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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

清水エスパルス、ジュビロ磐田、東京ヴェルディの“三つ巴”自動昇格争いは運命の最終節へ


J2はついに最終節を迎える。すでにFC町田ゼルビアが優勝とJ1昇格を決めており、残り1枠の自動昇格は2位の清水エスパルス、3位のジュビロ磐田、4位の東京ヴェルディに絞られた。特に静岡勢の2クラブが最後まで昇格を争うというのは切ないが、注目を集める1つの理由でもある。

2位でフィニッシュできれば昇格は確定するが、3位で終わったとしても昇格プレーオフで大きなアドバンテージを得ることができる。1回戦、2回戦ともにホームで戦うことができ、90分で引き分けても、年間順位が上の方が勝ち上がるためだ。2位の清水が勝ち点73、3位の磐田と4位のヴェルディが勝ち点72で、この3チームが2位から4位のどれかになることは確定している。

清水は難敵の水戸と対戦


”三つ巴”の競争と言っても、難しいのは3チームとも、対戦相手が下位のクラブであることだ。最も有利なポジションにいる清水は秋葉忠宏監督が昨年まで率いた水戸ホーリーホックとアウエーで対戦する。現在17位の水戸は開幕戦だった前回対戦で0−0の引き分け。当時はゼ・リカルド前監督だったが、清水にとっても油断ならない相手だ。

清水も前回対戦からシステムや選手の組み合わせなど、大きく様変わりしているが、それは静岡県出身の濱崎芳己監督が率いる水戸にも言えること。左利きの武田英寿や司令塔の前田椋介を起点に、左右のウイングバックが縦に飛び出すダイナミックなスタイルは清水にとっても危険だ。またベンチスタートが多いが、188センチ、88キロの大型FW寺沼星文が投入された時はディフェンス陣がさらに集中する必要がある。

最終節は同時刻のキックオフになるため、磐田やヴェルディの試合状況もベンチには入ってくるはず。極論を言えば、清水が水戸に僅差で敗れても、磐田とヴェルディが揃って引き分け以下なら、清水は得失点差で磐田とヴェルディに大きく上回っていることから順位が入れ替わることはない。しかし、どちらかがリードを奪っていれば清水は勝つしかないので、スタートは勝ち点3に集中するはずだが、終盤の采配には影響するかもしれない。

磐田が逆転するには…


3位の磐田が清水を逆転するには、栃木に勝つことが大前提になる。3月26日に行われた前回はヤマハで栃木に2−0と勝利した。松本昌也が前半16分に先制ゴールを決めて、後半に松原后が追加点という理想的な流れで、シュート数も磐田が16本で栃木が7本、枠内シュートは6-0という完勝だった。

栃木のシステムは当時から変わっていないが、磐田のアカデミー育ちである平松航が3バックの中央からディフェンスを統率するようになった。また、静岡市清水区のアイスタでアルゼンチンと対戦するU-22日本代表にも選ばれたGK藤田和輝が大きく成長するなど、より相手が崩しにくいチームになっていることは確かだ。

磐田の相手、栃木のモチベーションは…

気になるのは栃木のモチベーションだ。現在18位で水戸と同じく残留を確定させているが、時崎悠監督の今シーズン限りでの退任が発表されている。プロとして最後まで全力を尽くすと言葉にするのは簡単だが、昇格がかかっている磐田との戦いで、ホームの栃木がどこまでメンタルタフネスを発揮するのか。

磐田はDF伊藤槙人が累積警告で出場停止となるため、藤田と同じくU-22日本代表に選ばれた鈴木海音がリカルド・グラッサとセンターバックのコンビを組むことが予想される。鈴木にとって栃木は期限付き移籍でお世話になった”古巣”であり、最近なかなか試合に絡めていなかった状況から、最終節に出番が回ってくるなら1つドラマになる。しっかりと栃木の攻撃をゼロに抑え、勝利を支えてこそ評価を高めることにつながるだろう。

東京Vの思惑は…

城福浩監督が率いる4位のヴェルディは降格圏でのフィニッシュが確定した大宮アルディージャが相手になる。こちらも原崎政人監督の退任が確定していて、ホームで意地を見せてくると予想される大宮に対し、前節10人でドラマチックな勝利を飾ったヴェルディが早い時間帯からゴールを奪って、同時進行の清水や磐田にプレッシャーをかけることができるか。

もちろんヴェルディも自動昇格の望みは持って挑むはずだが、もし清水を逆転できなくても、磐田から3位のポジションを奪い取れれば、プレーオフで大きなアドバンテージを得ることができる。

磐田から見れば、栃木を相手に勝ち点3を取れば3位は確保できるので、まずは勝利して清水の結果待ちというところに持っていきたいだろう。

<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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