

 懸念
 「患者の医療負担について、5類は公費支援なしが原則だ。少なくとも軽症者の医療費や検査費用などは類型見直しと同時に打ち切りでもよいのではないか」。1月に専門家が集まって開かれた厚生労働省の感染症部会。出席者の一人はこう指摘した。
 新型コロナは現在、感染症法上の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられており、法に基づき患者に対し、入院勧告や外出自粛要請などの行動制限を伴う措置を実施している。その代わり外来・入院の医療費は、初診料などを除いて公費で支援し無料で医療を提供してきた。だが、5類移行後は根拠はなくなる。
 それでも政府が公費支援を継続する背景には、高額な医療費によって受診控えを招くのではないかという懸念がある。
 5類移行後も新型コロナの流行はしばらく続くというのが、専門家の一致した見方。「医療費が払えないという理由で重症化リスクが高い人が病院に行けず、自宅で亡くなるようなことはあってはならない」。厚労省幹部は支援継続の必要性を強調する。
 インフルエンザ
 5類に移行する5月8日以降の公費支援をどのように見直すのか―。厚労省内部の議論では、急激な負担増の回避と他の病気との公平性に重点が置かれた。
 新型コロナの治療薬は、1人当たりの薬価が10万円近い抗ウイルス薬モルヌピラビルなど、高額なものがある。3割を自己負担とした場合、支払額は3万円程度になる。そこで、高額な治療薬については公費支援を一定期間継続すると判断した。
 一方で「解熱剤も無料にすると、なぜコロナだけなのかとなってしまう」との見方もあり、外来に関しては、基本的にインフルエンザの診療で費用負担を求めているものは自己負担の対象とすることとした。医療機関での検査費用についても、自ら検査キットを購入して行う自己検査が普及している実情を踏まえ、公費支援は終了する。
 期限
 政府試算では、窓口負担3割の人が外来で初診と検査を受ける場合、高額薬の無料継続によって4千円程度に抑えられ、インフルエンザと同水準になる見込み。75歳以上で1割負担の場合は、千数百円になる。
 横浜市立大の五十嵐中准教授(医療経済学)は政府見直し案について「高額治療薬や入院費など、負担が大きい部分をうまくカバーしている」と評価する。
 ただ政府は9月末を支援策のいったんの期限とする考えで、その後は患者負担が跳ね上がる恐れがある。五十嵐准教授は「重症化リスクがある人の受診控えを防ぐためにも、医療費の自己負担が当面は大きく増えないことを正しく理解してもらうことが大切だ。10月以降も急に負担額が増えることのないよう注視する必要がある」と話している。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞