「逃げられない」「走れないからね、みんなね」進む人口減少と社会インフラの“高齢化” 浮き彫りになった防災対策の難しさ【わたしの防災】

2024年12月、静岡県内各地で行われた「地域防災訓練」では、高齢化による防災対策の難しさが浮き彫りになりました。専門家は「人だけでなく、社会インフラも高齢化している」と指摘しています。

12月1日の「地域防災訓練」。沿岸部に位置する南伊豆町子浦では、住民のおよそ5割が参加しました。地震発生から約8分で、最大12メートルの津波が襲うと想定されているこの地域は今、大きな問題に直面しています。

<地域住民>
「階段が辛くなるね、歳をとると…歳だな」

深刻な高齢化です。東子浦地区では住民の半数以上が高齢者です。

<地域住民>
Q. 地震あったとき大変ですね?
「逃げられない、心臓手術しているから。せつなくて」

高齢化とともに訓練の質にも影響が出ています。

<地域住民>
「やっぱりちょっと緊迫感は足りないかもしれない」
「言っちゃ悪いけど、あんまり意味がない。所詮は訓練だよ」
「走れないからね、みんなね」
「おじい、おばあだから」

2024年元日の能登半島地震で被害の大きかった石川県輪島市・珠洲市の高齢化率は49%。一方、静岡県の高齢化率は現在30.7%です。

しかし、15年後の2040年になると、静岡県内の約3割の市・町では、能登の被災地と同じか、それ以上の高齢化が進むと予想されています。

<三菱総合研究所 古市佐絵子主任研究員>
「(能登では)人の高齢化に伴って過疎化も進んでいたし、建物だったり水道だったり社会インフラも高齢化していた。高齢になってくると(自宅が)古くなったなとは感じるけれども、今、何か手を打とうというところには、なかなか決心がつかないこともあるでしょうし、資金面の問題だったり、障壁もあって(耐震化を)進めづらい」

耐震化の伸び悩みに追い打ちをかけるのが空き家問題です。

<地域住民>
「誰が相続しているか分からない。もう20年もその状態になってから経っている。出窓なんで、あれが引っ掛かってる、上の。外れた出窓がツルでぶら下がってツルがカバーしているんだけど、あれがなくなると下に落ちちゃう。通路・道路だから危ないと思って、壁を建ててくれた。役場で」

空き家の多くは、耐震化が進んでおらず、倒壊の恐れが拭いきれません。

隣の西子浦地区も空き家問題を抱えています。

<南伊豆町西子浦区 小泉伸五区長>
「ここ、いない、いない、いない、いない…あの人がたまに帰ってくる」
Q. この通りでもたった4軒しか人がいない?
「そう」
Q. ここの目の前の家は全て…
「全部空き家」

<小泉区長>
「こういうふうな形にもうなっちゃって…」
Q. これもう木が腐っているというか
「もう中なんかこういう…」

西子浦地区では、100軒のうちおよそ3分の1が空き家。大地震で倒壊すれば路地をふさいで津波から逃げるのが難しくなります。簡単には解決できない問題ですが、区長は命を何とか守ってほしいと考えています。

<小泉区長>
「本当にことがあれば、逃げるしかないから、とりあえず何とか自分だけでも人のことは考えなくていいから、自分だけでも逃げられるような形を取ってもらいたい」

人口減少は、都市部も例外ではありません。静岡市内でも高齢者が半数を超える自治会があったり、空き家が増えたりするなどしています。静岡県内全域が高齢化する中で、災害にどう備えるのか問われています。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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