災害避難所、ペットもOK? あなたの街は…【NEXT特捜隊】

 災害時、避難所はペットを受け入れてくれるのでしょうか―。読者の日常の困り事や疑問を取材、調査する本社「NEXT特捜隊」に、静岡市駿河区の40代男性から疑問が寄せられた。家族の一員にもなっている犬や猫。避難する際に、飼い主の「連れて行きたい」という思いは強い。関係者に取材した。(TEAM NEXT編集委員 福田雄一)

自宅の飼い猫を連れて最寄りの避難所まで同行訓練をする投稿者の男性=2020年12月、静岡市駿河区内
自宅の飼い猫を連れて最寄りの避難所まで同行訓練をする投稿者の男性=2020年12月、静岡市駿河区内
避難所のペットスペース設置事例(静岡県避難所のペット飼育管理ガイドラインを基に作成)
避難所のペットスペース設置事例(静岡県避難所のペット飼育管理ガイドラインを基に作成)
自宅の飼い猫を連れて最寄りの避難所まで同行訓練をする投稿者の男性=2020年12月、静岡市駿河区内
避難所のペットスペース設置事例(静岡県避難所のペット飼育管理ガイドラインを基に作成)

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 ■30市町、受け入れ可
 環境省のガイドラインでは、災害時に飼い主はペットを連れて逃げる自助が「原則」とされている。県衛生課によると、全てあるいは一部の避難所で受け入れる市町は県内35市町のうち30市町。ただ、全避難所で受け入れる市町は県内でまだ半数にも達していない。
 県動物保護協会の斎藤俊夫事務局長は「『犬猫の世話までは無理だ』と受け入れに消極的な自治会もある」と実情を話す。こうした自治会には「ペットを置いて逃げることをためらい、命を落としては元も子もない」と理解を求めているという。
 指定の避難所がペット受け入れ可能かどうかを知るにはどうすればいいか。県衛生課の担当者は「ホームページで公表していないケースが多い。市町の担当者に直接聞いて、確認してほしい」と話す。もし受け入れ不可の場合は「直接市町に要望してほしい。そうした声が広がりにつながる」と訴える。

 ■必ずケージに入れて
 「避難所に連れて行ったとしても、鳴き声や臭いで、ほかの避難者に迷惑をかけないだろうか」。心配する飼い主は多い。実際に東日本大震災や熊本地震では、トラブルの事例が報告されている。
 同協会は、飼い主の不安に応えるためペットの災害対策を記した冊子を作成。むやみにほえたり、不必要にかんだりしないためのしつけの方法が盛り込まれている。斎藤事務局長は「どんな環境下でも適応できるように、飼い主は普段からしつけを心掛けておくべき」と強調する。
 伊東市は昨年5月に、一緒に避難してきたペットを受け入れる避難所の運営訓練を実施した。避難してきた飼い主が受け付けから、指定の場所に連れて行くまでの流れを実践した。同市の担当者は「避難するときはペットを必ずケージに入れてほしい」と呼び掛ける。
 投稿者の男性が最寄りとする静岡市駿河区内の避難所はペットの受け入れが可能か。同市危機管理課に問い合わせると、「区内はほとんど受け入れ可能」だという。

 ■訓練、してみると…
 男性は昨年末「不安になるばかりでも仕方がないから」と、飼い猫を連れた同行避難の訓練を自ら行った。ペット用の防災グッズを詰めたかばんと、飼い猫1匹を入れたキャリーバッグを抱え、避難所まで2キロの道を歩いてみた。
 訓練してみると、荷物が想像以上に重かったり、猫が車の音を怖がり、緊張状態が続いたりとさまざまな気付きが得られたという。「室内飼いなので外に慣れるためにもこれからも時々、自分自身で訓練をしてみたいと思います」と話した。

 ■トラブル防止 静岡県がガイドライン
 避難所でペットとどう過ごすかについては、過去の地震でも課題に。日本愛玩動物協会の調べによると、1995年1月に発生した阪神大震災では犬の38%、猫の25%が避難所の屋内で飼い主と同居した。一部で動物嫌いの人とのトラブルになり、飼い主を退去させる事態に発展したケースもあった。
 2011年の東日本大震災や16年の熊本地震でも同様のトラブルが発生し、環境省は地方自治体にペット受け入れの体制整備を促した。17年に県が作成した「避難所のペット飼育管理ガイドライン」では、トラブル防止策としてペットを飼っていない避難者と交わらないことなどを挙げ、避難所でペットスペースに最適なポイントを紹介している。

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