静岡県内増える「墓じまい」 供養の形多様化、管理も難しく

 核家族化や少子化の進展で継続した墓の管理が難しくなり、従来の墓を撤去し、遺骨を移す「墓じまい」を選択する世帯が増えている。合同墓地への埋葬などの永代供養や、海への散骨と供養の形は多様化が進んでいる。

牧之原石材の樹木葬霊園。墓参者はサクラの木の下で眠る故人に手を合わせる=焼津市
牧之原石材の樹木葬霊園。墓参者はサクラの木の下で眠る故人に手を合わせる=焼津市

 「子どもに負担をかけずに、大切な人と一緒に眠りたい」―。
 行政に提出する改葬許可証の発行手続きサポートなど一連の墓じまいの作業を受け付ける牧之原石材(牧之原市)によると、2019年度に請け負った墓じまいの件数は5年前の6倍の約60件に上った。
 墓じまいで取り出した遺骨は、合同墓や納骨堂に納めるのが一般的。同社は墓じまいのニーズが増す中、18年に焼津市に樹木葬に特化した霊園を開いた。
 「サクラの木の付近に埋葬し、プレートを設置する。いつでも手を合わすことができる」と影山晃社長。約600の埋葬区画の内、約500区画が既に契約済み。申し込んだ静岡市内の70代男性は「嫁いだ娘たちに苦労をかけたくないと思い、墓を移した。きれいに管理されており安心している」と話す。
 供養の在り方が多様化している背景には、ニーズの多様化と費用面や管理の負担を重く感じている世帯が増えていることにある。
 お仏壇のやまき(静岡市葵区)は昨年、専用クルーザーを用意して海への散骨事業を始めたところ、これまでに数十件の利用があった。
 仏壇メーカーの法月(同)は5月、遺骨をパウダー状にして清潔な保管につなげるサービスを始め、10月までに約50件受注した。
 同社の担当者は「新型コロナウイルス感染拡大で葬儀の自粛や縮小を強いられる世帯も増えている。家で粉骨を保管して身近に感じたいという人は増えているのではないか」と話す。

 ■自治体もニーズに対応
 墓じまいして遺骨を取り出す際に、自治体から取得する「改葬許可証」の申請が増えている。
 2019年度に静岡市役所静岡庁舎が受け付けた改葬許可申請は11年度に比べて約2倍の682件まで増加。16年度に市営の納骨堂を増設するなど、埋葬の多様化に対応している。
 袋井市は18年に市営墓地内に樹木葬用の500区画を整備したところ今年完売し、新たに整備した。
 同市は「墓じまいに伴う改葬だけでなく、生前に契約する世帯も多い」(環境政策課)と話す。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞