農業の経営を改善し障害者の社会参加を進める「ユニバーサル農業」に浜松市の農園が取り組んでいます。関わった人、誰もが100点になれるという仕組みは海外からも注目を浴びています。
浜松市中央区でチンゲンサイなどを栽培する農業法人「京丸園」。この農園が実現したのが農業と福祉を融合した「ユニバーサル農業」です。
<京丸園 鈴木厚志代表>
「簡単に言うと農業をユニバーサルデザインしていこう、誰でも関われる農業をつくろうという考え方になります」
京丸園では106人の従業員のうち25人が障害者です。みんなが仕事をしやすい環境がデザインされています。例えば、チンゲンサイを栽培するパネルではー。
<京丸園 鈴木代表>
「きょう初めての人でも、障害のある人でも穴の上で指を離してくださいが理解できる人なら絶対に100点になる仕組み」
ユニバーサル農業は人ではなく、施設や設備を変えて多様な働き方を生み出します。芽ネギから虫などを取り除く機械は動作がゆっくりな人のために開発しました。作業はスローペースですがそのぶん虫などが多く取り除かれ、障害者の特性が商品の価値を高めることにつながっています。
<京丸園 鈴木代表>
「彼らは動作がゆっくりという価値、それによって虫が減る、農薬が減らせる、商品の価値を上げられる。お互いの価値を高められる仕組み」
この取り組みは従業員のやる気を引き出します。
<従業員>
「ここは本当に人として接してくれるので、そこが一番のメリット」
京丸園はユニバーサル農業を続けたこの30年間で作付面積は2倍に、売り上げは10倍になりました。
<従業員>
「剪定作業とか、これは自分にやりやすい仕事だなと」
障害者の雇用と儲かる経営を実現したユニバーサル農業ですが、普及には大きな課題があります。
<京丸園 鈴木代表>
「これからの農業は規模感を大きくして多様な人たちが入れるような農業にしなければいけないのが課題」
日本の農家は96%が家族経営などの小規模事業。人手が少ない中では障害者の特性を生かすことは難しいのが実情です。一方で、この取り組みに海外から興味が寄せられています。
「普通ビジネスは急いでやらないといけないですよね?だけどこの仕事は急ぐと怒られる」
2月9日、京丸園を視察したのはインドで社会問題の解決などに投資を行う「ネクストバーラトベンチャーズ」です。インドでは農業を志す若者が減っているほか、障害者の雇用の創出などが社会問題になっています。
ネクストバーラトは視察を通じてユニバーサル農業には投資する価値があると判断したようです。
<ネクストバーラトベンチャーズ ビプル・ジンダル社長>
「すごくポテンシャルがあると思います。誰でも農業ができるデザインとか、これはインドにあった方がいい、実証実験できたらおもしろい」
<京丸園 鈴木代表>
「農業の問題、福祉の問題はどの世界にもあるので、そういう話は共通して話せると思う」
多くの人を幸せにするために編み出されたユニバーサル農業。そのビジネスモデルは海を越えて世界に波及する可能性を秘めています。