「犯人視することない」無罪確定の袴田巖さんに地検検事正が直接謝罪 検事総長の「強い不満」談話めぐり“しこり”が

58年前、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で4人を殺害したとして死刑が確定したものの、再審=裁判のやり直しで無罪が言い渡された袴田巖さん(88)に静岡地検の山田検事正が直接謝罪しました。

11月27日午前、浜松市内の袴田さんの自宅を訪れたのは、静岡地検のトップ・山田検事正。半世紀近くにわたり、死刑囚として勾留されてきた袴田さんに長期間、法的地位が不安定な状況だったことなどについて謝罪しました。

<静岡地検 山田英夫検事正>
「巖さん、そしてひで子さんが、とても言葉にはできないような辛いお心持で日々を過ごされましたことにつきまして、刑事司法の一翼を担う検察としても、大変申し訳なく思っている」

袴田さんについて、検察は1966年、現在の静岡市清水区で一家4人を殺害した犯人として、これまで死刑を求刑し続けてきました。

しかし、2024年9月の再審で静岡地裁が捜査機関による証拠のねつ造などを認め、袴田さんに無罪判決が言い渡されました。

無罪確定後に発表した検察のトップ・畝本直美検事総長の談話では、「捜査機関のねつ造と断じたことは強い不満を抱かざるを得ない」と表明。袴田さんの弁護団は「袴田さんを犯人視している」と反発し、談話の撤回を求めていて、「謝罪の場」での地検トップの見解が注目されました。

「検察として今回の無罪判決を受け入れ、控訴をしないものであると決めたものである以上、対外的であるか否かを問わず、この事件の犯人が袴田さんということを申しあげるつもりはございませんし、犯人視することもないことも直接お伝えしたいと思います。改めまして、大変申し訳ございませんでした」(山田検事正)

半世紀近くに及ぶ獄中生活で精神が不安定な状態にある袴田さんも、支援者に促され、「世界を治めるということは、どこまで折れなきゃしょうがないのか、それが問題だ」と語りました。

袴田さんの姉・ひで子さん(91)は「私も巖も運命だと思っている。無罪が確定して、今は大変喜んでいる。有頂天になっている」と述べました。

山田検事正は謝罪後に取材に応じ、あらためて畝本検事総長の談話で袴田さんをまだ犯人視しているともとれる内容について、「最終的に検察としては無罪判決を受けて控訴をしないということは、袴田さんを犯人視していない」と繰り返し発言していました。

これまで談話の撤回を求めてきた弁護団の小川秀世弁護士は、今回の謝罪について、誠意は伝わったとしました。

そのうえで「今後も、検事総長談話の撤回を求める場面は出てくる」と話していて、談話をめぐる「しこり」は残りそうです。

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