(写真・文=社会部・菊地真生)

若い世代を中心に人気を集めるラーメン店の9周年記念感謝祭。2023年に伊豆箱根鉄道三島田町駅前から三嶋大社近くに移転した同店は、音楽イベントを定期的に開催し、アパレルやグッズ販売も手がけるカルチャーショップとしての側面も持つ。2階にはカフェ・ワインバルの「otro(オトロ)」が入店し、感度の高い人々が集うスポットとなっている。
この感謝祭には“裏テーマ”がある。2010年から2016年まで毎年、狩野川さくら公園(伊豆の国市)で開かれた入場無料の音楽フェス「IZU YOUNG FES(イズヤングフェス)」の最終回から10周年。節目の年に開かれた、小さな、しかし熱量の高いフェスなのである。
店主の高梨哲宏さんは20代のころ、都内を拠点にバンド「ヤング」として活動しながら、イズヤングフェスを主催した。10年代前半、個人主催の音楽フェスはまだまだ珍しい存在だった。狩野川河川敷で開催した前例のない試みは、当時の来場者に大きなインパクトを残したが、バンドの解散とともに幕を下ろした。
高梨さんは、兄が経営する「ラーメンろたす」(清水町)での修行を経て2017年、三島田町駅前にギャラリー併設のラーメンやんぐを開業。展示やライブを定期的に開催するようになると、同店での間借り営業から独立した「スープカレーよつば」、カルチャーショップの「SLEEPY」や独立系書店の「ヨット」など、30代の店主による個人店が周辺に続々と増えていった。
店主の多くはミュージシャンでもあり、音楽好きが自然に集まる磁場が生まれた。当時20代だった筆者にとって、一地方都市の片隅でしかなかった三島田町駅前は、「中央線の延長線上にある、東京の一番西側」のような、都会的かつリラックスした空気が流れる貴重な居場所だった。
コロナ禍以降は都内からの移住者も増え、こうしたスモールショップの存在感はさらに増していく。各店の店主や常連客のDJたちが一つの「キャラバン」となり、「チームみしま」として長野県松本市や茨城県結城市などに遠征出店・出演する機会も増えていった。近年はメンバーそれぞれが週末にイベントを開き、市内では常に音楽と食が交差している。今回の「ミニヤングフェス」は、まさに集大成と言えるだろう。
ミニヤングフェスには2010年代以降の三島カルチャーを支えてきた顔ぶれが出店し、メインのライブにはイズヤングフェスの運営メンバーが再集結した。俳優としても活動するMiyu Ogawaは、ヤングの楽曲「やさしいパンクス」を歌い上げ、これまでの歩みをねぎらった。ceroなどのサポートでも知られる古川麦は、ギター弾き語りとボイストランペットで会場を豊穣な空間に染め上げた。

現在、高梨さんとヨットの菅沼祥平さん、スープカレーよつばの和田侑也さんの店主3人は、バンド「みふく」として活動している。ギター、ベース、キーボードに宅録機材を加えたシンプルな構成で、日々の生活に寄り添う音楽を体現する。彼らが披露した楽曲は、コロナ禍に注目された「ベッドルームミュージック」ならぬ、店の営みと表現が直結した「スモールショップミュージック」と呼ぶにふさわしい。
高梨さんは「以前は山の中まで行かないと難しかったイベントが、今は三島の街中で開けるようになった」と変化を語る。「イズヤングフェスの時は、やる奴なんて自分しかいなかった。でも今は、みんながあちこちで面白いことを仕掛けている。だからこそ『俺もやらないと』と思えた」
個人の裁量で、生活を大切にしながら、やりたいことを実現する。小さな個人店が連なり、街に心地よい居場所を増やしていく。三島に見る地方都市カルチャーは、一つの成熟の形に達したように感じられた。










































































