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ジュビロ磐田の敏腕通訳ジョージ赤阪さんは6カ国語を操る!24年間で一番怖かったのは、やはりあの“闘将”だった

SBSラジオの静岡サッカー熱血応援番組「ヒデとキトーのFooTALK!」のスタジオに、ジュビロ磐田で通訳をしているジョージ赤阪さんをお招きしました。聞き手はパーソナリティのペナルティ・ヒデさんと鬼頭里枝さん。

箸を使えるようになった外国人選手は活躍する



ヒデ:ジョージさん(赤阪さん)の、この人柄。初対面とは思えないほどの親近感があります。不安を抱えて来日する外国人選手が一番最初に会う人。非常に大事な仕事ですね。

赤阪:初来日の外国人は不安ばかりなので、まずは家を探してあげて、免許がないから教習所に連れていってあげて。そこから始めます。

ヒデ:通訳歴は何年になりますか。

赤阪:今年の8月で24年です。

鬼頭:今、チームとは何カ国語の契約をしているんですか。

赤阪:英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、韓国語の5カ国語です。

ヒデ:来日する選手の言葉をほぼ話せる感じですよね。

赤阪:ジュビロはこれまで、いろんな国の選手を獲得してきました。ポーランドの選手やウズベキスタンの選手もいましたね。韓国人選手4人ぐらいで固めたこともありました。

ヒデ:さらに、通訳は言葉だけじゃなくて文化も勉強しなきゃ駄目ですよね。

赤阪:そうですね。例えば、スペインにいた時は、僕はクリスチャンじゃないけれど教会に通っていました。自分を受け入れてもらうために、その国の食べ物をしっかり食べることも大事です。チャレンジして溶け込んでいくようにしています。

逆を言えば、来日して日本食をしっかり食べる選手は日本で成功する確率が高いんですよ。ジュビロで箸を使う外国人選手と、箸を使わずナイフとフォークだけ使っている外国人選手がいたら、箸を使う選手の方が日本でずっと長くプレーするんです。

ヒデ:受け入れようという姿勢があるわけですね。覚悟を持ってる。

赤阪:箸については、来日したすべての選手にとりあえず「やってみよう」と投げ掛けます。最初に食事に連れていく時は、わざとナイフとフォークがない「とんかつ屋」などにします。

選手は「無理だ」って言うんだけど、「ないんだもん。やろうよ」って。それで、彼らも箸を使えるようになって、活躍できるようになる。ファビアンゴンザレスも、今は箸を普通に使ってます。

ヒデ:仕事は24時間体制ですか?

赤阪:「通訳って試合の日以外は何やってるんだ」と聞かれますが、忙しいですね(笑)。市役所や出入国在留管理庁に行ったり、選手の家族もいるので病院に行ったり。夜中の1時に電話が鳴って「今救急外来にいるから電話で通訳してくれ」とか。

鬼頭:ジュビロの通訳になったきっかけは。

赤阪:20代の頃は目標もなくフラフラしていて、イギリスやスペイン、メキシコ、ブラジルに行ってました。各国で一応語学学校に通って勉強してたんですよ。これからどうしようかなと思っていた時に、スペインのレアルマドリードが32年ぶりにチャンピオンズリーグで勝ったんです。

次の日、選手が集まる広場に行くと、なんと30万人のサポーターが来ていました。その熱がすごいなと思って。僕はサッカー経験はないですが、これは面白いと。日本に帰ってきて、当時J3はなかったので、J1とJ2の全クラブに履歴書を送ってみました。

そうしたら、ジュビロがちょうど「探してる。今すぐ来てくれ」と。それが99年の8月でした。面接したら「いつから来れる?」みたいな。

サッカー未経験者だからよかった。その理由は…

ヒデ:サッカーをやったことない人が通訳って難しいのでは。

赤阪:最初の半年ぐらいは迷惑ばっかり掛けてました。でも、サッカーがわからない方がいいこともあるんですよ。

通訳で一番大事なことは感情を入れないこと。なまじサッカーを分かっていると、自分の意見とか自分の感情が入ってしまう。自分はわからないから、選手が言ったこと、監督が言ったことをそのまま言うしかないんです。僕はむいていたのかもしれない。

ヒデ:監督の考えをデフォルメせずに、ストレートに言うことですよね。ちなみに、これまでの選手の中で誰の通訳が大変でしたか。

赤阪:ドゥンガは本当に怖かったです(笑)

ヒデ:怒られっぱなし?(笑)。ドゥンガさんの闘将ぶりはチームに必要でしたけれども、ピッチ外でも大変なんだろうなとは思っていました。

赤阪:もう本当に。通訳だろうが、メディカルスタッフだろうが、コーチングスタッフだろうが、広報だろうが、自分が「違う」と思ったことは全部言ってきて。そのときは僕も落ち込んだり、頭にきたりしましたけれど、今思うと24年間やってこれたのは、ドゥンガが厳しいことを言ってくれたからだと思います。

ヒデ:「あそこで耐えたんだから」と。愛のムチですね。でも、ドゥンガさんの言っていることは的を射ていたんでしょう?

赤阪:間違いないですね。ドゥンガは勝つことに全てを捧げていました。「負ける試合から得るものはない」というようなことも言っていましたね。本人はきっと「敗戦から得るものもある」とは考えていたと思いますが、我々には言わなかった。そういうものが今でも僕の心の中にあって、ジュビロが勝てない時はドゥンガの言葉を思い出しますね。

ヒデ:ドゥンガさんは立場があるから厳しいことをあえて言ってきたかもしれませんね。

鬼頭:同じ年に中山雅史さんがいらっしゃるんですよね。

赤阪:僕が下っ端の通訳で入った時、彼は絶好調で雲の上の人でした。ただ彼から学ぶところは非常に大きかったです。今の横内監督も同学年なんです。

ヒデ:リスナーから「楽しかった選手は誰ですか」という質問が来ています。

赤阪:面白かったのは、ウズベキスタン人のムサエフですね。彼は、日本に来たときに日本語も英語もできなかったんですよ。ロシア語しかできなかった。どうするのかなと思ったら、「俺は英語を勉強する」と。で、英語も日本語もできるようになりました。

大切なのは「日本語禁止」と「遊びながら学ぶ」こと


ヒデ:「ジョージさん、英語教えてよ」っていう選手もいるのでは。

赤阪:今年の鹿児島キャンプは若手選手に英語のレッスンをやりました。参加してくれたのが、古川選手、鈴木海音選手、後藤選手、中川選手、藤原選手、鹿沼選手。

鬼頭:どんな教え方をしたんですか。

赤阪:まずね、日本語を禁止にするってのが一番大事です。その上で、ゲームをやりました。例えばトランプのババ抜き。ペアを引いたら必ず何か英語を披露しなきゃいけないとか。20分ぐらいやると、頭の中が英語の脳になって、意外に選手たちもしっかり英語を口にしていました。

ヒデ:文法どうこうじゃない。まず口にするってことですよね。

赤阪:遊びながらやることが大事ですね。大人になって英語を勉強する人は、中学高校のようなテストが控えているわけではないんだから、もう義務感を全部捨てて。好きな歌手の歌詞を覚えるときのように、口ずさむようにして。英語もその程度でいいんですよ。

ヒデ:恥ずかしがらず、自分なりに。

赤阪:とにかく苦痛になることをやらない。継続するってことが大事です。中学高校で勉強した文法とか語彙力も役に立ちます。大人はそれを大事にしながら、頭をちょっと切り替えて楽しくやろうと。

若手の急成長に手応え「数年のうちに必ず強くなる」

ヒデ:今、ジュビロはJ2です。黄金期を知っているジョージさんはどのようにお考えですか。

赤阪:僕はここから数年のうちに、チームが強くなるという実感があります。大げさに言ってるわけじゃありません。本当に若い選手が伸びてきたなという感覚があります。

それと皆さんには、株式会社ジュビロが今、すごい本気になっていることを伝えたい。2030年に必ずアジアを取ると宣言して、社員1人1人がそれから逆算して何ができるかってことに取り組み始めたんですね。

今はホームゲームのときに必ず何かイベントを開いています。もう一度Jリーグのチャンピオンになろう、アジアを取ろうと、みんなが目標に向かってやっています。

ヒデ:あと7年。強いジュビロのお立ち台の横で通訳をしているジョージさんの姿が見たい。

鬼頭:必ず監督の横、あるいはベンチにいる人ですから。皆さん応援していただきたいなと思います。

ちなみにジョージさんは最近「ジュビロ磐田の通訳が教える 超実践的英語勉強法」というタイトルの本を出されました。有名人の名前がいっぱい書いてあって、飽きませんでした。説明してもらえますか。

赤阪:一番大事なのは気持ちだと思うんですよ。日本人って、英語が不得意と思っちゃって、なかなか口に出せないけれど、ヨーロッパでは2カ国語、3カ国語を話せるのは当たり前なんです。何が違うのかと考えると、「できる」と思っているかいないか。自分の変な先入観をとっぱらうってことが大事です。

鬼頭:最後に、ジュビロ磐田サポーターにメッセージをお願いします。

赤阪:ジュビロ磐田はもう一度、Jリーグとアジアのチャンピオンを目指します。ただ、そのためにはジュビロと清水エスパルスが来年一緒にJ1に上がって、2強時代を築くこと。そこに勢いのある藤枝MYFCさんと、アスルクラロ沼津さんも加われば。

決して夢じゃないと思うんですよ。さっきの英語の話じゃないけれど、「できる」と思ったらできると思うんです。僕もこういう仕事を長年やらせていただき、皆さんに恩返しがしたいと思っています。
シズサカ シズサカ

サッカー大好き芸人、ペナルティ・ヒデと、サッカー中継のリポーターとしても活躍する鬼頭里枝の2人がお送りする番組。Jリーグから海外サッカー、ユース世代、障がい者サッカーなど幅広くスポットを当て、サッカーを通して静岡を盛り上げます。目指すは「サッカー王国静岡の復権」です!

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