静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(17)静岡型ガバナンス

 ガバナンス(統治)という言葉が出ると皆かしこまった表情になるが、組織の遺伝子と考えれば難しいものではない。ただ、遺伝子と違うのは、後天的に変わらなければならないことだ。

漫画=かとうひな
漫画=かとうひな

 日本のガバナンスは個人主義・競争社会の米国型へ移行するべきだとする議論があるが、文化背景、社会制度、組織の構造などから見て不可能だ。また、無理な移行を試みると、日本本来の競争力がそがれてしまう。だからと言って昔ながらの日本型ガバナンスに回帰するのは、私が大学生の時のジーンズを無理やりはこうとするような、「希望と現実」の乖離[かいり]を無視した行為である。
 さて、静岡型ガバナンスはどのような進展を遂げるべきか? 本県は人口統計学的動向が全国市場に近い特性を持っており、集団における高い協調性、長期的な相互発展志向の信頼関係に基づいた取引、高いリスク回避傾向など、日本型のガバナンスにおける特徴が一層色濃く出る。ということは、その課題も似ていることになる。
 第3次産業の生産性は、製造業の動向に左右されやすく、その向上の遅れを伴う。これは現在の日本が抱えている課題そのものである。この状況を打破するためには、静岡独自の「成長の素」の開発が望まれる。それには、自前主義から脱却し、自社だけでなく他社や大学、そして地方自治体など異業種・異分野が持つ技術とノウハウなどの資源の流出入を活用し、その結果、組織内で創出した技術革新を組織外に展開するオープンイノベーションを行うことが大切だ。静岡は東部、中部、西部の産業構造がそれぞれ異なった経済圏を有するので、オープンイノベーションを試みるには最適ではないか。
 オープンイノベーションを収益化するには、日本型ガバナンスの欠点である低いヒトの流動性、遅い・少ないカネの集まり、そして何よりも過度な保守性を改善しなければならない。失敗を容認する、静岡の「優しい」県民性を礎とすることで、その第一歩が始まると感じる。 (竹下誠二郎/経営情報学部教授 比較ガバナンス)
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

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