静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(4)外国産抹茶に負けるな!

 お茶は仏教とともに中国から伝来した。日本ではお茶を単に飲むだけでなく精神文化にまで高め、世界に誇る茶の湯の文化を創り上げた。また、江戸時代には茶葉に湯を注ぐ淹茶[えんちゃ]法も導入され、今日の急須で入れるお茶に発展させてきた。昭和時代の高度成長期に、煎茶は日本中に広まり、静岡は生産から流通の集散地機能も強め、茶業王国の地位を確固たるものにしてきた。

漫画・かとうひな
漫画・かとうひな

 昨今では嗜好[しこう]も多様化し、急須離れも進み、簡便に飲用できるペットボトル茶、ティーバッグ、抹茶に目が向けられている。特に、抹茶はスーパーフードとして世界的にも関心が高まり日本茶輸出の牽引[けんいん]役ともなっている。輸出国への抹茶の嗜好調査では、健康性や香味に関心が高く、抹茶の歴史・文化的な側面よりもむしろ機能性、美しい緑色、おいしさなどが注目されていた。飲用方法も牛乳などに混ぜたり、ケーキや菓子の原料として使用されたりする場面も多く、一言に抹茶と言っても品質格差も大きい。
 最近、外国産抹茶も急増し価格的にも日本産抹茶の2分の1から3分の1程度と安価なものも多い。外見上は見分けがつきにくいが、粒子径は大きく、粒子のそろいも悪い。また、色はやや緑色度にかけ、色相角度はやや黄色味を帯びている。化学成分的にもアミノ酸は少なく、カテキンが多い傾向にある。このことは、日本産抹茶を差別化し、ブランド化する上で優位となる。しかしながら、なかには抹茶まがいのものも高価格で市販されている場合がある。ブランド力を維持するためには消費者に混乱を抱かせてはいけない。
 静岡県内でもブームに乗って抹茶の生産が増加している。一方、外国でも抹茶生産が急増し、低価格で世界中に輸出され始めている。価格競争では勝ち目がないため、ブランド力の強化は必須である。歴史はもとより、品質・機能性面などからの差別化の強化やブランドの確立・基準の遵守[じゅんしゅ]など、早急に対応してこそ静岡抹茶が消費者に喜ばれるものになっていくだろう。
  (中村順行 静岡県立大特任教授/茶学・育種学)  ◆--◆--◆
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。               

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