2024年、静岡県内のスポーツ界に新たな一ページを刻んだのがプロ野球チームの誕生でした。ウエスタンリーグを戦った「くふうハヤテベンチャーズ静岡」。まさに、ゼロからの大冒険でした。
「『2軍ってどうなん?』って思うじゃない。特に男の子たちは。2軍だと、飛車角落ちみたいな『そんなチーム来ておもしろいの?』と思うかもしれないけど」
11月、静岡県立大学での特別授業。球団社長の池田省吾さんがこう、学生に語りかけました。これは、球団経営を学びながら、チームも知ってもらおうというプロモーション活動の一環です。
「ちなみにウチの試合見に来たことある人いる?」
しかし、手を挙げた学生はゼロ。池田社長はすかさず「そのうち招待します」。
66年ぶりに誕生したプロ球団くふうハヤテベンチャーズ静岡。戦力外となった元NPB選手と12球団入りを目指す若手によるチームは、「育成、再生しながら勝つ」をテーマに掲げました。
しかし、結果は、120試合戦ってわずか28勝(84敗8分け)。プロとしてはあまりにも厳しい1年目となりました。
それでも、池田球団社長は「想定内といえば、想定内。7割ぐらいの選手は初めてファームリーグで戦い抜くという中で、そんなに勝てると思っていなかったので」と冷静に分析します。
球団運営を一手に担う池田球団社長のテーマは、「くふうハヤテ」を売り込む事。まず、手がけたのがファンづくりです。県民を無料で招待する企画を始めました。
「なかなかウチは、告知する方があまり強くなくて、それでもやっぱり1日、2日で埋まる。静岡は非常に野球に対する思いが高い街だなというふうに感じている」(池田球団社長)
9月29日に行われたシーズン最終戦・阪神タイガース戦には、2000人以上が詰めかけるなど、シーズン平均も800人超えと当初の目標を上回りました。さらに、富士市立高校をはじめ、県内多くの高校生と繰り広げたコラボレーションもほかにはない“くふうハヤテらしさのひとつといえます。
池田球団社長は「僕らは地域を巻き込んでいきたいし、地域の皆さんに引っ張っていただくような応援スタイルにしたい」と前を見据えます。
今シーズン、チーム投手陣の柱となった西濱勇星投手はヤクルトと育成契約を結び移籍、公務員経験を持つ早川太貴投手は、ドラフト会議で阪神に育成3位指名を受け、それぞれNPB12球団へと羽ばたきました。わずか1年で「育成、再生しながら」までは、達成。残りは「勝つ」のみです。
「ウチは大前提として、育成して再生していくチーム。考え方としてはアメリカのマイナーリーグ。ウチで満足してもらう、じゃあいけない。来シーズンはさらに勝ちにこだわっていきたいと思っていて。同じ勝ち星では絶対にいけない」(池田球団社長)