記者コラム 清流の記事一覧
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記者コラム「清流」 毎日が見頃
長藤の名所である牧之原市の東光寺。「今が一番きれいだよ」と地元保存会のメンバーに声をかけていただき、取材に訪れた。 花はまだ三~五分咲きくらいで、長藤と言うには房の先の開花が足りない。「見頃はまだまだ先だな」と思っていると、保存会の一人が背の高い脚立を持ってきて、乗るように勧めてくれた。いつもは頭上にある藤を初めて上から見下ろす。一面の緑の中に入り交じって引き立つ紫が鮮やかだった。 その後も「次はここから見て」「この角度も意外といいでしょ」と愛車を紹介するような口調で、何カ所もカメラのアングルを教えてくれた。「うちの長藤はね、毎日が見頃なんだよ」-。この大きな愛情が地元の名所を長年支えて
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記者コラム「清流」 魅力の多い東部地域
先日、県外から遊びに来てくれた友人が、帰り際に「1日じゃ足りないなあ」とつぶやいた。手元のスマートフォンには、三島駅前で撮影した観光案内の看板の写真。西伊豆町の堂ケ島などを挙げ、「想像以上に回りたい場所が多かった」と話していた。 沼津に着任して以来、話題の飲食店や温泉を巡ったり、冬にはスノーボードに初挑戦したり、近隣で楽しめるアクティビティが多いと実感する。友人の「静岡に住んでみたい」という言葉に、なぜか誇らしい気持ちになった。 取材先の行政関係者からは「もっと東部地域のことを売り出したい」という声を聞く。地域には知れば知るほど面白い魅力がもっとたくさんあるはず。記者としてまだまだ発信不
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記者コラム「清流」 先端の研究担うのは人
静岡大発の超小型人工衛星の開発を主導する能見公博・同大工学部教授が執筆する本紙「窓辺」が4月から始まった。基本的に月曜掲載で、研究に関する苦労話が読めるほか、普段の取材ではなかなか表れない能見教授の人柄もにじみ出た寄稿文になっている。 2016年に宇宙空間に放出された静大衛星の初号機「はごろも」や後継機では、通信に不具合が生じた。取材した当時、なぜこんなに苦戦するのかいまいち理解できなかった。8日付の能見教授の窓辺でふに落ちた。能見研究室は機械工学が専門。機械の「見える動き」を扱う。無線通信は「見えない動き」だからハードルが高いようだ。 宇宙を舞台にした最先端の研究も担うのは人だ。悪戦苦
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記者コラム「清流」 自然資料保管の意味
川根本町の資料館やまびこに「ヒダサンショウウオ」として展示されていた標本が先日、より希少な「アカイシサンショウウオ」だったことが判明した。外見上では判別が難しい両種だが、同館を訪れた専門家が微妙な違和感を抱いたことがきっかけで、半世紀近い“勘違い”が解消された。 違いを見抜いた専門家の鑑識眼はもちろん、長年適切な保管を続けてきた職員の努力にも称賛を送りたい。定期的に保存液を交換するなど、同館に保管されている動植物の標本約1万7000点の劣化を防いできた。 どんな資料であれ、残していくことそのものに意味があることを示す好例だ。希少種だから保管するのではなく、未来の新
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記者コラム「清流」 石のロマン
浜松市天竜区の天竜川で、礫岩(れきがん)が地下深くで変成作用を受けてできた「礫岩片岩」が見つかった。高圧の環境で引き伸ばされたそれぞれの石の形を解析することで、過去にどんな変形を受けたか推測できるため、学術的な価値が極めて高いという。 天竜川流域を含む地質帯「三波川帯」で見つかる変成岩は、海洋プレート上の堆積物が大陸プレートの下に沈み込む過程で陸側に付け加わった岩石が、中生代に沈み込み帯の深部で高い圧力を受け、後に地表に露出したと考えられている。 つまり、今回見つかった礫岩片岩は“恐竜が存在していた時代に、プレート境界付近の圧力を経験した”ことになる。一見すると河
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記者コラム「清流」 活気ある港を再び
西伊豆、松崎両町の港がにわかに活気づいている。駿河湾フェリーの入港トライアル実施や東海汽船の高速ジェット船の運航試験日程が発表されるなど、4月に港関連の話題が相次いだ。新たな交通手段による観光誘客の可能性に期待が高まっている。 西伊豆町の田子漁港では清水港(静岡市)と土肥港(伊豆市)を結ぶフェリーが入港。悪天候時の活用が検討されている。松崎町の松崎新港では6月、東京と同港を結ぶ高速船の直航便を試験運航する。2023年には松崎を出発し、伊豆大島(東京)を訪れるツアーを開催して盛況だった。 伊豆半島は交通の脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されている地域で、港の活用は災害時の移動や物資輸送の手段とし
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記者コラム「清流」 つながりは地域の強み
静岡市葵区の藁科川流域で今春、明治時代に創立された清沢小と水見色小が長い歴史に幕を下ろした。「この学校は人に愛され、人を集め、みんなを育ててくれた」。住民主催の閉校式典を取材し、保護者代表の言葉に胸が熱くなった。 少子化の波に襲われ、県内でも中山間地を中心に小中学校がなくなっている。過去10年間に50校が閉校した。地域に根差した学校が消えるのは住民にとって断腸の思いのはずだ。 藁科川流域の場合、閉校は住民が話し合い、子どもを第一に考えて決めたという。式典にはあらゆる世代が一堂に会して“最後の校歌斉唱”を響かせた。その姿を見て、学校がなくなったとしても住民のつながり
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記者コラム「清流」 市民は見ている
この事態を招いたのは一体-。昨年来、沼津市と市議会の一部で起きた二つの「混乱」は、多くのことを考えさせられた。 これまで丁寧に記事化してきたため詳細は省くが、双方に共通していることがある。明らかに今日の状況を引き起こした当事者が、自身の振る舞いは一顧だにせず周囲に責任を転嫁している点だ。 当事者からすると、思っていたことと異なる展開となり、その結果追及にさらされたり、先方が強硬姿勢に出たりと想定外の流れに焦り、「自分は悪くない」との主張になっている。 「混乱」はいっときより落ち着きつつあるが、いまだに読者や取材先との間で話題になる。市民は市職員や議員の振る舞いに関心を寄せている。この点
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記者コラム「清流」 選ぶのは私たち
度重なる不適切発言によって川勝平太知事が突然の辞職を決めた。辞職説明も納得できるものではない。全国放送のテレビ番組で川勝知事の問題が繰り返し取り上げられ、県民の一人として恥ずかしくなった。 一方、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、塩谷立衆院議員(東海比例)が離党した。こちらも毎日のように報道されている。塩谷氏の地元・浜松市ではダブルの衝撃で、市民の政治不信がさらに加速しないかと危惧している。同時に、政治をチェックする報道に身を置く立場としても反省するばかりだ。 川勝知事の辞職に伴う知事選は5月9日告示、26日投開票の日程で行われる。現在は2氏が出馬表明し、選挙戦となる見通しだ
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記者コラム「清流」 はしかの恐ろしさ
麻しん(はしか)の感染が3月に相次ぎ、国内の患者は21人と昨年1年の7割を超えた。「まだ全然少ない」との印象は否めないが、国や行政が注意喚起するということが、はしかの怖さを物語っている。 50代以上は幼少期の罹患(りかん)で一定数が免疫を持っているとされ、医師から「記憶がない人は、まず自分の親に確認して、分からない場合は抗体検査を」と聞いた。高齢の親が半世紀近く前のことを覚えているのか疑問だったが「一生忘れられないはず」という。高熱、いったん収まってまた高熱。ぐったりするわが子の体中に「ヒョウのような」発疹が出現―。考えるだけでも恐ろしい。 ワクチンは1歳と「年長」が定期接種のタイミング
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記者コラム「清流」 面食らう議会
小山町議会3月定例会で“大きな矛盾”に遭遇した。採決の様子を見た町民はきっと、議会に対して不信感を抱いたことだろう。 2024年度一般会計予算案に対し、一部予算の削除を求める修正動議が発議された。発議者は6人。同議会は定数13で、結果として議長裁決により否決された。しかし、数分後の同予算案の採決は「賛成多数」。ころりと意見を変え、賛成に回った議員がいた。 以前から常任委員会と本議会で賛成、反対の立場を変える議員も散見される。23年9月定例会では、7議案で同様のケースが見られた。「賛否表明を軽視していないか」「委員会審査の重みが薄れる」「議会の仕組みが分かっていない
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記者コラム「清流」 まちづくりの主役
磐田市には自治会と別に、各地区のまちづくりを担う「地域づくり協議会」がある。市の交付金を元手に子育て支援や防災・防犯などの活動を展開している。高齢者の移動支援など特徴的な取り組みも多い。 そんな市民自治を加速させようと、学識者や市民団体関係者らでつくる検討委員会が新しい条例を市に提案した。多様な住民が主体的に地域課題の解決に関わるよう促す理念条例案だ。取材でも感じるが、現状では協議会の役員は高齢者が大半を占める。一部の住民に任せきり、負担が集中するのも好ましくない。 ある協議会は今春、40代の女性が会長に就いたという。今までと違った視点が活動を充実させると期待したい。「みんなが主役のまち
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記者コラム「清流」 お母さんなら
2年前に元交際相手の女性を殺害した罪などに問われた男の裁判員裁判で、静岡地裁は3月、懲役18年の判決を言い渡した。一貫して無罪を主張していた男の主張を、全面的に退けた。 女性は当時、中学1年の息子と同居していた。息子は朝起きて母親がいないことに驚き、不安になってスマホに何度も電話をかけたが、つながらなかった。裁判長はその時間に女性が生きていたら「着信に気付いて連絡するはず」と指摘。女性から息子に折り返しの連絡がなかった事実が犯行時刻の決め手となり、無罪の主張を打ち破った。 息子は「お母さんに会いたい。死んだら会えるかな」と今も悲しみに暮れる日々という。これほどの絆で結ばれた母親が息子の電
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記者コラム「清流」 静岡のための議論を
川勝平太知事が御殿場市をやゆしたとされる「コシヒカリ発言」が騒動になった当時、同市で市民の声を聞いた。発言への批判は当然聞かれたが、発言に絡んで知事を批判する勢力への苦言も多かった。「政争の具にするな」「あなたたちは御殿場のために何をしてくれたのか」と。 新規採用職員に向けた訓示での職業差別と受け取れる知事の発言に対し、静岡県外からも批判の声が上がる。インターネット上では発言に絡めて静岡県や県の施策への批判も散見される。発言内容への非難はやむを得ないが、騒動に乗じて静岡を陥れ、県が関わる議論を優位に進める姿勢は感心できない。 川勝氏を県政トップの座に押し上げたのは県民だということを肝に銘
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記者コラム「清流」 朝のチャイム問題
これまでの居住地ではほとんど耳にする機会がなかった同報無線が、袋井市に来てから身近になった。 正午に流れる袋井市歌。着任するまでは当然聞いたことがなかったが、今では鼻歌を歌えるほどに。ようやく「袋井市民」になれたようでうれしい。 一方で、朝のチャイムだけは意義を見いだせていなかった。起きたい時間より前に鳴る日はいら立ちすら覚えた。思い切って市危機管理課に聞くと、点検の意味があるという。有事のときに鳴らなくては致命的。容易に廃止にしていいものではないと反省した。 ただ、苦情の声もやはり少なくないそう。他の自治体では時刻の変更や廃止を決めた例もある。働き方や生活様式が多様化する昨今。市民に
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記者コラム「清流」 路地裏の“サクラ”
触れる者すべてを傷つけそうな鋭い目つきの野良猫が近所にすみ着いている。そのふんを何度踏んだことか。元旦もべっとり。正月は靴の臭いが取れるまで洗い続ける羽目になった。 桜の季節になり、無愛想な猫は太り始めた。餌を手にした女性に尋ねると、その猫は繁殖しないよう手術を施された「さくらねこ」だという。その印としてV字に切れ目を入れた耳がサクラの花びらに似るため、そう呼ばれるそうだ。その上で女性は地域と猫のために、餌をあげたり、ふんを拾ったりしてくれていた。 思えば猫の鋭い目も少し丸くなってきた気がする。「殺処分は切ないから…」と優しく見つめる女性の思いに触れ、その猫への見方も変わっ
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記者コラム「清流」 空き家利活用のあり方
空き家を改修して移り住んだり、店舗として活用したりする人に出会う機会が増えた。浜松市内にある築50年以上の古民家を訪ねると壁紙や床板、水回りが新たになり、旅館のような雰囲気を演出していた。所有者の30代男性は「費用は新築の半分以下。自前で改修を繰り返し、住みやすい空間としたい」と話す。 日本経済が右肩上がりの時代に建てられた家屋や賃貸住宅が時を経て、地域や子孫が悩む要因となっている。空き家増加を抑制するための新法が昨年施行され、管理や相続への関心は高まると予想される。 市内の不動産業者は「古民家として再販できる家屋は一握りに過ぎない。特に中山間地は厳しい」と明かす。空き家の管理が行き届か
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記者コラム「清流」 ピッチ内外の躍進期待
スポーツの試合会場などで販売される飲食物「スタジアムグルメ(通称スタグル)」。アスルクラロ沼津の試合取材前、いつも「今日こそは」と食べたいものをあれこれ考えているが、時間に追われて結局食べられないことが多い。 おでんや大学芋、サバの竜田揚げにご当地菓子パン-。アスルのスタグルには地域の食の魅力が集まっている。マスコットキャラクター「アスルくん」の出店店舗巡りがSNSでもよく話題に上がり、クラブ側の意識も感じる。 今季は開幕以来、ホームでの好調を維持しているアスル。一方で、来場者は2000人に届かない日も多い。「ピッチ内外」での盛り上げを演出し、さらにファン層を拡大できるか。スタグルと勝利
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記者コラム「清流」 ブームの先に
コロナ禍をきっかけに注目されたアウトドア。キャンプを筆頭に、屋外で密を避けられるとして一躍人気となった。一方で昨年あたりから行動制限の緩和で競合するレジャーに人が流れ、「ブームは曲がり角を迎えた」との声を聞くようになった。 静岡県内でも、首都圏や中京圏からのアクセスの良さを生かしてキャンプ場の新規開設が相次いだ。異業種の企業がアウトドア関連のギア製造に参入する動きも広がった。ブームが去れば、厳しい競争が待っていると身構える事業者もいる。 この数年で多様なニーズに応えるアクティビティーと製品が充実し、アウトドアの裾野自体は大きく拡大したとも感じる。今後も質の高いサービスや他にない個性を磨き
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記者コラム「清流」 若手漁師の活躍に注目
食卓に並ぶなじみの海産物、いつまで安定供給できるか。沼津市静浦地区で長らく漁業を支えてきたベテラン漁師によれば、今の担い手は全盛期の5分の1程度かもしれないという。 自然を相手にする仕事は想像以上に難しい。4月、シラス漁に同行した。朝5時半ごろ多比港を出発、魚群探知機や漁師の感性を頼りに海を駆け回るも、この日は運に見放された。それでも約10年前に始めた養殖ワカメの収穫を実施。当時の青壮年部の「次世代の漁師のため」という思いが着実につながれていた。 今の時代は需要に合わせて漁業を多様化するのが主流。「魚が減っている」と言われる中、同地区の若手漁師は釣船、ワカメ、シラス、ナマコなど多岐にわた
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記者コラム「清流」 忍者の資質
「忍者って陽キャなのか?」。忍者研究の第一人者として知られる三重大の山田雄司教授の講演会を取材した。テーマは「現代に活かす忍術」。現代社会で忍術をどのように活用するのか、興味を引かれた。 山田教授によると、忍者の主な役割は情報収集。姿を変えたり、池を渡ったりするのは忍術の末端に過ぎないといい、抱いていたイメージを覆された。忍術書では真に大事な資質として、コミュニケーション術や状況に応じた対応能力、人との付き合い方などが挙げられているという。 「これ、新聞記者の仕事に似てますよね」。教授の言葉にはっとした。記者として働き始めて9年目。日々の仕事に追われ、素養を磨くことをおろそかにしていた。
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記者コラム「清流」 作る人、売る人、買う人
静岡市葵区の茶問屋街は不思議なまちだ。市内中心部からほど近い一角に、市場と問屋、茶工場や小売店がひしめき合う。そこでは、茶という農産物をめぐる、濃密な駆け引きが繰り広げられている。 茶況担当として初の新茶期を迎えた。今年は静岡茶市場で過去最も早い初取引が行われたが、各地の生育は平年並みで、県内産一番茶の上場は過去最少。異例の幕開けとなった。 初取引から数日後。思わぬ高値がついた取引があった。仲介した市場職員にその理由を尋ねると、「昨日茶商さんとここの茶園を見に行ってさ」との答えが。はにかむ様子から、生産者への敬意と情が値に反映されたのだと悟った。 茶を作り、売り、買う、それぞれの立場が
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記者コラム「清流」 宿題投げ出した子?
熱海市伊豆山の大規模土石流と被災地のことを、川勝平太知事は忘れていたのだろうか。辞職の意向を正式に表明した3日の記者会見。復旧復興や責任追及をはじめ、数多くの課題を抱える熱海土石流について、何一つ言及がなかった。 28人の犠牲者を出した県史に残る大惨事。発生から2年9カ月が経過した今もなお、遺族の心の傷は癒えず、避難生活を送る被災者がいる。知事は辞職届を提出後の会見でも、行政対応の反省点に触れる程度だった。物足りなさを感じた。 リニア問題に区切りが付いたことを辞職理由に挙げたが、こちらも課題山積で議論の最中だ。ましてや任期途中の退陣では、職責の放棄とみなされても仕方がない。学者で博識があ
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記者コラム「清流」 客と店のギャップ
席に着くと、自分のスマートフォンでテーブル上のQRコードを読み取って、サイトからメニューを注文する。そんなモバイルオーダーを使う機会は珍しくなくなってきた。 つながったサイトは安全か。登録作業や、アンケートに答えなければならないのでは―。店側の負担を押しつけられた印象もあり、初めて使った時は懸念や煩わしさもあった。 だが、慣れてしまえば使用感はいい。注文のたびにスタッフを呼ばなくてよいし、注文用タブレットのように場所も取らない。 飲食店にモバイルオーダーのシステムを提供する企業によると、顧客満足度の低下を懸念して導入をためらう店は多いという。客と店側のギャップは興味深い。今はまだ過渡期
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記者コラム「清流」 橋がつないだ歴史
川根本町域の大井川本流には現在、約30本の橋がかかる。山間部では、川岸を中心に発展してきた歴史があり、両岸をつなぐ橋が現在まで町にもたらした恩恵は計り知れない。 町民によると、橋がかかる前は、約50メートル離れた両岸でも違う方言を使っていたほど交流は少なかったという。当時の住民にとって、橋は異国への“架け橋”と呼べるほど、革新的だったに違いない。 町の歴史は橋とともにあった。千頭と小長井を結ぶ川根大橋は、当初木製だったが、自動車の登場など時代の変化に合わせ、鉄製の桁橋にかけ替えられた。 何げなく渡っている橋にも歴史がつまっている。島田支局から車で約1時間かかる同
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記者コラム「清流」 葛布と時を刻みたい
掛川市の伝統工芸の葛布(くずふ)。魅力の一つは丈夫で、年月を経て色の変化を楽しめるところだろう。市内の織元で、織られたばかりの新品と35年、100年前のものを見比べる機会があった。いずれも光沢を持ちながらも、新品は白色で徐々にあめ色に変わっていく。家族の歴史を見守ってきた事実が、色の変化で可視化できたようで感慨深かった。 そんな葛布だが、市内の織元は2カ所に減り、手間のかかる葛の繊維をとる農家は高齢化が進む。化学繊維の普及で需要が減少し、今に至っているそうだ。 ただ、消費社会に多くの人が疑問を感じ始めた今、丈夫で持ち主と一緒に時を刻むことができる葛布は、PR次第で再び注目を浴びるのではな
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記者コラム「清流」 人生の引き際大切に
下田支局に勤務していた数年前、移動知事室は時間が許す限りなるべく多くの場面を取材するように心がけていた。周囲も驚くような発言を川勝平太知事が突然する可能性があり、いろいろな意味で警戒が必要だったためだ。 当時から歯に衣(きぬ)着せぬ物言いが特徴だった川勝知事。その一方で、移動知事室の訪問先では自ら地域住民と気さくにふれあい、選挙で大勝する理由が分かる気がした。だが、近年は当選を重ねるごとに目立った問題発言と、意固地にも映る態度が時に県民の代表としてふさわしくない印象を感じていた。 国政では裏金問題を巡る自民党重鎮のふてぶてしく見える態度に、閉口した気持ちになる。急速に高齢化する日本。社会
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記者コラム「清流」 防災意識高まったのか
能登半島地震発生直後、静岡県内のホームセンターや生活雑貨店では携帯トイレなどの防災用品の問い合わせが殺到し、防災への関心の高まりがうかがえた。数字にも如実に現れた。県が実施している県民意識調査は、地震の前後で「南海トラフ」への関心が20ポイントも急上昇し、「非常に関心がある」が8割を超えた。 発生から3カ月余りが経過した。店舗では、徐々に防災用品の売り場面積も縮小されつつある。1991年度以降の調査を見ると、大規模災害の度に関心が高まっては、数年で低下していく変化がくっきりと現れている。防災に特効薬はないことを改めて実感した。 1年後の結果はどうか。啓発の継続や実災害を自分事と捉えてもら
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記者コラム「清流」 好きなことを全力で
「将来は自分がつくり上げるもの。一度決めたことには100%の力を出し切ってほしい」。長年にわたって日米のプロレスで活躍したスタン・ハンセンさんが、伊豆市立中伊豆中のキャリア教育で語った言葉だ。 子どもたちが市内にはなかなかいない職業の人から話を聞くために開催された授業で、講師は絵本作家、漫画家、モデルなど多種多様。私が中学生の時に聞いていたら、全く違う職に就きたいと思っていただろう。普段出会うことのない講師陣は輝いて見えた。 講師は挫折体験や大変だったことも正直に伝えていた。ただ共通していたのは好きなことを見つけて全力で頑張るということ。子どもたちが将来どんな形で地元に貢献し、どう盛り上
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記者コラム「清流」 新茶生産を控えて
浜松市天竜区内各地で新茶の生育への関心が高まっている。生産者の高齢化や価格低迷といった課題を抱えるが、地域の主要農産物としての地位を保つ。 静岡茶市場の新茶初取引が史上最速となる12日に行われた。区内の盛期は今月下旬から5月以降となる。ある農家は「収穫時期が後になると、新茶商戦のムードに乗り遅れてしまう」と懸念する。 地域では近年、伝統的な煎茶作りに加え、抹茶原料の碾茶(てんちゃ)や紅茶などの生産に挑む農家の動きがある。春野町の60代農家男性は「時代が変わってもお客さんに必要とされるお茶を作るだけ。旬の時期の新茶が売れないなら、他の販売手段を考えれば良い」と前向きだ。試行錯誤の先に明るい
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記者コラム「清流」 新学期 10代にエール
本紙ひろば欄には多くの投稿が寄せられる。「社会に出ると疲れる」「大人は大変」「仕事は生きていくために仕方ないこと」。秋を過ぎると「10代の思い」宛に寄せられる高校生からの投稿には、就職に対するネガティブな意見が散見される。一通一通目を通し、希望ある未来を提示できなかった大人の一人として申し訳ない気持ちになる。 好きなことを仕事にできたら楽しいと分かっていても、誰もが実現できるわけではない。就職活動を通し、人生で初めて突きつけられた夢と現実の差に苦悩した高校生もいるだろう。 これからの季節は新学年への期待や目標に関する文章が増える。どの投稿も、どこまでもまっすぐで、とてもまぶしい。その情熱
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記者コラム「清流」 水があるってすごい
能登半島地震の被災者が、三島市の源兵衛川で水遊びした後だった。「水があるってすごい」。11歳の女の子のつぶやきが心に突き刺さった。通常なら同市が誇る清流に感動したと受け取るが、この日は違った。ただ単に水を自由に使えるありがたみを実感しているように思えたからだ。 女の子は幼なじみ3人で参加。うち2人は新年度から家族とともに上下水道の復旧めどが立たない石川県珠洲市から避難し、3人は離れ離れになると聞いた。「水さえあれば」。心の奥にあるであろうそんな恨み節を我慢して言わないようにしているようだった。 水が当たり前にある環境で生きてきた。そのインフラの老朽化や災害対策が叫ばれて久しい。大切な人の
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記者コラム「清流」 花の祭典の“ドラマ”
しずおか国際園芸博覧会(浜名湖花博)の20周年記念事業「浜名湖花博2024」を担当記者として取材している。本番に向けて準備が進む会場を訪ね、大会関係者から思いを聞く中で、開幕を待ち遠しく感じるようになっていった。 開幕日はあいにくの雨。スタッフからは嘆きの声も聞かれた。それでも多くの人々が開門前から行列をつくった。県外のツアー客、外国人客も訪れ、雨中の花壇で写真を撮り、室内アトラクションを楽しんだ。 20年前の花博の関係者に話を聞き、実現に至るまでの苦労を知った。今回の花博も当時と同様、たくさんの人たちの努力によって開催されている。浜名湖を舞台に繰り広げられる86日間の花の祭典。地域の盛
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記者コラム「清流」 飛ばないバット
高校野球で今春のセンバツから反発力を抑えた「飛ばないバット」が完全導入された。投手の受傷事故防止とともに、打高投低を是正し成長期の肩肘を守ることが目的。守備力、機動力がより重要になり、「戦術が変わる」と声が上がる。 ゴルフでもプロとトップアマで「飛ばないボール」に近々規格が変わる。今や飛距離300ヤードは当たり前だが、パワー偏重が過ぎると伝統あるコースが手狭になり、14本のクラブを自在に操る技も生かされない。 ルールは安全性と公平性の確保に加え、競技を面白くするため時代に合わせ変化している。プレーヤー全てが将来にわたり競技を楽しみ、競技自体を発展させるという観点が重要だ。 と言いつつ、
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記者コラム「清流」 AIの力に感嘆と恐怖
議会の会派代表質問は議員にとって最大の仕事の一つ。担当する議員は会派の同僚議員とテーマを協議し、課題や対策、先進事例などの調査を重ね、十数枚にも及ぶ原稿を準備する。 3月の浜松市議会代表質問で、一部の議員が準備に生成AI(人工知能)を用いた。テーマに沿って課題の洗い出しを命じると、多彩な議論の切り口を示した短文がすぐ生成されたという。数日かけていた調査が30分で終わり、質の高さは同僚全員が感嘆するほど。この議員は「もう僕らは不要かも」と苦笑いした。 実際の原稿は議員が思いを込めた自分の言葉で完成させた。政治には言葉の力が必要で、AIが議員の力を補強するために使われるなら歓迎すべきだろう。
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記者コラム「清流」 選ばれない国
「袋?」。沼津市で開かれた日本語学校の弁論大会。登壇したネパール出身の男性が発した言葉に学生から一斉に笑いが起きた。彼は「スーパーの店員がレジ袋がほしいか、日本人に聞く時は丁寧に聞くのに、外国人にはなぜか『袋?』と一言だけ」と続けた。 文章よりも単語の方が伝わるのでは-。レジ係も悪気はないのだろう。しかし、多くの学生が反応したということは、違和感のある経験として広く記憶されているのだと感じた。 彼は電車で座った際に隣の人に逃げられた経験も語り、こう語りかけた。「社会が変わらなければ、外国からの留学生も、働く人も減る」。人口減社会の日本は、もはや外国人の力なしでは成り立たない。このままでは
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記者コラム「清流」 教わった「俯瞰力」支え
「俯瞰(ふかん)力という言葉が好き。一つの物事を広い視野と多角度から見て、考えてほしい」。ある県警幹部が訓示でよく使うと教えてくれた単語の重要性は記者の仕事にも通じ、約10年間支えにしてきた。 私が生まれたその月に警察官になったその人はこの春、退職を迎えた。大勢の後輩らに見送られる姿をシャッターに収めていると、その晴れ晴れとした表情に「自らの言葉などから何一つぶれずに、信念を貫いた警察人生だったんだろう」と確信し、感動を覚えた。 4月で42歳の厄年。いろいろ抱える毎日で、物事や事態、思考を全体的に眺められているか。視野が狭まらないよう、その力を鍛えているとは言い切れない自分がいる。「胸を
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記者コラム「清流」 楽器、再開なるか
楽器は10人中9人が1年以内に挫折してしまう―。ピアノは平均4カ月、エレキギターは1カ月。ローランドが開いた電子楽器の未来を考えるシンポジウムでそんな話題が上がった。 振り返れば、ギターは数カ月、中古で衝動買いしたトランペットは1週間ももたなかった。ただ、続けた長さだけでいえば、ピアノは幼少期から10年以上続いた。練習は好きではなかったが、友人との演奏や合唱の伴奏などは楽しかった。 五線譜すら見なくなって久しい。この間、多機能な電子楽器が登場し、オンライン合奏ができる環境も整ったが、過去の反省から今は楽器に手を出していない。現代に楽器を楽しむ人をうらやましく思いつつ、再び楽器や音楽を始め
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記者コラム「清流」 まずは試してみよう
3月中旬、久しぶりにマクドナルドを利用した。高校生でにぎわう店内で、レジに並んだのは自分だけ。どうやら学生の間では、席からスマートフォンを使って注文する「モバイルオーダー」が主流らしい。一人だけ平成に取り残されたような気分だった。 同月末、沼津市とマクドナルド沼津駅南口店は、市が整備した駅前公共スペースに商品を届けるモバイルオーダーを始めた。スペースの活用を目的とした実証実験だが、利用すると店外で注文して持ってきてもらえるので意外と便利。大人数でベンチに座れるので、学生の居場所としても重宝されそうだった。 モバイルオーダーも公共スペースも、試してみないと利点や欠点はわからない。まずは試し
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記者コラム「清流」 歩く魅力と大切さ
藤枝市田中にある徳川家康ゆかりの史跡田中城下屋敷周辺を巡った。普段の車移動では簡単に見過ごしてしまうような地域に残る貴重な史跡を求め、散策ガイドマップを手に約1時間半じっくり歩き回った。発見した時は、喜びと充実感を味わった。 下屋敷の横を流れる六間川沿いに咲く満開の桜や、住宅街にぽつんと点在する史跡の案内看板をはじめ、穏やかな小川、格安ミカンの無人販売所など徒歩だからこその出合いがたくさんあった。 巡っている途中、入社時に記者の心得として地域を歩いてよく見渡し、少しでも変化に気付きなさいと助言されたことを思い出した。地域の魅力や課題を見つけるには、やはり徒歩が適しているのだろう。歩く魅力
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記者コラム「清流」 理不尽に身を置く子
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化している。ウクライナの隣国ルーマニアで、国際的な非政府組織(NGO)の駐在員として働く浜松市出身の清水奈々子さん(31)をリモートで取材し、戦地から逃げてきた子どもの学びに大きな影を落としている現状を知った。 ルーマニアでは避難した子どもを公立学校で受け入れていて、清水さんは放課後学習の支援や心のケアをする人材の手配といった調整業務を担う。教員不足や言語の違いなどから「十分な教育を提供するのは難しい」と課題に直面する。 日本人や静岡県民に訴えたいことを聞くと「理不尽な環境に身を置く子どもの存在を知ってほしい」と返ってきた。一人一人が少しずつ関心を
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記者コラム「清流」 「地図のない旅」
レース時間は約2分。これだけのわずかな時間に、五輪を目指した3年間が凝縮される。競泳パリ五輪代表選考会、男子200メートル個人メドレー決勝。松本周也選手(伊東高出、下田市出身)の戦いが終わった。 大会中、生命線の前半が伸びずに苦心していたが、決勝の前半は日本記録に迫るペースだった。レース後の第一声は「やりたいことはやれました」。自然と浮かんだ晴れやかな表情に、どう質問しようかと思案していた筆者は救われた。 松本選手と比ぶべくもないが、学生時代に同じように短時間で決する競技に打ち込んだ。競技人生最後のレース前の光景は今も鮮明に浮かぶ。松本選手の旅路はまだ続くが、メドレー種目は一区切りのよう
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記者コラム「清流」 目線を変えて
静岡で記者になって以降、移動手段は専ら車。学生時代は徒歩や自転車での移動が主だったため、立場によって町の見え方がこれほど違うのかと驚く。 交通事故のあった現場に足を運んだ時などはそれが顕著だ。ドライバー、歩行者それぞれの目線から道を眺めると、「歩行者からはよく見えているが車からは姿が見えにくい」「段差があって通行しづらい」「この先の横断歩道まで歩くと結構距離がある」など、現場を取り巻く環境に発見がある。 春の交通安全運動が始まった。進学や就職、転勤で新生活を送っている人も多いだろう。「相手の立場に立ってみる」ことは対人関係だけでなく、交通安全でも大切なはず。歩行者、自転車、車。目線を変え
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記者コラム「清流」 優しいサングラス
紫外線から目を守るためサングラスを使うよう眼科で勧められた。取材時や日常遣いには抵抗があるものの、運転中なら問題ない。強気になる、性格が変わるなどと乱暴な運転の要因ともされる密閉空間の車内だが、目をいたわる優しい習慣として実践している。 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)が、希望する運転士向けに偏光サングラスの着用を導入した。「皆さまには何とぞご理解を」の案内に、乗客らの視線を気にする事業者の意識がうかがえる。サングラスでの業務は浸透の途上にある。 疲労軽減に加えて、視認性や安全性向上につながるなどの効果があるそう。かけたまま接客する状況もきっとある。そんな運転士をまさに色眼鏡で見ることのな
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記者コラム「清流」 県外の軽トラ市を訪問
3月下旬、愛知・新城市の県外の軽トラ市を初めて訪ねた。全国三大軽トラ市の一つで、中心の商店街で毎月開催している。新城は道路中央に軽トラを1列に配置するスタイル。スペースを有効活用でき、両脇の店舗の景観を阻害せず、客を送り合うのが良い。 この商店街に、スズキの販売子会社が営業所を移転新築オープンした。軽トラ市開催時間は敷地を無料開放してまちと“一体化”。会場のほぼ真ん中に位置するため、子ども連れや高齢者が立ち寄ってトイレや授乳など一息付ける。軽トラメーカー自ら地域振興に一役買う象徴的な試みだろう。 月イチ開催は浜松など本県会場と比べ高頻度だと思ったが、無理のない自主
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記者コラム「清流」 地紅茶と志戸呂焼
ウイスキー用のたる材をチップにし、茶葉を燻(いぶ)した紅茶を島田市金谷地区伝統の「志戸呂焼」の専用ティーカップで味わう。「第1回島田地紅茶フェスティバル」が開かれ、想定を大きく上回る1800人が来場した。 茶価低迷や減産が止まらない中、国産の和紅茶(地紅茶)に対する消費者の関心の高さは大きな可能性を秘めている。若者や家族連れの来場者が多かったことにも注目したい。 主催者に成功の秘訣(ひけつ)を尋ねたところ「紙コップではなく、志戸呂焼で提供したこと」との答えが返ってきた。格段に味わい深くなるという。地元伝統の焼き物の活躍に思わず胸が熱くなった。市内では来年秋に「第23回全国地紅茶サミット」
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記者コラム「清流」 記憶してください
富士宮市議会の当選1期目議員を対象にAED講習が開かれた。アクセサリーは外すべきか、女性を男性が対応して良いか。複数人で積極的に質問する姿は一見、感心に値しそうだが、周囲は目を合わせて肩を落とした。7日前の一般質問で議論された内容そのままだったからだ。 一般質問ではAEDに関する説明が行政当局から20分ほどあり、基本は網羅した内容だった。講習で重複しても丁寧に説明した担当者に、横で勝手ながら申し訳なさを抱いた。 当該議員たちが昨春の街頭演説で地元住民の声をしっかり聞いて市政に届けると声高に訴えていたのを思い出す。果たして、議場の答弁は聞いていたのだろうか。それとも忘れてしまったのか。政治
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記者コラム「清流」 津波避難施設 改善点は
夜間の地震を想定し、磐田市で3月、津波避難訓練が行われた。福田地区の豊浜小では昨年の3倍に上る約100人が参加。能登半島地震を受け、市民の防災感度が高まったようだった。 実際に高さ11メートルの校舎屋上まで避難すると、風をさえぎるものがなく、想像を超える寒さだった。避難した人は第1波から逃れられたとしても、第2波以降や余震に直面し、家族や知人の安否を考えながら過ごすことになるかもしれない。体力の消耗に加え、精神的な負担も大きいだろう。 ただ、市は屋上を一時的に避難する場所とし、毛布や飲料水などの備蓄品を常備していないのが現状だ。地震の発生直後から救助が入るとは限らない。有事の際に人々の生
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記者コラム「清流」 パワハラ撲滅は遠い
長時間の叱責(しっせき)や職員の人格、能力を否定する言葉の暴力―。静岡市が危機管理総室(現危機管理局)幹部の言動をパワハラ行為と認定し、減給の懲戒処分を下した。 該当部分とされる録音データを聞き、被害者を取材したが、内容は聞くに堪えないものばかりだった。言われた方は明らかに萎縮し、長期間に及べば心身を壊しうると誰でも想像できる。報道が出るまで有効な手だてが打たれなかった組織対応にも怒りを覚える。 難波喬司市長は、パワハラ認定後も同室の仕事ぶりを評価する姿勢を変えていない。パワハラと密接に結びついた状態で行われた仕事を評価していいのか。一連の行為がなければ、もっといい仕事ができたと考えるべ
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記者コラム「清流」 荒波越える教育を
3月、西伊豆町の田子小で閉校式が開かれた。児童や地元の住民が慣れ親しんだ校歌を体育館に響かせ、学びやに別れを告げた。田子小にまつわる思い出話も披露され、住民からの感謝や愛に包まれていた。 校章は漁業で栄えた地域らしく船のかじをかたどっているという。大海を旅する船のかじを握る者は、あらゆる困難を乗り越えるために常に勇気と意志と深い知恵が必要―。体育館の壁に刻まれている。 少子高齢化が進む西伊豆の人口構成は、都市地域が今後迎える“将来像”だと聞いた。縮小社会の先進事例となるまちづくりが行政には求められている。 4月から町内の小学校は2校となる。子どもたちが将来、どん
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記者コラム「清流」 “プロ”の心構えで
2月下旬、浜松市浜名区で住宅が全焼する火事があった。冬の乾燥と風で数分のうちに一気に燃え広がる火や出てくる煙を住民が不安そうに見守っていた。視線の先には、消火活動に汗を流す消防隊や周辺道路の交通規制をする警察官など現場のプロの姿があった。 数日後に分かったのはもう2人の“地域のプロ”の存在だ。80代の女性2人が、住人の女性(99)を救出したという。燃え上がる炎に腰を抜かしそうになりながら玄関や裏口を回り、ドアをひたすらたたいた。ようやく聞こえた住人の「はい」の返事に安心し、住人の家族への連絡も試みた。 「2人だったからできたことだね」。互いを見つめ合い、ほほ笑む2
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記者コラム「清流」 実家で「宝探し」
「実家に宝の山が眠っているかもしれない」。ホビー商材販売店「駿河屋」本店駿河屋ビル(静岡市葵区)にオープンしたトレーディングカード(トレカ)売り場を歩き、ふと考えた。 世界最大規模という売り場では、約180万種類1000万点超の現物をその場で確認、購入できる。驚かされたのは商材の豊富さだけでなく、数十万~100万円超にもなるレアカードの販売価格だ。少年時代に所有していたカードの名前を駿河屋のウェブページで検索すると、「22万円」と表示された。 運営するエーツー(同市駿河区)に聞けば、同様に販売価格に驚いてカード売却に訪れる来店客が増えているという。 トレカで遊ばなくなってから久しく、今
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記者コラム「清流」 セルフレジの緊張感
浜松市内のホテルに無人決済システムを導入した売店がオープンした。無人店は増え、セルフレジは今や当たり前。有人レジより気楽で、よく使っている。 先日、考え事をしながら操作していたセルフレジで手元の商品をレジにスキャンしたかどうか分からなくなった。履歴で判断できたが、意外にも緊張したことに気付いた。怪しいと思われないか―。振り返れば、無人店を利用する際は防犯カメラへの映り方にも気を使っていたように思う。 ホテルが売店に導入した無人決済は、複数のカメラやセンサーが客の手にした商品を認識。レジ前に立つと購入商品や金額などを客に自動で表示し、「監視の最先端」だと感じた。一方、「しっかり監視されるこ
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記者コラム「清流」 日本の風景
桜の街路や花火大会は、迷惑駐車や騒音の問題がしばしば関係者を悩ませる。一方で周囲を気遣い、場所や順番を譲り合う人もたくさんいて、日本のイベントの良さにあふれている場所とも感じている。 富士市内から富士山を望む撮影スポットとして話題の「富士山夢の大橋」は、山なりの橋から真正面に山体を捉えることができて人が集まる。歩道には絵になる階段も備わっていて、時間を忘れて撮影に没頭する人たちもいるようだ。迷惑駐車を引き起こす事態もあったが、専用駐車場が確保されて少し収まった。 外国人の人だかりを目にする機会は特に多い。多言語の看板で注意喚起が図られる中、地元市民の振る舞いも見せたい。きちんと並ぶ。人に
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記者コラム「清流」 県民生活支える人材
「人手不足」と「人材不足」は字面こそ似ているが、意味は大きく異なる。人手不足は日々の業務を回していく労働力を確保できない状況であり、人材不足は仕事に必要な知識や技術を持っている人が足りていないことを意味する。 公務員の定年退職年齢の段階的な引き上げに伴い、県では3月末時点で60歳の幹部職員108人が役職定年を迎えた。うち7割は4月から班長級として職場に残る。職員に指示する立場だった人が実動部隊に戻ってくるのだから、本人も“元部下”も若干のやりにくさを感じるかもしれない。 だが、幹部職員が蓄積してきた経験や知識は財産だ。県民生活を支える組織が人材不足に陥らないために
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記者コラム「清流」 雨天の開幕
チューリップやスイセンの花からしたたる雨のしずくがきらきらと輝く。3月下旬、「浜名湖花博2024」が開幕を迎えた。あいにくの雨天となった開幕日、家族連れらが春が到来した花の世界を笑顔で楽しむ姿が見られた。 開幕からしばらく続いた雨。それでも、ランのアーチで彩られた大温室や360度の映像の特設シアター、園内を走るフラワートレインに乗っての散策など、多彩な楽しみ方が用意されていた。準備に汗を流していた職員らの苦労を思い、ファインダー越しに見えた来園者の明るい表情に、少しホッとした。 春の長雨は「催花雨(さいかう)」とも呼ばれ、花々を咲かせる雨という意味を持つという。降り注いだしずくが、会場を
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記者コラム「清流」 読めない試合展開
富士市の公道を自転車で走行する富士山サイクルロードレース。最後の最後まで全く読めない試合展開に圧倒された。 メイン種目「富士クリテリウムチャンピオンシップ」決勝は1.8キロのコース30周で競う。レースに変化が生まれたのは16周目。後方にいたブリヂストンの所属選手が縦一列にトレインを組み、他の選手にプレッシャーをかけながら追い上げを開始する。ラスト数周で先頭集団を吸収して迎えた最終周回。一瞬、隊列が緩んだかと思うとその隙に、これまで体力温存していた別チームの選手が後方から一気に飛び出し、そのまま1位でゴールした。 個人戦でありながら集団戦。体力勝負でありつつ心理戦の要素を含む。沿道にいる観
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記者コラム「清流」 代用品を考える
○○が手に入らないときはどうしたらいいか-。先日訪れた市民団体による防災講座では、講師があらゆる事態を想定しながら防災グッズを紹介していた。 例えば携帯トイレの備蓄。黒い袋と凝固剤がセットになった製品が多いが、それらを十分に準備できなかったとき、ビニール袋とペット用シートがあれば代用できるという。ポリ袋調理では、水をたくさん使えない場合を想定して、野菜ジュースでご飯を炊いた。試食したところ、ケチャップライスのような味わいでおいしかった。 近年は用途に合わせた専用商品がすぐに手に入る。便利なのだが、その製品がないときにどうしていいか分からず、代用品も思いつかない。豊かさの弊害だろうか。ある
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記者コラム「清流」 米粒から膨らむ想像
磐田市の社山城跡で1978年に炭化した状態で見つかった米が、室町中期1436~77年の兵糧だった可能性が高いと市教委が発表した。社山城に関する最も古い歴史資料になった。 室町中期と言えば、応仁の乱が起きた。その当事者だった斯波氏は遠江守護職を巡って今川氏と争っていた。社山城も抗争の舞台になった。室町後期に今川方の兵を率いて遠州に侵攻した伊勢宗瑞(後の北条早雲)も社山城を訪れたかもしれない。戦火で焼けたとみられる小さな米粒だけで、はるか昔までイメージが膨らみ、胸が高鳴った。 同市は古代から近現代までの歴史資源がそろう貴重な環境にある。ただ、誘客に生かし切れていないのが残念。市民や訪れた人が
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記者コラム「清流」 すてきな取り組み
長泉町にコインランドリーに併設するクロワッサン専門店がある。いつも車で通る道沿いの店。前々から気になっていた。 「町内でおすすめの取材先ありますか」。何げない商工会職員との会話。紹介されたのがその店だった。LPガス容器をくず化する時に生じる残ガスで焼き上げる珍しい取り組みをしていた。 営業開始から2時間ほどたってから、取材で店内に入った。ふわっとバターのいい香り。こだわりが詰まったクロワッサンは、地域住民に人気で既に完売のものもあった。 コインランドリーも残ガスで稼働し、災害時、電気などのライフラインを住民に無料提供するという。無駄なく残ガスを活用したいという社長の思いと、地域住民にと
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記者コラム「清流」 過去との決別
1万分の3ミリ―。この目に見えないわずかな誤差を測定し、自社製品に狂いがないかを証明する。浜松市で輸送機器部品の外装ケースを試作する浅沼技研は、「加工精度の保証」を経営の軸に据える。中小企業には決して安くない2億円超を投じ、世界最高峰の測定機を導入した。 日経平均株価が4万円を超え、バブル期以来の「失われた30年」は過去の話に。海外投資家が日本企業に熱視線を向け、金融市場は活況を呈す。国内産業ピラミッドの頂点に君臨する大企業の力だけではない。地道な研さんで技術力を磨く中小があってこそだ。 適切な価格転嫁が中小の経営を支え、巡り巡って日本経済を豊かにする。下請けいじめなどもってのほか。株高
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記者コラム「清流」 農業の面白さ伝えたい
3月中旬、富士宮市内房の特産「内房たけのこ」の収穫を取材した。少子高齢化で第1次産業を支える若者が減っていると言われるが、タケノコ農家も例外ではなかった。 取材を快く受け入れてくれたのは、同地区で約60年間も農業を続ける70代男性。本人は「豊作の年」と話すも、年齢的に全盛期のようには収穫できないと漏らした。山に入ると、20代でも転げ落ちそうな斜面で作業に取り組んでいる。取材を通していろいろな感情が沸いてきた。 農業のノウハウは長年の経験から生まれる。体力があれば良いわけではない。作物を安定供給するには新たな働き手が必要だ。筆者も援農ボランティアなどに積極的に参加したい。農業の大変さだけで
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記者コラム「清流」 自然で働くこと
山の急斜面で、送電線に枝が引っかかりそうな木があった。枝が送電線に触れないよう、木の折れる方向を決め、現場周辺の安全を確保する。林業の中でも長年の経験が要る作業だ。佐久間森林組合の作業員はチェンソーで溝をつくり、木が斜面の方向へ折れると安心した表情を見せた。 連載企画で林業従事者に取材すると、森林を守る大切さや仕事の難しさが伝わってくる。一人前の従事者になるには長い時間が必要という。森林経営、木の種類、チェンソーの使い方など覚える分野は広い。 取材した女性の一人は「自然の中で働くと体力が付くし、気持ちがいい」と笑顔を見せる。仕事内容は違うが、自然に囲まれた水窪支局で働く私も同じだ。これか
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記者コラム「清流」 日常にあるプロ野球
プロ野球2軍ウエスタン・リーグに参入したくふうハヤテベンチャーズ静岡の初シーズンが始まり、新球団が歴史的な一歩を踏み出した。本拠地のちゅ~るスタジアム清水(清水庵原球場)がある地区で小中学校時代に野球に打ち込んだ身としては、想像もしたことがなかった景色にただただ感慨を覚えた。 開幕戦の試合前、球団の杉原行洋代表は「もう1年に1度のプロ野球を待つ必要はありません」とあいさつした。そう、草薙球場や東京ドームでの観戦は野球小僧にとって大イベントだった。2軍戦であれ、プロの試合がこんなに身近で見られる日が来るとは。 球団の最大の魅力は、多様な背景を持った選手が集うそのストーリー性。多くの人がその
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記者コラム「清流」 残したい棚田の風景
日没前の柔らかい光を反射する棚田が、息をのむほど美しかった。キャンプ企画の取材で訪ねた菊川市倉沢の「千框(せんがまち)の棚田」。のどかな山里に身を置いている時間が心地よくて雑談を楽しんでいるうちに日が傾き、棚田は表情を変えていた。 棚田の1枚ずつをキャンプ場の区画サイトに見立てた配置。農閑期だが、保全団体の粋な計らいで一部に水を張っていた。テントで夜を明かしたキャンパーは最高のロケーションを楽しめたことだろう。 通年営業のキャンプ場になれば人気が出るとも思ったが、田んぼとして現役なのが魅力。景観の維持には人手が要る。保全団体は高齢化に直面していて、企画は交流人口の拡大と新規棚田オーナーの
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記者コラム「清流」 若手、女性を意識せよ
1988年に沼津市内の経済団体や各種団体の役員らで設立された「沼津駅の高架化を実現する市民の会」が3月、事業後を視野に入れた「鉄道高架化とまちづくりを推進する会」に衣替えした。今後は要望活動にとどまらず、中心市街地を含めたまち全体の将来像を描き、市民に発信するとの気概を持ってほしい。 役員は21人。会長や理事長といった地域の顔役をそろえた。沼津最大の事業を長期間かけて進める上で、強力な布陣と言える。しかし、顔ぶれは前身の市民の会とほぼ同じ。事業完了までまだ20年近くを要することを考えると、次代を担う若手や、多様性を重視する視点から女性をもっと起用すべきだ。 顔役をそろえても着工まで30年
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記者コラム「清流」 やる気引き出す言葉は
「勉強しなさい」や「宿題やった?」は、子どもについ言ってしまう言葉ランキングの上位常連を占める。「宿題や家庭学習にどう取り組ませるか」をテーマに展開した「賛否万論」で、読者やキュレーターから寄せられた投稿には「自発的」「主体的」というキーワードが頻出した。 学びの楽しさは自ら課題を見つけ探求することで養われる。子どもたちの主体的なやる気を引き出すために、教師や保護者がかける言葉は重要な意味を持つ。 どんな声かけが有効か、記者自身も含め悩む保護者は多いのでは。チャットGPTに助けを求めて「『勉強しなさい』の良い言い換えは?」と尋ねると、「楽しみながら成長しよう」との回答。早速娘に言ってみた
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記者コラム「清流」 当事者の声
「自治会や自主防災会の役員って、男性ばかりでしょう」。地域防災の講演会の取材中、講師にそう言われて「確かに」とうなずいてしまった。災害時は女性、障害者、外国人など多様な人々が被災する。避難所運営に、そうした当事者の声を反映できているのか、という内容だった。 避難所といえば、学校の体育館などに大勢の地域住民が集まる形が多い。女性の性被害や障害者の避難については、大きな災害が起きるたびに問題になっている。日ごろから女性や障害者も意見を出し合って備えることで、対策を図ることはできないだろうか。 能登半島地震の被災地に、県内から多くの行政職員らが派遣された。その経験を地域に還元し、生かす必要があ
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記者コラム「清流」 金はなぜ金色?
ピカピカときらめき、人を魅了する金はなぜ金色か―。静岡大工学部の小野篤史教授の研究グループが金を使って開発したフィルムの色は青、緑、赤色。鮮やかな色合いのフィルムに、金っぽさは全く感じられなかった。「金は金色」という常識からは外れた現象に興味をかき立てられた。 金は粒子にしてガラス内などに分散させると、通り抜けた光が赤色に見える性質があり、赤色のステンドグラスや江戸切子などにも利用されてきた。フィルムは、金粒子の大きさを変えると色が変わる性質を応用して開発された。 取材では基礎として、金はさまざまな色の光のうち青色以外を反射するため、青色の補色の金色(黄~橙色)に見える原理から学んだ。徐
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記者コラム「清流」 情報が届くことの価値
高校生の時、知人の家が火災に見舞われた。友人間で情報が錯綜(さくそう)する中、地元紙が安否や当時の状況を伝えてくれた。報道機関のありがたさを実感した瞬間だった。 実際に記者として勤めると、「報道」に対して自問の日々だった。報道することでむしろ被害者やその家族を傷つけないかなど、報道の意義に悩む事件事故の取材も多かった。 そんな時、ある事件の取材で被害者の知人男性に話を聞く機会があった。「びっくりした」「周りもみんな受け止め切れていない」-。率直な思いを聞いた時、心の底から報道の使命を感じた。「知りたい人に知りたい情報が届く」ことの意義を肌で感じた。 これからも悩み続けるだろうが、「情報
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記者コラム「清流」 花博のフラワーパーク
はままつフラワーパーク(浜松市中央区)でたくさんの花に包まれ、さまざまな思い出がよみがえった。 子どものころはよく家族や遠足で訪れた。お気に入りは噴水池の斜面に施された三角花壇。三角の植栽が青空と緑の芝に映えた。意味もなく、池の周囲を走り回ったことも思い出す。家庭を持ったばかりのころはわが子をベビーカーに乗せて園内をゆっくりと歩き、写真を何枚も撮った。 十数年ぶりの園内は当時のままの趣で、なんだか落ち着く。フラワーパークは浜松市出身者の原風景かもしれないとしみじみ思う。 フラワーパークで23日から浜名湖花博2024が開催されている。月日の移り変わりとともに多種多様な花緑を楽しめ、新たに
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記者コラム「清流」 伊東の図書館
好きな場所を一つ挙げるとすれば、まず図書館が思いつく。出身の静岡市南部の施設は親に連れられた幼少期以降、数え切れないほど足を運んだ。静かな空間の中で棚に並ぶ本の背表紙を眺めていると、あっという間に時間が過ぎた。 以前の勤務地の図書館も心地よい環境でよく利用したが、現在住む伊東市の施設は足が向かない。そこかしこが古く狭く、居づらい気分になるからだ。現状では通う楽しみが見いだせない。気になった本を手に取り、落ち着いたスペースでひとときを過ごす「ゆとり」がほしいと感じる。 そんな伊東市で、新たな図書館の建設に向けて動きが進む。ただ、入札不調に見舞われ、当初計画からの規模縮小を図る方針だ。多額の
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記者コラム「清流」 旅先で考えたこと
休暇を使い九州を旅行した。観光地はもとより交通アクセスの悪い温泉街まで外国人が多くてびっくり。熊本県で台湾積体電路製造(TSMC)の工場が開所し、九州は今、最も熱い地域の一つ。好況を一過性にしまいと、あれこれ施策に知恵を絞る自治体の姿が目に浮かんだ。 翻って本県はどうかも考えた。観光に限らず、産業停滞、少子化、若者流出-。経済のてこ入れに向けて課題が横たわる。「理想郷」「文化の首都」「ポスト東京」と、県が毎年の予算発表のたびに掲げる聞こえのいいフレーズは実を結び、県民は潤っただろうか。 本紙が行った県内企業調査では県政に対する厳しい評価が相次いだ。中には川勝平太知事の政治力や資質を問う記
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記者コラム「清流」 20年前の浜名湖花博
静岡県東部の中学校で、吹奏楽部の先輩に「面白そうだから出てみない?」と誘われたのがきっかけだった気がする。20年前の浜名湖花博、のたねステージ。部内で有志を集めて編成が偏ったアンサンブルを組み、手持ちのスコアを編曲して空き時間に練習した。親に頼んで、車で楽器を運んでもらい、皆で浴衣を着てステージに立った。 SMAPの「世界に一つだけの花」を演奏したことを覚えている。木材をふんだんに使ったステージの前で拍手をくれた人の顔は定かではない。出演後、世界の庭園を巡って母や友人と人生初のトルコアイスを食べた。少しぼやけた青春の記憶だ。 20年後、記念事業が始まり、不思議な気分がする。準備の様子を見
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記者コラム「清流」 人が集まる理由
富士東高新聞部はコンクールの入賞常連校。部員たちは「とにかく楽しい部活」と強調する。 活動日が特に固定されていなくても、放課後は毎日のように部室に人が集まってくる。部員同士の仲が良く、必ずしも紙面作りの話をしているわけではないが、何げない会話が記事につながることもある。 部員は2年生と1年生計10人。毎年コンスタントに入部希望者がいる。昨年入ったある男子生徒は中学まではサッカー部だった。入部理由を聞くと「先輩たちがいきいき活動していた。取材で自分が知らない世界を知ることができる面白さを感じた」という。 さまざまな分野で人手不足が嘆かれている。楽しそうに仕事をすること。信頼できる仲間がい
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記者コラム「清流」 一瞬、一言に潜む本音
ラグビー・ヤマハ発動機のクラブ創立40周年を記念したOB戦。ヤマハスタジアムのピッチに立った元選手たちは、おそらく現役時代には見せたことのないであろう満面の笑みでプレーを満喫。心からラグビーを楽しんでいるのが表情から見て取れた。 「現役生活で競技が楽しいと思ったことは一度もなかった」。あるスポーツ選手は引退会見でこう語った。プロの厳しい世界で生き抜く苦悩が凝縮されているようで、強く印象に残ったことを覚えている。 普段の取材を通じ、相手の本音を奥底まで掘り起こすのは難しい。でも、選手の一瞬の表情や、こぼれた一言から、その一端を感じ取ることはできる。戦う人の思いや姿を多くの人に届けるために、
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記者コラム「清流」 地方の魅力
季節外れだが、夏の夕方の黒々とした富士山が好きだ。全てのものを阻む壁のようにも、世界中を包み込む影のようにも見える。とても荘厳で神々しく、まさに霊峰。ふとした瞬間に、その光景を見られるのは山麓の住民の特権だと思う。 県内で3分の1強、首都圏で3分の2弱を過ごした。都市の魅力は分かりやすい。豪華で、華やかで、にぎやか。対して地方では、長い時間を過ごし、まちや人に溶け込んでようやく見つかるものが多い。だから心の奥底に染み渡る。 最大の魅力は人。家族と共に御殿場で過ごした6年間で確信した。大組織が会議室で考えたものより、宴席やイベントで意気投合した人たちが始めた活動は輝いていた。家族の拠点は移
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記者コラム「清流」 一瞬、一言に潜む本音
ラグビー・ヤマハ発動機のクラブ創立40周年を記念したOB戦。ヤマハスタジアムのピッチに立った元選手たちは、おそらく現役時代には見せたことのないであろう満面の笑みでプレーを満喫。心からラグビーを楽しんでいるのが表情から見て取れた。 「現役生活で競技が楽しいと思ったことは一度もなかった」。あるスポーツ選手は引退会見でこう語った。プロの厳しい世界で生き抜く苦悩が凝縮されているようで、強く印象に残ったことを覚えている。 普段の取材を通じ、相手の本音を奥底まで掘り起こすのは難しい。でも、選手の一瞬の表情や、こぼれた一言から、その一端を感じ取ることはできる。戦う人の思いや姿を多くの人に届けるために、
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記者コラム「清流」 清水の声
静岡県外出身の自分だが、遠く静岡の地名に、子どもの時から何かと触れてきた。国語の教科書に登場したウミガメの産卵の話で御前崎を知った。浜松を知ったのはずっと読んでいた柔道漫画の舞台だったから。 現在の勤務地である清水を知ったのは、幼いころから親しんできた「ちびまる子ちゃん」の影響だ。サッカーの町であることもまるちゃんのおかげで知った。地元の友人に説明するときは「まるちゃんの町で働いてるよ」と伝えている。 支局から少し歩けば見たことのある地名が並び、おかっぱの少女の存在が必ず頭をよぎる。小さなころからまるちゃんを通じて親しんできた清水で勤務できていることが、いつもささやかな喜びだった。 私
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記者コラム「清流」 「当然」を伝えるには
「なぜ時間を守らなければならないのか」「なぜ整理整頓をするのか」。一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構の友成晋也代表理事の講演で示された問いに、元球児ながら明確な答えを出せなかった。 同機構が提唱する「ベースボーラーシップ教育」は、日本の野球で当然のように行われてきた指導の教育的意義を言語化。国内の現場で培われた暗黙知を形式知に変え、アフリカで野球を通じた人間力の育成メソッドとして活用している。日本の「当たり前」が浸透し、現地では「成績が上がるスポーツ」として認知されているという。 「常識」や「当たり前」と押しつける指導が通じない時代。指導の背景にある意義を理解させる必要があるのだろ
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記者コラム「清流」 公園下の頼もしい施設
浜松市中心部の住宅街にある「かもえ児童遊園」(通称どんぶらこ公園)の地下に設置されている雨水調整池に入る貴重な経験を得た。市立西小の児童や保護者を対象に同小PTAが企画した防災学習の取材。5456平方メートルの敷地に高さ6メートルの柱が並ぶ鉄筋コンクリート造りの暗闇空間は圧巻で神秘的だった。 船をイメージした複合遊具「ドンブラッコ号」などを備える地上の公園ののどかな雰囲気からは、想像もつかない巨大な地下施設。貯留量2万5000立方メートルにたまった水をポンプでくみ上げて排水路に流す仕組みなど、市河川課職員らによる説明に児童はもちろん、大人も興味津々だった。 防災訓練だけではなく、こうした
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記者コラム「清流」 新聞記者の誇り
時代の流れとはいえ、さみしさが拭えない春となりそうだ。40年以上も続いた地域紙庵原新聞が3月で廃刊する。ある記者さんは「筆を置いちゃだめだ」と、ペンを贈られたというエピソードを教えてくれた。 「あっちの学校を取り上げるなら、こっちも何かないか意地でも探して平等になるよう常に気を配っていた」という苦労話を聞きこうべを垂れた。廃刊への反応は単なる感謝ではなく、情報の背後にある書き手の思いへの共感だと思う。 新聞記者をしていて気付くのは、行間を読む読者の力と日本語の奥深さだ。昔先輩記者から「自分が分からないことは伝えられない」と言われた。経験を重ね「自分が気付いていないことも実は伝わっている」
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記者コラム「清流」 子どもも地域の一員
沼津市の第二中学校区内にある小中学校の再編について議論する「学校の未来を考える会」の会合を取材するたび、気になることがある。とにかく、女性が発言しづらい雰囲気なのだ。 自治会、校区内にある小中学校のPTA、未就学児の保護者ら21人で構成する会のうち、女性はわずか4人。2月の会合は持論の正しさを競い合う男性陣のパワーゲームと化した。 女性が意見したのは終了間際。母親の視点で、小規模校に通う子が他校との交流に刺激を受けた様子を紹介した。会合の目的は「子どもにとって望ましい教育環境をつくる」だが、女性が発言しない限り子どもの声は反映されそうもない。 会合後、ある母親が発した。「子どもも地域の
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記者コラム「清流」 十湖さんの息づかい
博物館や資料館などを訪ね、担当の職員から日本の歴史や偉人の功績を取材する時間は毎回、新たな学びがあり楽しい。松尾芭蕉の流れをくむ俳人として活躍した浜松市出身の松島十湖(まつしまじっこ・1849~1926年)もその1人。「はま松は 出世城なり 初松魚(はつがつお)」は代表作の一つだ。 中善地村(現中央区)に生まれ、私財を投じて天竜川の治水や学校整備などに尽力し、政治家としても功績を残した。その功績を後世に伝えるため各地に十湖の句碑が建立され、浜松市を中心に60はあるという。寺や神社の境内などで見ることができる。 地元では「十湖さん」の呼び名で親しまれている。句碑を訪ね歩き、明治大正の激動期
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記者コラム「清流」 おでんは誰のもの?
「仕事帰りのサラリーマンが熱々のおでんを楽しみました」。1日、静岡市の繁華街で行われたおでん祭を取材し、週刊「YOMOっと静岡」用に記事を書いた。 「おでんはおじさんの食べ物か」。冒頭の一文に対し、原稿を確認する上司から指摘を受けた。「まさか」。思わず言ったが、確かに屋台のカウンターで楽しそうに酒を飲むスーツ姿の男性陣を、現場の描写にぴったりと思い原稿に盛り込んだ気がする。結局、子どもたちに誤解を与えないようにと、男女の区別がない「会社員」に直した。 現代は多様性の時代だ。しかし配慮のための言葉の制限を窮屈に感じてしまうときがある。言葉が違えば読者が思い浮かべる情景もずいぶん変わるだろう
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記者コラム「清流」 東部地域で産業観光を
菓子メーカーの不二家富士裾野工場の関係者が裾野市長と会談した際、工場見学の話題になった。市長室の片隅で話を聞きながら小学生の頃、パンや清涼飲料の工場を訪れ、お土産としてもらった商品に心を弾ませた記憶がよみがえった。 静岡市や浜松市での勤務時代、工場を訪れる「産業観光」の話題をたびたび取材したが、東部総局に来てからはほとんど機会がない。一方で、地下水が豊富な東部地域には子どもや家族連れの人気を集めそうな飲食物の製造工場が多く、誘客の潜在能力は秘めている気がする。 現地でしか購入できない限定品があれば、魅力はさらに増すのではないか、など想像は膨らむ。企業の協力が前提になるが、交流人口拡大に向
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記者コラム「清流」 出会いが彩る48年
48年間の足跡が凝縮された光景だった。浜松市立高合唱部と、部活の卒業生でつくる合唱団で女声合唱の指導に当たった尾崎亘さん(84)のラストコンサートが同市中央区で開かれた。大勢の教え子が駆け付け、尾崎さんの最後の指揮を目に焼き付けた。 36歳で当時女子校だった同校に赴任し、合唱部の顧問に就いた。定年退職後、一度は合唱指導から離れたが、卒業生からの熱烈な要請を受けて再びタクトをとることを決意した。 ラスト公演では、涙をこらえながら歌う団員の姿があった。締めくくりに同校合唱部で歌い継がれる「落葉松」を披露し、客席にいた教え子もステージに上がって共演した。尾崎さんが自身を振り返って言葉にした「幸
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記者コラム「清流」 次の一歩を
7年前、高校陸上部の顧問のひと声で愛知県から能登半島へ向かった。輪島市で開催された競歩の全国大会。前年のけがでインターハイの夢を諦めて下を向いていた私の目に映ったのは沿道いっぱいに並んで応援する地元住民の姿だった。海風や日差しも背中を押してくれ、歩け歩けと思ううちにゴールにたどり着いた。過去を嘆いて立ち止まっていた私に、夢に向かって歩き出す大切さを気付かせてくれた瞬間になった。 しかし、能登半島地震の被災地に入った静岡市消防局隊員への取材で聞いた現状は当時の記憶とは全く違った。大会の走路だった輪島市河井町の火災被害にも言葉を失った。今年の大会は中止になったという。7年前、勇気をくれた輪島の
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記者コラム「清流」 敬老祝い品
敬老祝い品の対象年齢を引き上げるべきか―。先日、御前崎市議会の新年度当初予算案の審査でこんな議論があった。市は財政悪化を背景に祝い品贈呈の対象範囲を狭める方針を示したが、市議から異論が出た。 2023年度は77、88、99、100歳に商品券などを贈り、さらに101歳以上も対象に加えてきた。24年度からは対象を88、100歳に限定し、予算約200万円の削減につなげると説明した。これに市議からは「高齢者の生きがいが減ってしまう」と懸念が示された。 確かに、祝い品を受け取る側は対象範囲が狭まることでさみしく思うかもしれない。けれど、これから大事なのは祝い品ではなく、御前崎市を支えてきた高齢者が
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記者コラム「清流」 隠れスポット探し
3月に入り、各地で早咲きの桜が散り、ソメイヨシノの時季が近づいてきた。一言に桜といっても種類や場所によって見どころが変わる。県内に名所はたくさんあるが、今年は隠れスポットも探して写真に収めたい。 2月、早咲きの河津桜にはメジロなど多くの野鳥が飛来し、枝から枝へと飛び交うほほ笑ましい光景があった。伊豆市の観光施設「修善寺虹の郷」には約300本のカンヒザクラが植栽され、下向きに花が咲く控えめな姿がかわいらしい。沼津市井田では、散った桜の花びらが歩道に広がる「桜のじゅうたん」を楽しむことができた。 これからは気温が上がり、ひと味違った光景を見せてくれそうだ。いろいろな場所へ足を運んで春色の景色
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記者コラム「清流」 善意に頼らぬ仕組みを
先日、静岡県中学選抜野球大会で島田第一、二中の合同野球部が初優勝を飾った。初めて担当した中高生の野球取材。最も印象的だったのは、剛速球でもホームランでもなく、大会を支える大人の存在だった。 監督やコーチ、保護者はもちろん、審判員や球場整備員など多くの人が朝早くから球場に入り子どもを支えていた。車で数時間かかる遠方から来ている人も多く、苦労がうかがえた。 審判員の男性に話を聞くと、「ずっと野球をやっていたので、その恩返し」と笑う。部活動の多くはこうした住民の善意で成り立っているのが現状だが、男性は同時に「これでは後に続く人は少ない」と憂う。各地で地域スポーツクラブへの移行も進む中、金銭的補
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記者コラム「清流」 散歩道
事業開始から約20年を経て、待望の富士川かりがね橋が開通した。全長は742メートル。歩行者の通行も可能だ。 「新しい散歩道になりそう」。2月のお披露目イベントで、橋を散策した地元の夫婦が期待を膨らめていた。片側には幅4メートルほどの広い歩道・自転車道が整備されている。照明灯や標識は目立たない場所に設置され、開けた視界からは富士川の流れ、岩本山の緑が望める。景観との調和を意識して統一されたベージュ系の配色が現代的だ。 社会学者のジンメルは、橋は岸と岸を結びつける一方で、両岸の間にある距離をかえって人々に意識させると分析した。渋滞解消など、車移動における利便性向上に注目が集まるが、あえて徒歩
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記者コラム「清流」 拠点なくとも関心今も
2023年3月に当社の浜北支局が浜松総局に統合され、自分も6年間にわたって勤めた支局を離れ、総局員として仕事をするようになってから1年たった。浜松市浜北区も行政区再編で24年1月、浜名区になった。ただ、今も自分の元には時々、浜北地域の人たちから取材の相談がある。 23年度中は、郷土に関する資料をまとめたとか、土地の祭りの余興で演じた芝居を区切りにするといった浜北の話題を直接取材した。市政の取材が本来業務ではあるが、浜北地域も浜松市の一部だし、縁を大事にしたい思いがある。 地方新聞社は地域密着。支局での仕事が楽しく、また大切だと先輩記者に教わってきた。拠点としての支局がなくなり、直接の担当
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記者コラム「清流」 みそ汁の具は
私事だが、わが家の小学生と保育園児が最近、食卓に毎日出しているみそ汁を残すようになった。子どもの食はそもそも気まぐれだが、理由を聞くと「飽きた」と一言。確かに最近の具は大根とキャベツが交互だったかもしれない。 変化が必要かと思い、料理好きの弁護士とその恋人の食卓を描く某人気ドラマに登場し、気になっていたトマトのみそ汁を作った。具は半分に切ったプチトマトと玉ネギのスライス。ほんのり酸味が効いておいしく、器は空になった。 取材先で料理のプロに聞くと、みそ汁の具は「何でもあり」という。お薦めはソーセージやベーコン、ちくわなどのタンパク質と旬野菜の取り合わせで、卵やチーズも合うとか。ごま油やバタ
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記者コラム「清流」 金メダリストの金言
元スピードスケート選手の高木菜那さんを招いた講演会が3月上旬、松崎町で開かれた。つらいことの方が多かったという競技人生の中で、劣等感を原動力に挫折を乗り越えてきた経験などを語った。世界一に輝いた彼女の言葉一つ一つに重みがあった。 特に印象的だったのは、目標に向かって努力する過程が重要だというメッセージ。取材する際、成果や結果に焦点を当てることが多い。ただ、結果にたどり着くまでに苦悩や試行錯誤があったことは忘れてはならない。少しおろそかになっていたと反省した。 「言葉には誰かの人生を動かす力があると思っている。責任を持って伝えたい」。講演後の取材でそう答える高木さんのまっすぐなまなざしに、
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記者コラム「清流」 要配慮者の視点で
「能登の地震では、倒れた建物の前で救助隊が声をかけて安否確認している様子がテレビに映った。耳の聞こえない私たちには応じられない」。聴覚障害への理解促進を図る愛の援聴週間に合わせて浜松市内で開かれたイベントで、参加者の一人が不安を口にした。 呼びかけに反応できないと、救助される機会を逃す恐れがある。近くに人がいるかいないかわからず、力を振り絞って音を立てて体力を消耗してしまうこともあるかもしれない。救えるはずの命が救えなくなる事態になりかねない。 会場では、笛を持ち歩くなどの対策が話題に上ったが、双方向のコミュニケーションが実現しない限り根本的な解決にはならない。災害時の要配慮者への対応や
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記者コラム「清流」 ファンサービスとは
冷たい雨に打たれてもずっとJリーガーのサインを待ち続けていたサポーターが練習場にいた。それも1人や2人ではなく何十人も。ルールに基づき傘を差すことはできない。クラブからの事前通告に従い、急きょ悪天候でファンサービスが中止になっても文句一つ言わずに一行は練習場のピッチを静かに後にした。 規範意識の高い日本人の美徳と捉えるか、愛する選手やクラブを思うがゆえの行動なのかは分からない。ただ、その光景を目の前で見ていた一人として複雑な気持ちになった。 コロナ禍を経て復活したファンサ。これは県内の一例だが、急な雨で選手の体調管理を優先したいクラブ側の言い分は分かる。ただこんなに辛抱強いサポーターを心
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記者コラム「清流」 コミュニティ協議会
浜松市が行政区再編に伴って新設した「地区コミュニティ協議会制度」。市内50地区自治会連合会ごとに任意で設立できる、地域課題解決のための組織で、要望を区協議会の地域分科会を通じて市に提出できる。市は条例で、要望への回答義務が課されている。 この制度に沿って中央区和地地区の協議会が初の要望を提出した。地区の体育館の設備更新を求める内容で、市は要望から2カ月ほどで回答すると通知した。協議会役員によると、これまで自治会から市に要望を上げても、大半は無回答。「回答の確約がある点は大きい。地域での議論も活発になる」と、役員は制度の意義を実感している。 協議会は既存の自治会と役割の違いが見えにくく、設
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記者コラム「清流」 杉村選手の勇姿再び
東京パラリンピックのボッチャ個人金メダルの杉村英孝選手(伊豆介護センター)=伊東市=が、開幕まで半年を切ったパリ・パラリンピック代表に内定した。自身の名を冠した得意技「スギムライジング」など、観衆を引きつける正確な投球が今から楽しみだ。 2月下旬、地元市長に内定報告した。杉村選手は3年前の東京大会後の規定改正で、使用していたボールが使えなくなった苦労を明かした。「やっていけるのだろうか」という不安があったという当初から、時間をかけて調整を進めてきた経緯を報道陣に語った。 「多くの人が応援し、期待してくれている。気持ちに応えられるようなパフォーマンスをパリの舞台で発揮できるよう準備する」と
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記者コラム「清流」 土への身勝手な思い
土はあくまで作品の土台。色や装飾が施されて完成形と期待してしまう。 「焼かない作品も陶芸と呼べるか。焼かなくてよければ焼きたくない」。陶芸家前田直紀さんの言葉に驚いた。形を作り、釉薬(うわぐすり)をかけて1000度以上の窯で焼成して―という一連の流れがない巨大なオブジェ。ひんやりとした粘土肌の感触が今も残る。 土や木など自然物で制作する野外美術プロジェクト「天地耕作」の1人、村上誠さんは「時間とともに朽ちて失われていく様も含めてアート」と語る。なだらかな土の曲面に、わらが混ざる。生き生きとした浜松の土の明るさは、いつでも思い出せる。 どちらの作品も3月中に見られなくなってしまう。記憶に
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記者コラム「清流」 友好への思い忘れない
「近代日本の国際化において大切な場所だったのだと、市民の記憶から忘れ去られるのが怖い」。ウクライナ侵攻開始から2年、幕末からロシアとゆかりのある下田では友好行事がぷっつり途絶えた。昨秋にロシアと下田の関係性を尋ねた際、在任中に交流に尽力した元市長の石井直樹さんが心情を明かしてくれた。 その石井さんが先日、永眠した。16日には下田港開港周年事業の一環で、ロシア使節プチャーチン提督が率いて来航した軍艦ディアナ号乗組員らの慰霊祭が控える。久しぶりの関連行事となる。 ロシア政府を断罪しつつ「政治と交流の歴史は切り離して考える必要がある」との言葉が思い起こされる。下田だからこそ発信できる平和へのメ
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記者コラム「清流」 五明茶の○○売れ
俳優やアイドルなどが身につけたり紹介したりすると爆発的に商品が売れる「○○(俳優の名前)売れ」の文字を交流サイト(SNS)でよく見る。掛川市の五明茶も人気アイドルが取り上げて、ファンらによる注文が殺到した。 五明茶業組合がエコパアリーナで公演する歌手らに茶を提供してきたことがきっかけとみられる。○○売れは企業が戦略的に行うことも多いが、今回は組合も寝耳に水だった。生産者らが地道に丁寧に、取り組んだお茶づくりが好機を呼び込んだのだろう。SNSを見ると、五明茶の味や香りはファンからも好評だ。 掛川には茶以外にもイチゴやトマトなど特産品がある。ハードルは高いかもしれないが、公演時の提供やロケ弁
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記者コラム「清流」 「投票率向上」は必要か
「商業施設に期日前投票所を」「若者の選挙啓発動画コンテストを開く」―。静岡大生と静岡市選管は本年度から、連携して来春の市議選の投票率向上に向けた対策を考えている。 投票率低下に問題意識を持つ若者が主体となった良い取り組みだと思い、継続的に取材してきた。関係者間では好意的な意見が交わされた一方で、「投票率アップが目的になっていいのか」との意見も聞いた。候補者の資質や政策を理解せずに投票して投票率を上げても、良いまちづくりにはつながらないとの趣旨だ。 いろいろな意見があるだろうが、個人的には、より暮らしやすい社会にするために、やはり投票率が上がることは大切だと思う。行政の課題や政治家の仕事ぶ
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記者コラム「清流」 プリンが好きすぎて
富士宮市に人気遊園地のような行列ができた。人々のお目当てはプリン。特産の鶏卵と牛乳のPR企画として初の祭りが開かれた。市内菓子店の多様なプリンが集合するとあって県内外から客が殺到した。 盛況の裏で課題が浮かんだ。1時間足らずで売り切れが多発し、肩を落として引き返す姿があった。雨予報で客足が読めず、各店は製造量を予定より減らしていた。急きょ再生産して補充した店もあったが、小規模個人店は打つ手がなく、行列を見つめることしかできなかった。 来場者を気温5度以下の寒さにも大雨にも耐えさせたプリンの魅力は想像以上だった。PR戦略の方向は間違っていない。富士宮やきそばに続くご当地グルメに成長したら-
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記者コラム「清流」 地産地消で応援
仕事からの帰り道、店で夕食を済ませるのが習慣だったが、最近は生活改善のため、自炊をするよう意識している。ただ、料理のレパートリーが乏しく、献立のマンネリ化が悩みだ。 磐田市産チンゲンサイを使ったスープなど地元食材を生かした新商品が、県西部のセブン-イレブンで発売された。早速、同市産パプリカのピクルスを購入。冷蔵庫の残り物で作ったしょうが焼きとの相性が抜群に良い。あと一品足りない時に便利なのはもちろん、鮮やかな見た目で食卓がぱっと明るくなった。 そして何より「地元産」との文字に、安心や信頼、親近感が湧いて手を伸ばした。農業を取り巻く環境は価格低迷や後継者不足のあおりなどを受けて厳しさを増し
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記者コラム「清流」 命預かる責任とは
2月の休みに、東日本大震災で被災した宮城県石巻市の震災遺構大川小と女川町の七十七銀行女川支店跡地を訪ねた。いずれもすぐ裏に山があるが、児童も行員もそこに避難せず亡くなった。「なぜ1、2分で行ける山に行けなかったのか」。自分の足で登ってみても答えは分からなかった。 津波は想定を超えた場所や高さまで襲い、教員や支店長の判断の遅れや誤りが悲劇を招いた。同支店員の長男(享年25)を亡くした田村孝行さんは先日、浜松市での講演で「(従業員の)命を預かり管理する者の責務は大きい」と訴えた。 責任者不在時の発災など起こり得る事態を見据え、実効性のある避難計画を作っておくことは、南海トラフ地震に備える静岡
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記者コラム「清流」 熱海は「常春」風土
「真冬を知らざる常春(とこはる)熱海」 熱海ゆかりの文豪、坪内逍遥が作詞した熱海市歌はこの一節から始まる。逍遥の命日に合わせて営まれた記念祭で、市歌を初めて聴いた。「常春熱海」という表現が妙に腹落ちした。 と言うのも、昨夏に熱海に赴任後、初となる冬の生活だが、季節感があまりない。秋口に熱海梅園の早咲き梅が次々と開花し、同じく早咲きの「あたみ桜」は年末から年明けにかけて見事に咲き誇った。秋冬を一気に通り越して、春を迎えた感覚に陥った。 仕事柄、四季の移ろいに敏感に反応しなければならない。だが、熱海は真冬を感じさせない不思議な風土が根付き、いい意味で調子が狂う。常春熱海と書いた逍遥も同じ季
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記者コラム「清流」 撮影の大敵
一瞬の表情を切り取るため、緊張感と集中力が求められるスポーツやイベントの撮影現場。そんな集中をかき乱す大敵が今年もやってきた。目が赤く充血してかすみ、鼻水とくしゃみが止まらない。 祭りやスポーツの撮影では屋外にいる時間が長く、花粉を浴び続ける。その上、マスクを着用してカメラを構えると、呼吸でファインダーが曇ってしまう。今年は桜や梅の開花時期が早い傾向があることに気づいていたのに、花粉が飛散する前に早めの対策ができなかったことを反省した。 ネットでは、花粉症で打率が下がる野球選手の話題を見かけた。撮影も苦労するが、運動選手など被写体の方がつらいのかもしれないと思うと甘えたことは言っていられ
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記者コラム「清流」 核廃絶の理想と現実
「水平線に浮かぶ太陽とは違う真っ赤な物体」「地響きのような爆音」「降り注ぐ白い粉」。70年前に焼津港所属のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が太平洋・ビキニ環礁で遭遇した光景だ。体験談を聞きながら、焼津から遠く離れた洋上での出来事を想像すると、恐怖心で頭がいっぱいになった。 米国がマーシャル諸島で実施した水爆実験。洋上で操業中の乗組員もさることながら、島々に住む多くの人々も健康被害に苦しんだ。 こんな世にも恐ろしい凶器は一刻も早くなくすべきと感じる。でも、核は拡散している。保有国全てが一斉に捨ててしまえば解決に近づくが、残念ながら世界は、とりわけ日本周辺は善意の国ばかりではない。理想を求め
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記者コラム「清流」 新聞記者沼
「個人の情熱から文化が生まれ産業になる」。9、10日に沼津市であるイベント「ぬまりびと博覧会」の主催者の言葉にビビッときた。その心意気、熱すぎる。イベントは「レスラーマスク沼」「鯛(たい)の鯛沼」など、それぞれの関心分野に没頭する(沼にはまった)人が集い、活動内容や成果を披露する。とても興味深い。 時々、なぜ新聞記者になったかと逆質問される。採用面接で使えそうな答えも用意しているが、最大の理由は、情熱を持っている人と話せるから。積極的に取材に応じてくれる人は前向きで明るい。取材しながら元気をもらえる。 個人の情熱がまちを彩り明日を楽しくする。そんな信念を持ち、これからも出会いを楽しみたい
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記者コラム「清流」 更生願うまなざし
「反省の気持ちを忘れないで」「出所後、周囲の目は厳しいが、地道に仕事を続けてほしい」。裁判員裁判では判決宣告後、被告に寄せた裁判員らの意見が披露されることがある。静岡地裁浜松支部でこのほど開かれた強盗致傷罪などに問われた被告の裁判でも、裁判長が更生を期待するメッセージを読み上げた。 実刑判決を受けた20代半ばの男性には多くの逮捕歴があり、少年院にも複数回入っていた。それでも被告人質問では、過去の行動を後悔し、被害者や周囲の人に謝罪する言葉を口にした。時折涙声になる姿からは、「今度こそまともな大人になりたい」という強い決意が感じられた。 判決を聞く被告の様子を裁判員たちがじっと見つめていた
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記者コラム「清流」 勝負師は普通の高校生
藤枝市青南町の国内最大級のイチゴ農園「ジャパン・ベリー」が、全日本高校女子サッカー選手権大会で連覇を果たした藤枝順心高の選手に、“ご褒美”としてイチゴ狩りと食べ放題をプレゼントした。 ピッチ上は勝負師の顔を見せる選手だが、「映え」を意識してイチゴを手に写真撮影する姿はごく普通の女子高生。ハウス内に生息するミツバチにおびえる様子もほほ笑ましく感じた。 食べ放題は同校が選手権で優勝するたびに企画されている。選手によると、連覇が決まった直後のロッカールームで「やったー!イチゴが食べられる」と話題に上がったという。重圧を背負いつつも、それだけモチベーションになっていたのだ
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記者コラム「清流」 金高騰の裏にある葛藤
金の高騰を受け時価が上がる、土肥金山(伊豆市)の世界最大の金塊。27億円を突破して以降、毎日のように金価格をチェックしてしまう。休日は価格が変動しないため週明けが楽しみで、2月は推移も好調のようだ。 ただ忘れてはならないのは、金相場上昇の裏には円安や社会情勢の不安定などの要素もあるということ。新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の地政学的リスクなどが意識された可能性もある。注目しつつも、これでは素直に喜べない。 情勢の安定を望みつつも、大台の30億円が待ち遠しいという葛藤。巨大金塊の時価や注目度は、昨今の世相を示すバロメーターになっている。輝き続ける黄金が世の中の不安
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記者コラム「清流」 映画ゴジラのヒット
米アカデミー賞の視覚効果部門にノミネートされた映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」。浜名湖や遠州灘でロケをした縁で実現したボートレース浜名湖でのトークショーで、米国での大ヒットへの手応えを問われたプロデューサーの言葉が印象に残っている。 米国の観客の反応について「主人公の敷島に感情移入してくれている」として、戦争を経験した元兵士のPTSDが米国の人々にとっては身近な問題だということに言及した。終戦前後の日本を舞台にした物語が海外で共感されていることに驚くと同時に、自分自身が「戦争は過去のもの」という前提で映画を見ていた感覚にも気付かされた。 当日の記事は浜松ロケの撮影秘話で構成したため
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記者コラム「清流」 酔わなくても幸せ
ノンアルコールドリンクの印象が覆された。ふじのくに茶の都ミュージアム(島田市)で開かれたセミナーで、ノンアルコール飲料専門商社の社長が紹介した緑茶や紅茶のスパークリングティーを飲み比べた時のことだ。味わいや香りだけでなく、ワインのような品種や産地にまつわる物語にも大きな魅力を感じた。 コロナ禍を経て、飲酒の習慣が大きく変わった人も多いと思う。厚生労働省は飲酒のガイドラインをまとめるなど健康志向はより一層高まっている。一方で、運転や妊娠などの理由で飲みたくても飲めなかった経験がある人も多いはず。 お酒に代わり、料理とのペアリングを楽しみ、次の一口につなげてくれる存在は食事のシーンを豊かにし
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記者コラム「清流」 本気のまくら投げ
かつて修学旅行の隠れた一大イベントだったまくら投げ遊びを競技化した、全日本まくら投げ大会が今年も伊東市で開かれた。一時はコロナ禍で中止され、昨年に再開。今大会には全国各地から40チーム356人が集い、2日間で88試合の熱戦を繰り広げた。 旧伊東高城ケ崎分校(伊豆伊東高)の生徒の考案を基に開催している、ユニークな大会だ。浴衣を着た選手が畳のコートで枕をぶつけ合い、掛け布団を広げて味方を守る。布団に寝た状態で試合が始まり、敵陣の枕を回収できる「先生が来たぞ」のかけ声が響く。 今回は18チームが初参加。本気で競い合い、仲間と一緒に喜び、悔しがる姿が印象的だった。大会は温泉に恵まれた観光地・伊東
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記者コラム「清流」 答え合わせ
「キリンの首は本当に長かった」「ライオンの顔は怖くて、パンダは抱いたら温かかった」。児童が本物そっくりのぬいぐるみをなでながら、そう言った。 浜松市中央区の静岡県立視覚特別支援学校に県内初の“動物園”が開園した。視覚に障害がある児童に多様な動物に触れるきっかけを作ろうと、埼玉県の男性が動物のぬいぐるみ33体を寄贈し、展示した。児童らは開園とともに、駆け出したり、教員の手を引っ張ったりして動物のもとへと向かった。「これはなに。熊か、いや違う」。足につけられた点字シートと体を行ったり来たりして、興奮している様子が印象に残る。 “動物”の体や表情
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記者コラム「清流」 「みらい2」進水楽しみ
清水港に基地誘致の機運がある海洋研究開発機構(JAMSTEC)の北極域研究船の名前が先ごろ決まった。「参考まで」とあっさりしたメールで知らせてきたのは船名の一般公募に応じた地元公務員。オーロラを表す「極光」の命名は幻に終わった。 2026年度の完成に向け建造中の船の名は「みらい2」に決まった。清水にもよく来る原子力船「むつ」を改造した研究船「みらい」から引き継いだ。7075件の応募のうち一定数の応募があったなどとリリース文にある。 みらい2は基地誘致を進める全国の自治体間で引っ張りだこ状態。さまざまな“バランス感覚”も求められたのかも、と勝手に想像する。一方で搭載
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記者コラム「清流」 赤い松
湖西市内で新居弁天地区を中心に深刻な松枯れが進んでいる。主な原因はカミキリ虫が媒介する線虫で、5~6月に幼虫が羽化すると広範囲に被害が拡大するため、市は本年度の補正予算で枯れ松の伐採や予防剤注入の費用を計上して対策に取りかかっている。 マツは防風や砂防の機能と同時に、旧東海道宿場町や湖岸の景観をつくる地域資源にもなっている。赤く枯れた松は伐採する以外ないというが、伐採に1本数十万円の費用がかかる中、私有地では所有者が自ら処分する必要がある。特に枯れ松が多い東京大演習林は市の伐採対象にならず、今後の影響が懸念される。 三保松原では松枯れの改善に何年もの期間がかかった。湖西でも長い戦いが予想
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記者コラム「清流」 ファンと沼津の関係性
沼津市のあわしまマリンパーク閉館が決まった後、印象に残ったのが30代前半の来場者の男性だ。最初は人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」ファンとして訪れたが、今回は妻と来たという。 同作と連携してまちづくりを続ける沼津あげつち商店街によると、作品の絵柄入り婚姻届で結婚したカップルは、昨年12月時点で300組近くに達した。 JR沼津駅南口の公式カフェは2月、再開発に伴い閉店した。放送開始から7年。移住したり結婚して再訪したりと、放送開始時に若者だったファンのライフステージは、沼津の風景とともに変化している。同市の観光施策は“脱アニメ”にかじを切りつつあるが、ファン
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記者コラム「清流」 一流選手のふるまい
中国を追い詰め、53年ぶりの世界一に迫った卓球の世界選手権で伊藤美誠選手(磐田市出身)のベンチでの姿が注目された。仲間に的確なアドバイスを送る姿は“監督”と話題になった。 高速ラリーの中で戦術を構築する卓球は「チェスをしながら100メートル走をする競技」と称される。過去に伊藤選手から「頭も体もくたくた」という言葉を何度も聞いた。ベンチに座りながらも頭をフル回転させていたのは想像に難くない。 集中力を保つためか、立ち上がって、声を上げる場面は少なかった。だが、その様子が一部ネット上で批判され、本人も交流サイト(SNS)で「私らしい応援の仕方」と胸中を吐露せざるを得な
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記者コラム「清流」 名刺代わりのSNS
先日、名刺交換を申し出ると「紙の名刺は持っていないんです」と言われ、代わりに1枚のカードを示された。言われるがままにスマホを近づけると、五つのSNSや名刺アプリが表示され、目を丸くした。 SNSは情報収集ツールとして使用し、発信はほぼしていない。表示されたSNSにアクセスしてつながりを持ったが、どこの誰か先方は判別がつくのか疑問だった。同時に、稼働していないSNSを交換する恥ずかしさも少し感じた。 SNSを活用している人の情報は豊富だ。所属や肩書、連絡先といった名刺に記載された内容以上に相手を知ることができる。 自身をSNSで発信する方法を真剣に考えないといけない時代に入ったのだろうか
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記者コラム「清流」 少しの勇気
休日のこと。外出先で高齢男性が倒れる場面に遭遇した。幸い大事に至らなかったが、周囲の人が男性に声をかけたり、介抱したりしている中、自分は頭が真っ白になり動けなかった。 話は変わり、新聞記者は警察署で特殊詐欺未然防止の感謝状贈呈式を取材する機会がある。最近取材した中で一番印象に残っているのは、スーパーで詐欺を防いだ2人の女性。たまたまその場に居合わせ、早く振り込まなければと焦る被害者の高齢女性を根気よく説得し続けて被害を食い止めたという。 「勘違いかもとも思ったけど、声をかけて良かった」。当時を振り返る2人の表情は誇らしげに見えた。とっさの場面で動くには思い切りが必要だ。そういう場面に居合
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記者コラム「清流」 懐かしい光景
佐久間ダム(浜松市天竜区佐久間町)建設工事の殉職者96人の霊を慰める「竜神の舞」が、藤枝市で初めて披露された。水窪支局時代に取材したことを思い出す。始まりと同時に鳴り出す爆竹の音、白煙で演出される幻想的な雰囲気、お世話になった地元保存会の方々。どれも懐かしい光景だった。 生き生きと勇壮に舞う“竜神”を見つめていると、頭の中に佐久間ダムの景色が浮かんだ。爆竹の音で幼い子が驚いて泣き出すのもおなじみ。6年ぶりに保存会員と再会して会話し、変わらない顔つき、声、しぐさに自然と心が和んだ。 佐久間町をはじめ、浜松市天竜区は自分に中山間地域の魅力を教えてくれた思い出の土地。だ
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記者コラム「清流」 地方から地方へ
沼津市は先日、人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のファンを対象に絞った移住相談会を“聖地”の淡島ホテルで開いた。驚いたのは、参加者の居住地。栃木県や福島県、遠くは島根県と地方からの希望者が多かったのだ。 県東部への「移住」というと、つい距離の近い東京や神奈川からを想定しがち。だが、よく考えれば、地方から地方への移住は、移住先に愛着さえあれば、むしろ東京からよりも生活様式を大きく変えずに済み、ハードルが低いのかもしれない。車が必要なのは変わらないし、職場の賃金や物価に大きな変化はない。私自身、発想の転換が必要だったと感じた。 相談会は、移住施策と関係ない部署
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記者コラム「清流」 学校がなくなっても
浜松市天竜区佐久間町の浦川小は2024年度末で閉校する。最盛期は約900人の児童が通っていた学校が、創立151年の歴史をもって幕を閉じる。少子高齢化が急速に進む北遠地域にとって、子どもが集まる学校の存在は大きく、取材で何度か訪れた私も寂しく感じる。 浦川小の児童は25年度から同町の佐久間小へ通う。通学バスの計画作成や行事の見直しなど、話し合いが必要な要素は多い。浦川小の学習発表会で披露する「浦川歌舞伎」や地域学習など、伝統文化の継承の在り方も議論が求められる。 両校は児童の合流を見据え、本年度から合同授業に取り組んでいる。子どもたちの仲は良く、授業も休み時間も笑顔を見せていた。学校がなく
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記者コラム「清流」 「失敗」は繰り返される
「行政の失敗」。この言葉が以前から引っかかっていた。熱海市で2021年に起きた盛り土崩落に伴う土石流を巡り、県の対応を十分に検証しなかった第三者委員会が総括した文言だ。総括を受けて記者会見した当時の難波喬司副知事(現静岡市長)は「失敗」を認めたものの、法的な不作為はないと強調した。 第三者委の意図は不明だが、「失敗は成功のもと」とミスを正当化する際にも使われ、再発防止の意味が薄まる言葉の引用に違和感を持った。責任を問われない行政職員に緊張感は生まれず、盛り土災害の「失敗」は繰り返されている。 責任を全面的に認めた心からの謝罪には、遺族や被災者のストレスを和らげる効果もある。法的責任を認め
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記者コラム「清流」 同じ悲劇はもう二度と
わが子が理不尽に殺害され、突然、目の前から居なくなる現実を受け入れられるだろうか。普通であれば向き合うことさえ難しい。そんな状況下で、全国各地で150回以上も講演活動を続ける人に出会った。 2001年、大阪教育大付属池田小で起きた無差別殺傷事件の被害者遺族、本郷紀宏さん(59)の講演会を取材した。当時7歳の長女優希さんが教室で犯人に刃物で刺され、助けを求めて廊下を39メートルも歩き、絶命した事実を知った。 講演後、つらく、悲しい過去をなぜ語れるのか本郷さんに尋ねた。「娘が懸命に生きた証しを残したい。同じ思いを誰かにさせたくない」。本郷さんの真っすぐなまなざしと思いに強く共感した。二度と同
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記者コラム「清流」 未来の災害に備えて
「あなたが住んでいる場所は海抜何メートルですか?」。東日本大震災の教訓を伝える「語り部」の男性の問いに、恥ずかしながら答えられなかった。南海トラフ巨大地震が想定される地域に住むのに、「海から遠いから大丈夫」とどこか人ごとだったことを猛省した。 発災当時は中学生。それから13年を前に、初めて被災地を訪れた。宮城県の大川小で見た、天井が剝がれ落ちた教室や支柱ごと倒壊した渡り廊下―。数字で表れる津波の高さ以上の怖さを肌で感じ、失われたものの大きさや命の尊さについて改めて考えさせられた。 3・11の教訓を未来の災害に備える知識に変えて、一人一人に自分事として捉えてもらえるような報道が必要だと感じ
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記者コラム「清流」 現金払いで「負担」実感
よく行く食品スーパーで突然、電子決済ができなくなった。どうもクレジットカードに「エラー」があるらしい。慌ててカード会社の窓口に電話をかけた。 調べてもらうと、要は自分の不手際と分かった。銀行口座の残高不足が原因で、カードが一時的に使えなくなっていたのだった。 しばらくは現金で支払うことにした。すると、財布の中身が見る見る減っていく。電子マネーの便利さに知らぬ間に慣れきって、「お金を使う」感覚が薄れていたと思い知った。 昨年の値上げラッシュに続き、物価高は現在進行形だ。静岡市内の店でも、以前に比べ値札がはっきり変わった商品が少なくない。実入りが増えないまま対抗するには、まずは財布のひもを
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記者コラム「清流」 ヘルメットに気軽さを
年始の実家で80代の祖母と母が口論になった。自転車で転倒し骨折した過去があり、乗せたくない母と、まだ乗りたい祖母の主張は折り合わなかった。ヘルメットも話題になったが、祖母は拒んだ。理由は「ダサいから」。一理ある。スポーティーな見た目は、ゆっくりと走るママチャリ高齢者に似合わない。 各自治体が購入補助金を始めているが、わが家は価格以上にかぶろうと思える理由と契機がほしい。2月上旬に行われた富士宮駅伝で、警察官チームがヘルメットをかぶって走り、沿道の注目を集めた。着用は努力義務だと堅く広報するよりも、親近感を抱いた観客は多かっただろう。 調べれば、帽子のようなかわいらしい仕様の商品も売ってい
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記者コラム「清流」 新施設 地元発信に期待
サッカーJリーグ開幕を控えた2月中旬、各地で新スタジアムがお披露目された。J1サンフレッチェ広島の本拠地となるエディオンピースウイング広島と、J3ツエーゲン金沢の金沢ゴーゴーカレースタジアムは市街地に近く、鉄道駅からも徒歩圏内。観客席とピッチが近く「いつか行きたい」と思った。 浜松市に目を向ければ、県が遠州灘海浜公園篠原地区(浜松市中央区)に整備する新野球場や、老朽化が進む四ツ池公園運動施設(同区)の同市の再整備について、さまざまな意見が飛び交ったままだ。 利便性や規模感などすべてを満たす施設の建設は限られた予算内では困難だとしても、例えば充実した音響設備や、光技術による最先端設備など、
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記者コラム「清流」 夜間中学の「学び」
静岡市の元教員が運営する民間の自主夜間中学「しずおか自主夜間教室」に10歳の娘がお世話になっている。子どもからお年寄りまで利用者とスタッフがいて、毎回交流している。 記事は夜間中学を「学び直しの場」と表すことが多いけれど、実際利用者になると活動は多彩。教える、教わるという間柄よりも対等で、まさに「社会教育の場」。娘も帰り道「お姉さんが高校の内申点のことを教えてくれた」「おばさんと百人一首をやる約束をした」などと報告する。何の問題を解いたかより、丁寧に接してもらったことの方が印象に残っているのだ。 勉強する場所は各所にあるけれど、優しいまなざしや尊重する姿勢など人生に欠かせない「学び」を授
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記者コラム「清流」 楽しみな今後の「決断」
取材中に何度か出てきた「決断」という言葉が強く印象に残った。昨季限りの現役引退を表明したサッカー元日本代表FW高原直泰さん(44)が地元の三島市役所に来た時のこと。言葉の裏に、強い覚悟や信念を持ち夢を実現してきた自負があると感じたからだ。 学生時代から第一線で戦い、数々の輝かしい実績を残してきた高原さん。現役時代の思い出を記者団に尋ねられた際「子どもの時から描いてきたことをかなえられたのが一番」と総括した。 自ら創設した沖縄SVの経営や沖縄の地域活性化、コーヒー栽培への思い。今後の取り組みを語る姿は生き生きとしていた。取材の最後に高原さんは「これからの高原も楽しみにしてほしい」と締めた。
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記者コラム「清流」 「迅速な開票」責任感を
森町長選の開票結果発表は町選挙管理委員会の想定より約40分遅れ、開票開始から2時間超を要した。選管事務局は「念入りに確認した結果」と説明した。 正確性は大前提だが、公職選挙法では、「迅速な開票」が求められている。開票当日、最終確認を待つ票の束が目の前で滞る状況で書記長と選挙長が談笑する場面があった。とうに目標時間は過ぎていた。候補者や有権者にできる限り早く結果を伝えようという責任感を持って作業していただろうか。開票現場に居合わせていた者から見れば、緊張感が欠けていたと受け取らざるを得ない。 8年前の町長選は三つどもえの激戦だったが、約1時間20分で開票を終えている。目標時刻を遅らせるなど
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記者コラム「清流」 カモシカ保護 思い複雑
15日朝、島田市の市街地でニホンカモシカが出没した。急いで駆けつけると、島田商高のすぐ横にある解体工事現場に人だかりができていた。視線の先には、がれきの上で悠然とたたずむカモシカの姿があった。 なぜ、こんな場所に。島田駅の北東約1.4キロの市中心部。異様さが際立った。キョロキョロと周囲を見渡し、じっとその場を動かずにいたが、突然歩き出して市街地に移動すると、1時間半の逃走劇の末に島田署員らに保護された。 川根本町の猟師殿岡邦吉さんは「カモシカの数が増えていると猟師の間で話題になっている。国の天然記念物で、捕獲できないのが原因」と話す。シカやイノシシと同様に農作物被害も見られるという。今回
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記者コラム「清流」 可能性広げる部活動に
裾野市で中学校の部活動指導を地元のスポーツや文化団体に委ねる「地域移行」の実証が始まった。急速な少子化を受け、既に複数の学校で単独での活動が難しくなっているという。 部活動のあり方は人口減や過疎化に直面する多くの自治体の共通課題だ。小規模校では選択肢が限られ、「希望する部活がない」との声が絶えない。伊豆半島の支局勤務時代、個人種目で大会に出場できる運動部しかないため、一部の生徒は部活動に事実上、参加していない実例も目にした。 運動の苦手な生徒も楽器を吹いたり、絵を描いたりできる環境があれば、将来の可能性が広がるのではないか。地域移行の大きな目的に部活動の選択肢確保がある。すべての要望に沿
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記者コラム「清流」 故郷の味は働く源
スズキがインド人従業員の働く環境を整えるため、浜松市内の飲食企業と組んで社食で本格的なインドベジタリアン(菜食主義者)メニューの提供を始めた。アッサム州出身の20代の男性社員は、従来はメニューによっては肉を取り除いてもらったといい、故郷に近い味に表情を緩めていた。 外国出身社員にとって、自国に準ずる食の充実は心強いだろう。約40年前にインドに進出した高い経験値を持ち、海外出身の人材活用を進めるスズキならではの気づきが込められている。一連の開発メニューは冷凍パックで全国に発送でき、外国人を採用する全国企業への“横展開”を狙う。 IT分野などインドの高度人材は世界的に
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記者コラム「清流」 “戦場”での心遣い
「囲み」や「ぶら下がり」と呼ばれるインタビュー取材では、対象を追い、立ち位置を争うカメラマンや記者で戦場と化す。この1年、何かと騒動の多い静岡県庁での取材で先日、久々にすてきな光景を目にした。 リニア中央新幹線問題を巡る国土交通省鉄道局長と知事の面会は、予定より30分余り延び、待機する取材陣の雰囲気は殺伐とした。 取材陣の後方で、大きなおなかを抱えて待つ女性記者に、県職員がさりげなく丸椅子を差し出した。記者は助かったという表情で座って発言に耳を傾け、終了後に職員に頭を下げた。 会見での知事と記者の激しい応酬は時に対立に映る。ただ、県民に情報を届ける共同作業の側面もある。県に懐疑的な思い
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記者コラム「清流」 中学生は立派な市民
中学生たちに謝りたい。記者は中学時代、地域との関わりが薄く、学校という範囲内で小さくまとまっていた。自身の経験から「中学生はまだまだ子ども。社会を動かすには早い」と心のどこかで思っていた。最近、この意識が覆された。 御殿場市などの中学生によるJR御殿場駅前の活性化案の発表会では、商業ビル内に若者が集うカフェを設ける案が披露され、ニーズや客を呼び込む仕組み、もうけ方まで計画が練られていた。「理想と実現性をてんびんにかけた」とのコメントに驚いた。御殿場中の生徒が地元の魅力をまとめた動画を見て、御殿場のPR分野でも十分に活躍できる能力があると感じた。 ある中学校長の「中学生を市政にどう参画させ
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記者コラム「清流」 試されている本気度
御前崎市が財政状況悪化に対応するため、4年間で約12億4000万円の財源確保策を示した。不測の事態に備えて積み立てていた財政調整基金残高は、この8年間で急速に減少した。安定した財政運営を取り戻すことが急務になっている。 ただ、財源確保の実行は容易でない。歳出削減案は市民プールの民営化や総合病院の経営改革など大がかりな事業ばかり。歳入増加策の柱には、ふるさと納税額を27年度までに23年度比4倍の2億円に伸ばす目標を据えた。何よりも市民の理解と協力が欠かせない。 ふるさと納税を増やすには、市の発信力強化が必要だ。まずはトップの市長が取り組む姿勢を明示し、日本各地を回って市の特産品をPRすべき
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記者コラム「清流」 「○○離れ」仲間
「昭和の中頃までは手道具を持ってお客さんの家に行くスタイルだったんです」とある畳職人は言う。 朝から夕方まで家の中で張り替えや修繕をするから、学校から帰ってきた子どもは興味深そうに様子をのぞき込む。ところが機械化が進むと畳を工場に持ち帰って作業をするのが定着し、子どもの目につかなくなった―とのこと。「手仕事が畳屋としての誇り」と話すその方は小学校の社会科見学を積極的に受け入れたり、コンテストに出たりして、職人技の向上と認知度拡大に努めている。 畳離れの背景は生活様式や住宅の変化にあると思っていたが、そうした外的要因に悲観的にならず、自分にできることに前向きに取り組む姿は印象的だった。「○
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記者コラム「清流」 教壇に立って
2月上旬、沼津市内の中学校で職業講話をした。学生のころは講師として教壇に立つことなど考えていなかった。教える側として立ったわけだが、終わってみると、記者の方が得るものが大きかったと思う。 記者の経歴や仕事内容、やりがいをスライドにまとめた。飽きないよう、途中で質問を受け付け、クイズやペア活動を混ぜた。 徳島が故郷の記者は大学進学を機に静岡に来た。教育学部で、教育実習をしていたころは先生になる気満々だった。実際、小学校から高校までの教員免許をそれぞれ取得している。 「なんで記者に?」。多くの生徒から尋ねられた。答えるうちに、大切にしないといけない、芯のようなものを思い出すことができた。「
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記者コラム「清流」 音楽で癒やす病院
中東遠総合医療センターで開かれたコンサートが素晴らしかった。奏者の真心がまっすぐ伝わる演奏で、心に響いた。500床の基幹病院とは思えない家庭的な雰囲気も良かった。大勢の病院利用者と一緒に耳を傾けて拍手を送り、不思議な一体感を味わった。 出演したのは医師や事務職員、入院中のがん患者ら。希望に満ちた旋律や力強い歌声に目頭を押さえていた聴衆は多く、人を癒やす手段が医療だけではないことを思い知った。病院の存在は地域の誇りだ。 だからこそ、昨夏の医師逮捕の不祥事を残念に思う。ドクターカー導入などの取材で院長に話を聞くたび、強い使命感と将来を直視した改革意欲に感銘を受けてきた。不祥事はさらなる飛躍を
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記者コラム「清流」 プロ球団で「再び夢を」
経験者なら一度は憧れたこともあるだろうプロ野球。その世界に挑む球団が静岡に誕生した。くふうハヤテベンチャーズ静岡にはNPBを目指す若者と、復帰を期すNPB経験者が全国から集結した。 アマチュア最高峰の社会人野球はチーム数が少なく、高校や大学を卒業後に本格的に競技を継続する選手は一握り。独立リーグに進む選手も増えたが、志半ばでユニホームを脱ぐ人は少なくないと推測する。 2軍ウエスタン・リーグに参入した新球団は年間約140試合をNPB球団と戦う。上を目指すには、この上ないアピールの場だ。「もう一度夢を追いかけたい」。そんな思いで多くの選手が静岡に来て野球を続けてくれたらと願う。魅力ある集団に
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記者コラム「清流」 伊豆も人ごとではない
2月上旬、西伊豆町仁科の浮島地区の住民が自主避難所運営訓練に臨んだ。地震による土砂崩れで地区が孤立した状況を想定した。浮島は海と山に囲まれ、道路が寸断される可能性は十分にある。地区のほぼ全世帯から約50人が参加し、防災意識の高さを感じた。 別の機会に、能登半島地震を受けて石川県穴水町の支援に向かった西伊豆町職員の話を聞いた。能登半島では数少ない主要道が陥没したり、隆起したりして渋滞が発生。現地へのアクセスに時間を要したという。 伊豆半島も主要道が限られ、能登半島と同じような条件だ。訓練で講師を務めた町災害対応アドバイザーの松山文紀さんは能登半島地震支援にも携わり、「伊豆も人ごとではない」
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記者コラム「清流」 「まち」の風景に若者を
「よそ者」「若者」「ばか者」。この三つの「者」はイノベーションを起こし地域活性化を担う人材としてよく使われる。その一つの「若者」が数年後、衰退する浜松市中心街周辺に集うことになった。今から期待せずにはいられない。 学校法人常葉大学が常葉大浜松キャンパス(浜名区)をJR浜松駅南口近接地(中央区)に移転すると発表した。現在の学生数として1640人。同法人や市としても、学生の利便性向上や若者の県外流出抑止、中心市街地の活性化などの効果を見込んでいる。 出身者ならうなずいてくれるかもしれないが、数十年前は中心街を「まち」と表現し、郊外からバスで行くのが楽しみだった。当時のキラキラとした思い出は今
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記者コラム「清流」 助け合い精神大切に
以前、休日に家族と出かけて藤枝市内を車で走行中、道路の真ん中で停車していた車を見つけた。追い越そうとした時、高齢女性がどこか不安そうな表情で周辺をうろうろしていた。危ないので声をかけてみると、どうやら車が故障して動かなくなってしまったようだ。 自分の車を安全な場所に止め、妻と一緒に女性のもとに駆け寄った。確かにアクセルを踏んでも、エンジンをかけ直しても動かない。女性は心細かったのか、体が震えていた。 レッカーを手配後、女性は妻との会話で少しずつ落ち着きを取り戻した。高齢者に限らず、不慮の事故や突然の故障に見舞われた当事者はどうしても困惑してしまうだろう。そんな時に少しでも異変を感じ取り、
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記者コラム「清流」 住宅耐震化 周知啓発を
35%の住宅が巨大地震で倒壊の恐れがある―。現行の耐震基準が導入されていない1980年以前に建てられた熱海市内の住宅の割合を知り、正直驚いた。人口1万5000人以上の県内市町のうち、下田市に次いでワースト2だという。 能登半島地震では、住宅の倒壊で多くの命が犠牲になった。家の下敷きになった場合、津波や火事から逃げられない。まずは地震の揺れに耐える住宅を確保することが肝心だ。住宅耐震化は幸いにも、行政の支援制度が用意されている。 ところが、能登半島地震後に行われた熱海市長の定例会見で、住宅耐震化の周知啓発はなかった。今も特段の情報発信はない。熱海土石流を経験し、市民の生命と財産を守ることを
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記者コラム「清流」 月を目指して日進月歩
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型探査機「SLIM(スリム)」が月面に着陸した。エンジンを上向きにした逆立ちの状態だったものの、目的地への誤差100メートル以内のピンポイント着陸に成功。着陸挙動の解析などで協力した静岡大工学部の能見公博教授も「日本の最先端技術を実行した」とたたえた。 静大の超小型人工衛星の開発を主導する能見教授はJAXAの前身の研究所で研究員をしていた20年以上前から、月面探査計画に携わる。「大学でもいずれは月面探査を」と夢を語る。 各国が月を目指すのは有人活動に欠かせない水資源の獲得を目指しているからだ。SLIMにより、日本は世界5カ国目の月面着陸成功となった。技
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記者コラム「清流」 道のりは長くても
とある子育てイベントに出演した男性が絵本を開いて「お母さんより、お姉さんのパンツがいいなあ」と一言。ほかの出演者からたしなめられてはいたが、幼い子どもたちが参加する場で、ステージに立つ側からそんな発言が飛び出すことに頭が痛くなった。 それでも社会の変化を感じたのは、男性の発言に保護者からは笑い声が漏れ…なかった点。別で取材した地元団体による絵本の寄贈では、性教育の入り口として人気を集める絵本が贈られた。課題はまだ山積みだが、“性”を巡る社会の変化の波は足元まで届いているのだと希望が持てた。 子どもたちがこれから育てていくまだまっさらな価値観に、大人が
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記者コラム「清流」 未来の横綱に
浜松市中央区の聖隷クリストファー大付属クリストファーこども園で、大相撲伊勢ケ浜部屋の翠富士、聖富士らを招いた交流会が開かれた。園児が力士に本気で勝負を挑む姿に、ほほ笑ましい気持ちになった。 同園は2016年から相撲に関する探究活動に取り組んでいる。力士との交流は4回目。昼食では、21年にオンラインで交流した際に園児が提案し、翠富士が選んだ「トマトミルクちゃんこ」を、年長園児と力士が一緒に食べたという。 昨年は熱海富士が2場所連続で優勝争いを演じたほか、ことしの初場所では浜松市出身の鈴ノ富士が前相撲に臨むなど、郷土力士の活躍が期待されている。園児の相撲熱もさらに高まるだろう。力士と対決した
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記者コラム「清流」 今年の冬景色
今年は厳しい冷え込みが少なく、過ごしやすい冬。撮影記録を見返しても冬の寒さを表現するような写真はあまり見当たらない。 1年で一番厳しく冷え込むとされる二十四節気の大寒の前日に、伊豆市湯ケ島の八丁池を訪れた。池が凍って幻想的な光景を見せる時期と聞いていたが、ほんの一部の凍結のみだった。同行してもらったガイドによると、この時期にしては珍しいとの話だった。冷え込む朝の海に発生するとされる気嵐(けあらし)も、まだ見ることができていない。早咲きの桜が咲き始めたなどと連絡も入り、寒さより一足早い春を感じる日もある。 冬にしては物足りなさを感じる時もあるが、それも自然の面白さ。路面凍結による悲惨な交通
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記者コラム「清流」 レッカー高額請求注意
事故や故障で車が突然動かせなくなった経験は多くの人にあるはずだ。そんな時、スマホで慌てて探したレッカー業者に依頼したら現場で数十万円単位の高額を請求された―という被害相談が2022年春ごろから静岡県内で確認され始めた。 「まずはJAFや契約する損害保険会社に電話連絡を」が一般的と思っていたが、最近は違うらしい。スマホ操作に慣れた若年層、免許取りたての人も多く被害に遭っていると知り、「心理につけ込んだ卑劣な手口」との怒りが湧いた。 「業界最安値」「基本出張料0円」「最短5分」。ネット上にこうした文言を表示して誘引する手口は業界を問わずに存在するが、「上位表示なので信用できる」とは限らない。
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記者コラム「清流」 下を向いて歩こう
季節ごとの美しい花々を楽しめる県西部だが、冬に見頃となる植物はあまりない。少しさみしい気持ちになっていると、「地面は今が見頃ですよ」と、浜松市の静岡県立森林公園で開催中の企画展で教えてもらった。 公園内の舗装をしていない坂道や歩道は「鴨江礫(れき)層」という約30万年前の地層だという。木々が茂る道を歩いてみると、冬は植物が少なく、地面の様子は観察しやすい。水の流れで角が取れた丸い石はかつて大きな川が流れていた痕跡で、地層に埋まる石の並ぶ向きから水の流れていた方向まで読み取れる。何げなく散策する足元に別の世界があると知った。 下を向いて地面を見ながら歩くと、雨上がりの土からは植物が芽を出し
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記者コラム「清流」 魚料理に心動く
年間を通じ、さまざまな海産物が水揚げされる伊東の港。普段、利用する機会の多い地元のスーパーには直送をうたう鮮魚の切り身や刺し身が並び、見ているだけでも楽しい。もちろん味は言わずもがな。 先日、伊東市の高校の定時制生徒が地魚のサバをおろして調理する教室を取材した。魚を初めてさばいた参加者の中には、素人とは思えない巧みな包丁さばきを披露する生徒も。教わったばかりの方法を班の仲間に伝え、協力して取り組む姿が印象的だった。 終わりがけに、講師お手製のできたてのつみれ汁をごちそうになった。ふんわりとした、うまみあふれるつみれの食感や味わいに驚いた。自炊ができると自称する筆者だが、魚をおろした経験は
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記者コラム「清流」 力引き出す魔法の言葉
2007年の選抜高校野球大会で常葉菊川を優勝に導き、御殿場西でも監督を務めた森下知幸さんが急逝した。教え子はもちろん県内外の野球人に慕われた。 16年夏の静岡大会で優勝した翌日、監督を辞任し、甲子園での指揮をコーチに託すと発表して世間を騒がせたこともあった。御殿場西着任が大会前に決まっていただけに「職業監督だから」「選手を信じてなかったんじゃないか」などと批判されたがそれは当たらない。ただ世間は甲子園出場という名誉を簡単に手放す理由が理解できなかった。 夏の静岡大会、敗色濃厚の展開でベンチの森下監督は叱るでも鼓舞するでもなくこう言ったという。「あしたから夏休みだな」。選手は肩の力がふっと
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記者コラム「清流」 身近にプロスポーツ
磐田市内の中学2年生約1500人が1月下旬、市の招待でラグビーリーグワン1部・静岡ブルーレヴズのホストゲームを一斉観戦した。レヴズは快勝で中学生の声援に応えた。 特に後半は目の前でレヴズがトライを奪う場面が何度もあり、最初は遠慮がちに応援していた生徒たちも盛り上がりを見せた。細かいルールは知らなくても、選手同士の迫力あるぶつかり合い、スピード感あるパス回しや突破を純粋に楽しんでいる様子がうかがえた。生観戦ならではの魅力を実感できただろう。 スポーツは人生を豊かにする「公共財」とされる。身近に複数のプロスポーツチームがある環境は貴重だ。まちづくりに生かさない手はない。スポーツ資源を「住み続
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記者コラム「清流」 とりあえず富士市
JR富士駅前の居酒屋で、アメリカから来たという青年と会話が弾んだ。「日本といえばマウント・フジ。とりあえずフジという名前の街に降りてみた」とのこと。大淵笹場や岩本山公園などのビュースポットを伝えておいた。 後日、彼から「移動手段が見つからず3日間飲み歩いてたよ」とメールがあった。車移動が主流の富士市では富士駅で降りた観光客が周遊につながりにくい。富士山観光交流ビューローはこうした課題解決へ旅行商品を開発している。自動車学校での教習で外国人に右ハンドルに慣れてもらう。その上でレンタカーを貸し出して周辺の景勝地に出かけてもらうという。 「とりあえずフジという名前の街」。地の利ならぬ&ldqu
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記者コラム「清流」 子の「つぶやきことば」
静岡なかはら幼稚園(静岡市駿河区)は50年もの間、園児が生活の中で発する「つぶやきことば」を保護者と一緒に“採集”している。普段は家庭や園でノートに書き留め、年1回、職員が文集を編集する。 「あぁ もう くたびれちゃった」(3歳11カ月、夕食を食べながら)、「ねるってまほうだね」(4歳9カ月、朝起きたら傷が痛くなくなっていて)―。文集には言葉とその時の状況、年齢が記録され、子ども自身や家族にとって宝物になっているに違いない。 「正直、書き留めるのは結構大変」と保護者の一人は言う。だからこそ「独自にやろうと思っても、きっと続かないので、園に感謝している」そうだ。私自
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記者コラム「清流」 色あせない思い出
実家にある色あせた青色のタオル。子どもの頃から使用していた、なじみのある1枚だ。能登半島地震を受け、ふとその存在を思い出した。年始の帰省時にあらためて手に取ると「奥能登よしが浦 ランプの宿」の文字が確認できた。 石川県珠洲市の一軒宿。能登半島の最北端に位置し、都会の騒がしさとは無縁のゆったりとした時間が流れ、日本海を一望できる創業445年の老舗旅館だ。小学1年までの4年間を金沢市で過ごし、家族で宿泊した記憶が今も色濃く残る。 ただ現在はライフラインの復旧のめどがたたず、休業を余儀なくされている。復興の道のりは平たんではないかもしれないが、再開できる日がくるのを心から願っている。自分にとっ
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記者コラム「清流」 静岡県からやれること
「ここにいて、何か被災者の役に立てるのだろうか」。能登半島地震の現状を映像で見ると心が痛む。伊豆市地域おこし協力隊で石川県出身の奥勇太朗さんに取材し、どこからでもできる支援方法を知った。 伊豆市が行っている「代理寄付」。寄付金は代理自治体を通じて被災自治体に送られる。現地の職員は災害対応に注力できる利点がある。返礼品がないため、寄付したことを実感できるかもしれない。 支援を呼びかけている奥さん。能登地方は伝統行事を大事にする地域だといい「復旧復興が進み、いつか住民が戻ってきてほしい」と思いを寄せている。 どんな状況下でもほかの人を思いやる行動に、私自身も逆に勇気と元気をいただいた。今も
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記者コラム「清流」 「送料無料」の表記
「EC(電子商取引)サイトで送料無料の表示が目立つが、消費者は運送コストの存在に考えを巡らせてほしい」。物流の停滞が懸念される2024年問題が間近に迫る中、県内のある物流企業トップは取材にこう答えた。 「無料」の響きは消費者にとって魅力的だが、モノの移動には当然、輸送費や配送料が発生していて、決してタダではない。無料表記は、物流に対する意識の低下を招くとの指摘もある。消費者庁は昨年末、こうした文言に説明を付けることを通販事業者らに要請した。 県トラック協会の佐野寛会長は、24年問題を「われわれの努力だけでは越えられないハードル」と表現する。物流の危機は全国民に関わる問題。誰もが当事者とし
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記者コラム「清流」 付加価値向上策に注目
経営者らに新年の展望を尋ねる中で「付加価値の向上を目指す」という趣旨の言葉を頻繁に聞いた。人手不足に加え、原材料やエネルギーの高騰といった先が読みにくい環境が背景にあるからこそだと感じた。 マックスバリュ東海の作道政昭社長は、消費者の節約志向が強い中でも選ばれる商品づくりや、地域コミュニティーの場になるような店舗づくりなどを挙げた。浜松ホトニクスの丸野正社長は、高度な技術導入を通じ、今後の拡大を見込む自動運転車のセンサー需要などに備える狙いを語った。経営者は、価値創造を進め、自社を成長させる強い意思を持っている。 個々の企業が躍進すれば新たな取引が増え、新産業創出の下地にもなる。浜松地域
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記者コラム「清流」 なりたい自分
「なりたい自分になる」という式典に自ら足を運ぶ人たちを力強く感じた。LGBTなどの性的少数者が思いを共有する「LGBT成人式」は今年、富士市内の会場に約40人が集まった。成人式といっても年齢は問わず、参加に込めた意味もきっとそれぞれにある。 開催は今年で9年目。新型コロナ禍を経て4年ぶりとなった懇親会は、日頃は袖を通さない晴れ着やスーツの参加者がなりたい自分を体現していた。差別や偏見を排除したひとときに、満足の声は多かった。 社会の変化を聞き出そうと会場を回る中、話ができたのは市外から交流を求めて来場したという数人。そして、会場の外には声を上げていない人がいることも想像した。ただ、あるべ
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記者コラム「清流」 夢を与えた贈り物
米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手が国内の全小学校に贈っているグラブが静岡県内の児童の元にも届いた。「自分も大谷選手のようになりたい」と話し、得意げな表情でキャッチボールを楽しむ子どもたちの目は本当に輝いていた。 サッカー少年だった頃、スポーツ界のスターといえば当時海外リーグで活躍していた中村俊輔さんだった。特に印象深いのは2006年シーズンでイングランドの名門マンチェスター・ユナイテッド相手に決めた伝説のフリーキック。あのプレーに突き動かされ、独特な蹴り方をまねようと何度も練習を重ねたものだ。 大谷選手は寄贈したグラブを「夢を与え、勇気づけるためのシンボル」と表現した。その思いの先に
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記者コラム「清流」 臨機応変
清水町の南中の生徒と、同町と姉妹都市提携を結ぶカナダ・スコーミッシュ市のオンライン交流会を取材した。生徒は複数の班に分かれて端末を使用。コロナ禍でオンラインの体制はかなり整備されたと思っていたが、日本人同士のパソコンがつながってしまうなどのトラブルが発生し、大人数で同時に接続することの難しさを感じた。 現地にうまく音声が伝わらない中、生徒はチャット機能を使って言葉を伝えたり、スムーズに接続ができた班がほかの班と合流したりと、工夫して交流を続け、会話を楽しんでいた。 同校の階段には「臨機応変」と書かれた大きな額縁が飾られていた。その日の生徒の行動を表していたように思う。記者の仕事も、臨機応
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記者コラム「清流」 平和の尊さ 後世に
幼い頃、友達と遊んだ神社の境内に石碑が立っていた。それが何か当時は分からなかったが、祖母からは「大事な場所やから近くで遊んだらあかんで」と注意を受けた覚えがある。その石碑が「忠魂碑」と知るのはずいぶん後のことだ。 郷土の戦死者を祭る忠魂碑を巡り、維持管理の担い手不足などを理由に取り壊す動きがみられる。本県でも近年撤去の事例があり、こうした状況に歯止めをかけようと市民有志や学識経験者らが保存会を立ち上げた。歴史的価値の発信、自治体などへ保存に向けた働き掛けを行うという。 終戦から78年以上がたち、戦争の記憶をどのように継承していくかが課題となっている。忠魂碑は戦争を知る上で貴重な史料とされ
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記者コラム「清流」 交通事故増加、原因は?
焼津市では交通事故が増えている。関係者の間では、対策に生かすために原因をあれこれ探っているが、明快な答えが出てこないのが現状だ。 聞くと、発生場所として比較的多いのは、幹線道路や商業施設周辺だという。少しでも早くと目的地に急ぐあまり、スピードを出し過ぎたり、注意散漫になったりしているのだろうか。 ある人は道路の走りやすさを原因に挙げていた。確かに隣接市と比べて、渋滞に遭遇した経験は少ない。自然とアクセルを踏み込みがちとなり、停止線を越えてしまったり、歩行者の存在を見失ってしまったりするのかもしれない。 いずれにしても事故の多さは気がかりだ。一人一人が交通ルールを当たり前のように守ってい
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記者コラム「清流」 高校生の活躍
伊東市内3高校の統合で誕生した、開校初年度の伊豆伊東高。生徒の活躍が目覚ましい。3年生グループの一つが高校生ビジネスプラン・グランプリで全国3位相当の賞を受け、ほかの2グループもベスト100に。本年度は全国から5000件を超えるプランの応募があった。 3位のグループは、家事負担の課題を抱えるヤングケアラーをテーマに解決策を練った。年齢が離れた妹2人の面倒を見るメンバーの実体験に基づいた提案が高い評価を得た。社会人と対話し、協力を得て取り組みを実践し、まとめ上げた努力のたまものだ。 人生の早い時期に社会で仕事をする人と接し、ビジネスの仕組みに触れる経験は将来に役立つ。当時は同世代との関わり
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記者コラム「清流」 他人ごとに聞こえる
「どこか人ごとに聞こえるんだよな」。自民党の政治資金パーティーを巡る事件で、安倍派の塩谷立座長が1月から地元浜松市で支援組織役員への報告を重ねている。非公開の会合後に参加者に話を聞くと、毎回こんな感想が漏れる。 塩谷氏の同市での記者会見を取材し、同じ印象を抱いた。自身にとって収支報告書への不記載は、知らないところで続いていた「慣習」だという。長年見過ごしていたことを反省点に挙げる一方、責任の所在を問われると、「議員それぞれに責任があるんじゃないですか」と淡々と答えた。 地元支援組織の役員らは塩谷氏が口を閉ざしていた間、不満を抱く党員たちの矢面に立ってきた。「自ら有権者の声を受け止めてほし
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記者コラム「清流」 探究の芽を育てる時間
学校を取材すると最近、「探究」という言葉が頻出する。実生活から問いを見いだし、自ら課題を立て、情報収集と整理分析をし、まとめて表現する―。学習指導要領では、探究をこのように説明している。 授業をのぞいても、児童生徒が議論・発表をしたり、実地訪問や資料探しをしたりする姿を目にする機会が多い。板書の書き写しが主だった二十数年前の小中学生時代の自分と比べ、頭と体を能動的に動かす現代の子どもたちがまぶしい。 学習指導要領の通り、探究には子どもが生活の中で関心を持つ経験が大切だ。主体的な学びには大きなエネルギーを要する。 予測不可能な時代を生き抜いてほしいと、わが子に多くを求めている自身を振り返
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記者コラム「清流」 幕末のイケメン
江戸時代最後の沼津藩主水野忠敬をインターネットで検索すると予測ワードに「水野忠敬 イケメン」と出てきた。写真を見ると、確かに端正な顔立ちに思える。 先日、忠敬のひ孫で経済学博士の忠尚さんの講演を聞いた。先祖の忠友、忠成2代の藩主が江戸幕府後期の幕閣として関わった銀貨改鋳は、米を基軸とした経済から貨幣経済への移行を推し進めたと論じる。 一般的に貨幣を改鋳し、通貨量を増やすことはインフレを引き起こし、否定的にも論じられる。だが、忠尚さんは「経済活性化を促した」と評価する。忠友が仕えたのは相良藩主で老中の田沼意次。田沼は近年、再評価が進み、来年の大河ドラマでは渡辺謙さんが演じる。ドラマに忠友、
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記者コラム「清流」 イエスでも、ノーでも
昨年、心筋炎のため補助人工心臓を装着して臓器移植を待つ女性と出会った。壮絶な闘病を語る口調は明るく、外見の印象からは重い病気を認識しにくいが、ヘルプマークが付いたかばんの中のバッテリーが補助人工心臓を動かし、彼女の命をつないでいた。 1997年の臓器移植法施行以降、国内の臓器提供件数は徐々に増えてきた。医療の進歩で従来より安定した状態で待機できる患者も多いようだが、それでも1年に移植手術を受けられる患者は希望者の2~3%。待機中に容体が悪化し亡くなる方も多いという。 運転免許証など身分証に臓器提供の意思表示欄が付いて久しいが、提供例の大半は、本人の意思が分からず家族の承諾で実現している。
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記者コラム「清流」 峠道に見る変化
静岡県内の山に登ると、ふいに「○○峠」と書かれた看板が立つ場所に出ることがある。尾根の中では比較的低くなっていて、麓の集落から上ってくる道が交差している地点が多い。傍らには小さな地蔵がまつられていたりと、森の中に人の暮らしの気配がにじむ。 自動車が主要な移動手段となった現代では想像も難しいが、かつては険しい峠道を徒歩で越えて多くの人や物資が行き交っていたという。山間部の集落を縦横に結ぶ各ルートは、さながら幹線道路のような位置付けだったようだ。 一方で、こうした峠道の途中では廃墟となった家屋や荒れた茶畑、水田跡をよく見かけ、過疎化が進む現状もひしひしと感じる。数十年後に同じ場所を再び訪ねた
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記者コラム「清流」 福を呼び込む棒たたき
丸太を囲み、ほころぶ住民の笑顔を見て温かい気持ちになった。年始に掛川市の普門寺で行われた、たたき棒祭り。心の中のあかを落とし鬼を追い払って福を呼ぶとする“奇祭”は、丸太を藤の根の先が裂けるまでたたく。丸太の両脇を埋めた住民が一心不乱にたたく姿は迫力満点だった。 取材後、私も参加させていただくことに。何度も何度も棒を振り下ろすと、なるほど確かになんともいえないすがすがしさだ。招福のゆえんをかみしめ、慢性的な肩こりもほぐれた気がした。しかし私の腕力では根は裂けず、結局地元の方に手伝っていただいた。 年始から心が痛くなる出来事が続く。寒さで行動も鈍くなりがちだ。気分転換
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記者コラム「清流」 道が混む訳
1月下旬、取材で沼津市の内浦に向かった。休日だが混んでいた。名古屋や横浜など他県ナンバーの車もちらほら。1車線のくねくねした道をゆっくり走らせるとその訳が分かった。 淡島行き船乗り場に次々とウインカーを出す車。バス乗り場にできた行列。カメラを持った人、子ども連れの家族、友人と来たであろう若者たち。その道を通ったのは離島にある水族館「あわしまマリンパーク」が2月12日の営業を最後に閉館するという一報が出た後、最初の休日だった。 閉館にものすごい反響があったのは一連の報道やSNSで知っていたが、これほどとは。市を舞台にした人気アニメ「ラブライブ!」の聖地となっていることも影響しているだろう。
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記者コラム「清流」 「凶」を前向きに
コロナ禍で帰省をためらっていた時期は遠い昔のことのよう。年末年始は実家でゆっくり過ごせた。元日は恒例の初詣へ。親戚9人で臨んだおみくじでは、なんと7人が「凶」だった。災害や事故で幕開けした今年を象徴するようで、楽観できない未来に気が重い。 だがこの「凶」。悪いことばかりではないらしい。おみくじを引いたその時が“どん底”であって、これから運勢が上昇するという考え方も。良いことが起こる兆候だと思えば決して嘆くことではないのだ。物事の捉え方の大切さを教わった思いだ。 「凶」を連発する観音様に、情けをかけてもらえますように。そう願いながら、おみくじを境内にしっかりと結び、
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記者コラム「清流」 変わる駅前
JR富士駅の北口整備に関する発表が続いた。駅前一帯にかかる施設デザイン公開と、新たに建てられる複合ビルへの専門学校救急救命科の“内定”。市街地のにぎわい創出につながる事業だけに、これらのニュースが当事者の市民に浸透してほしい。 手をつなぐファミリー、ランニングする青年、大型犬を連れた老夫婦―。健全すぎるイメージ図は、富士の魅力を投影させた建物に負けず、行き交う人々の印象が前に出る。幅広い層を集める必要性を訴えているものと受け止めた。 市民の声を聞いて具現化する基本設計では、現状のデザイン案は柔軟に姿を変えていくという。自分が使うなら、と考えれば注文や提案はたくさん
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記者コラム「清流」 発展の道決める選挙
今年は世界各国で選挙が行われる。東南アジアの大国インドネシアでは、10年にわたり権力を行使してきた現大統領に代わるリーダーが決まる。 県西部に住む同国出身の40代の男性経営者は「選挙は国の発展に向けた進路を決めるため、若者の関心が高い。指導者には強い国を目指して頑張ってほしい」と期待する。県内に住む同胞たちは都内などで行われる在外投票に向け、候補者の人柄を見極めているという。国全体の有権者は2億人を超え、前回大統領選の投票率は約8割とされる。 投票日は2月14日。同国では、製造業を中心に多くの静岡県の企業が事業展開し、農水産品輸出先としての成長も期待できる。政治のかじ取り役が代わる転機は
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記者コラム「清流」 「裏金問題」に思う
「皆帰ってからご飯を食べるんじゃないの?」。政治資金パーティーに出席した経験者の感想だ。1人数万円の「パーティー」といっても豪華な料理はなし。大皿のつまみに酒も出ないケースもある。券だけ買って出席しない人も多い。 実際は国会議員などの集金目的で、20万円以下なら購入者は非公開。対価性は疑問符ながら、購入側も「交際費」として損金処理でき、税制上も優遇される。地元企業と政治家の関係は常に関心の的だが、アンダーグラウンドのため、利益誘導的な政策があっても有権者は指摘しにくい。 自民党の裏金問題が連日報道される。派閥の解散が相次ぐが、本質は違う点にある。パー券制度そのものの欠陥であり、立法府自ら
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記者コラム「清流」 広がる進路の選択肢
函南中卒業後に東京の専門学校へ進んだ神田悠さんが昨年、難関の税理士試験に17歳では異例の3科目に合格した。取材前の一番の疑問は「高校や大学に進学して税理士を目指しても良かったのではないか」 答えは「普通と違い面白そう」「仕事に役立つ勉強がしたかった」「高校に進むより時間もお金も有効に使える」だった。中学時代の成績は、地元トップ校に進学できるほど優秀で、恩師や親からも心配する声があったという。 無意識に高校、大学と自分が選んできた道を肯定したかったのだろうか。取材中は理解が及ばず、しつこいと思いながら同じような質問を繰り返していた。 時代は変化し、価値観や進路の選択肢は広がっている。頼も
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記者コラム「清流」 定番のままでいいのか
取材で啓発・PR用のクリアファイルをいただくことが多い。捨てるのはもったいないので、職場で保管資料を内容ごとに仕分けするのに再利用している。それでも、使わずに置いているファイルが次々とたまり山になっている。 チラシなどをまとめて配布できるクリアファイルは啓発グッズの定番。ファイル自体にも活動内容がプリントされている。ただ、脱炭素が叫ばれる中、樹脂製のファイルを使い続けていいのか疑問に思った。定番だからと惰性でグッズに採用する時代ではないだろう。一部では紙製のファイルも見るようになった。 二酸化炭素(CO2)の排出実質ゼロを目指す自治体や企業が増えている。いま一度、啓発の効果を検証し、石油
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記者コラム「清流」 逆さ地図
「逆さ地図」をご存じだろうか。日本海を中心に南北を逆転させた地図で、中国大陸の上に覆いかぶさるように日本列島が位置している。地政学リスクがよく分かり、東京支社勤務時代、国防族と呼ばれる国会議員の事務所で何度か目にした。 年始を襲った能登半島地震。被災地はインフラ復旧の遅れや避難生活の長期化などさまざまな苦境に直面している。「能登半島をひっくり返すと伊豆半島のようだ」。発災直後にこんな言葉を聞き、はっとした。道路網や医療提供体制、過疎化、住宅耐震化など同様の課題を抱え、本県にとって人ごとではない。 今回の地震はトップの危機管理意識も議論を呼んだ。国防も災害対応も、重要なのは想像力を働かせる
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記者コラム「清流」 無数の命に囲まれて
午後8時過ぎ、暗い山道を運転していた車の前を何かが遮った。目を凝らすと「やっぱり」。2頭の雌ジカが道路に現れ、目の前を横切っていった。減速して衝突を回避したが、山あいでは日常的な場面。「いつかひいてしまうのではないか」と不安を抱えている。 浜松市天竜区でもシカが増えており、行楽客の車やバイクとの衝突事故が懸念されている。野生動物との事故は「ロードキル」と呼ばれ、全国でも度々問題になっている。衝突の仕方によっては運転手が大けがを負う場合もある。 もちろん、事故によって動物の命を奪ってしまうことにもわだかまりがある。山は動物にとって大切な居場所。山道に現れた彼らを責めることは難しい。山道では
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記者コラム「清流」 若者の意見に学ぶ
先日、静岡大で過疎地をテーマに講義する機会があり、人口減少が進む賀茂地域の現状を述べた。出生児数の少なさや高齢化率の高さ、これらに伴う課題を説明した。講義後の若者の率直な意見を紹介する。 地域の魅力を伝えるには「ユーチューブやインフルエンサーを利用するのが有効ではないか」という考え。若者向けに発信するにはネットや交流サイト(SNS)で発信する重要性を感じた。実際、観光地にもかかわらずネット上に観光情報がないことも多い。 「人手不足がこんなに深刻だとは思わなかった」という声も。記者が現地で暮らし、現状を発信する必要性を感じた。賀茂地域は人口の流出に歯止めがかからない状況が続く。若者が住みた
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記者コラム「清流」 見覚えのある写真
能登半島地震で犠牲になった母子の生前の写真に見覚えがあった。地元に帰った時、子どもたちとよく訪れる鉄道が見える近所の公園が背景に写っていた。全く同じ場所でわが家も何度か遊んだことがある。 亡くなった子どもの年齢は長男とほとんど変わらない。ニュースに映った写真の撮影日を見ると、ほんの1カ月前だった。ついこの間まで何げない家族の時間を大切にしていたはず。自分たちと何ら変わらない日常があったはずだ。 備蓄や避難経路、家族との連絡方法をすぐに見直した。寄付をしようかと家庭で話をしたら、子どもたちは正月に使おうとためていたお小遣いを持ってきた。 突き動かされる理由は、守りたい家族があるから。そし
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記者コラム「清流」 20年ぶりの地震で自戒
「大丈夫か」。正月、地元の新潟県に帰省中、地震に見舞われた。私の住んでいる地域は震度5~6弱で、揺れはとてつもなく長く感じた。これほど大きな地震は“あの日”から20年ぶりに体験した。 発生から約1カ月がたったが、被災者は耐え難きを耐える日々が続いていると思う。私は2004年の新潟県中越地震で震度7を経験した。あの時と同程度かそれ以上の規模の今回の地震。被害の深刻さを想像すると、身が固まる。 伊豆半島で必ず発生すると言われている南海トラフ地震。地震を一度経験しているにもかかわらず、危機感を常にもつことはできなかった。備えても自然の脅威はいつ襲ってくるか分からず、予想
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記者コラム「清流」 温かい式 若者の支えに
障害があり行政主催の「はたちの集い」への参加が難しい若者の門出を祝う「生人四季(せいじんしき)」を取材した。会場ではサプライズで、子から親に感謝の花束が贈られた。成人を迎えた子だけでなく、さまざまな困難を支え続けた親御さんを“お疲れさま”とねぎらう場になれば、との主催者の思いがあった。 主役を歌や演奏で盛り上げたのは、外国籍の子が多く通う保育園の園児や、老若男女が活動する地元の吹奏楽団。短い時間の中で何度も「おめでとう」「ありがとう」と、祝いと感謝の言葉が聞こえた。温かい雰囲気の中、若者の照れくさそうな表情や、涙を手で拭う姿が印象に残っている。 大事な節目を地域の
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記者コラム「清流」 若者の持つ力
旧友や恩師との再会を懐かしむ声。新型コロナ感染症が5類に移行して初の式典とあって「はたちの集い」の会場では、久々に若者たちの笑顔がはじけた。 牧之原市は昨年、地元を巣立っていった若者の活躍が目覚ましかった。中日ドラゴンズに入団し、プロ初本塁打で満塁弾を放つなどして存在感を示した村松開人選手(23)やミス・ユニバース日本代表として世界大会に出場した宮崎莉緒さん(21)など、名前を挙げれば切りがない。活躍する姿を見て、まるで自分の子のことのように喜ぶ市民を目の当たりにして、「子どもは地域の宝」という言葉の意味を再認識した。 今年も多くの若者が大人の仲間入りを果たした。先輩の大きな背中を追いか
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記者コラム「清流」 求められる質問力
掛川市議会や一部事務組合議会の全員協議会は、慣例で質問が上限3回になっている。より多くの議員が発言できるようにするための配慮だが、議論が不完全燃焼に終わる場面も多い。 以前に取材した衛生施設組合議会の全員協議会では、議員の1人が制限の解除を提起し、その場に限って全議員の質問回数が無制限になった。案件の重要度に即した対応は当然だ。一方で、議論はあまり深まらなかった。既出内容の再確認など発展性に欠ける質問が目立ち、議事進行は間延びした。新味に乏しく、普段から勉強熱心な議員ほど口数が少ない印象だった。 発言に関する一律の規制には抵抗がある。回数を気にしない活発な議論の応酬が本来の姿だと信じるが
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記者コラム「清流」 巨大地震への備え肝心
「被災地に入るまで3日かかった」。能登半島地震の被災地で救援活動に当たった熱海市の消防隊員が、帰任報告で発した一言が耳に残っている。海と山に囲まれた伊豆半島も人ごとではないと感じるからだ。 能登半島では主要道が寸断し、被害状況の把握や救援活動に時間を要した。巨大地震の発生後は自衛隊や全国各地の公的機関、災害ボランティアが被災地入りする。いち早く現場にと思っても、アクセス道が不通だと救える命も救えない。 熱海と他市町を結ぶ主要道は国道135号と県道の熱函道路。断崖絶壁の海岸線や急斜面の山を通る箇所が多く、巨大地震で寸断の恐れがある。行政による道路網の点検と強靱化(きょうじんか)は言うまでも
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記者コラム「清流」 お金の役割
2024年、大きな変化の一つといえば新紙幣の発行。お札の“顔”が変わるのは20年ぶりだ。キャッシュレス化が進む現代とはいえ、財布に入れて持ち歩かないと不安になる人も多いのではないか。日本経済の根幹をなし、国民生活を支えるお金の役割はいつの時代も変わらない。 そんなお札の印刷工場は全国4カ所にあり、静岡市の静岡工場もその一つ。戦時下の外地で物資を調達する疑似紙幣の「軍票」を送るため、80年前に清水港近くの国吉田に開設された。今年7月に発行される新紙幣の印刷が既に始まっているという。 新紙幣の精巧な偽造防止技術はまさに職人技。外国人や目が不自由な人への配慮も随所に施さ
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記者コラム「清流」 疑問、怒りは原動力
「米軍だから、どうせ説明してくれない」。パラシュート降下訓練中の米兵が東富士演習場外に降りた問題で、こんな声が取材先から漏れてきた。過去に問題が起きた際に十分な説明がなかったことから、米軍関係事案になると諦めのような空気が漂う。だが、適切な対応を求めなければ、それが前例になり、やがて当たり前になる恐れがある。 同じことは、繰り返される「政治とカネ」の問題にも言える。「政治家だから仕方ない」と片付けてしまえば思考が停止し、注視すべき再発防止の動きに目が行き届かなくなってしまう。問題に関係ない大多数の政治家に失礼だと思う。 理解できない時や釈然としない時は疑問を持ち続け、正しくないことには素
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記者コラム「清流」 頼まれた伝言
「静岡の人がカレーライスを食べさせてくれた。お礼を伝えてほしい」。元日に発生した能登半島地震で、石川県穴水町の避難所「さわやか交流館プルート」に避難していた80代女性から伝言を頼まれた。 本社取材班として6日から1週間現地に入った。珠洲市の津波、輪島市の大規模火災など、被災地の光景は目を覆いたくなる惨状ばかりだった。避難所では自らの生活がままならないにもかかわらず、よそ者の記者を受け入れてくれた多くの住民に感謝したい。 女性も話を聞かせてもらった被災者の一人。取材を終えてその場を離れようとした際に伝えてくれた。“静岡の人”が誰だったのかはわからないが、女性のために
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記者コラム「清流」 伝統と地域守るには
妻の実家がある沼津市我入道地区では、元旦に近隣の寺社などを多数巡り歩く「年始参り」の風習がある。コロナ禍の自粛を経て今年久々に家族で参加した。 10カ所近い訪問先では、氏子や地域住民が甘酒などで歓待してくれる。温かな施しに感謝しつつ、以前より無人対応の場所が増えたことが気になった。関係者から担い手不足の状況を聞いていた神社を訪ねると、薄暗くて人の気配もなく、管理体制に不安を覚えた。 静岡市内で昨年起きた寺社の屋根銅板を転売目的で剝がして盗む事件は監視が届きにくい小さな神社が標的だった。「防犯を強化したいが人手もコストもかかり難しい」。取材した住民の悲痛な声が耳に残る。少子高齢化が進む中、
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記者コラム「清流」 広い視野で将来考えて
三島、裾野、熱海、長泉、函南の5市町でごみ焼却場の広域化が議論になっている。現有施設の老朽化と財政難、人口減少などが背景にあるが、早くも難航が予想されている。 これまで担当した県内他市町でも、ごみ焼却場の建て替えは議論が紛糾し、長期化していた。人間誰しもごみを排出する。焼却場の必要性は認めながら「自分たちの住む地域には建ててほしくない。ただし、遠いと持ち込みに不便」という住民の声が、ここかしこで聞こえてきた。 先細る日本。ごみ焼却場はその最たる象徴にすぎず、多くの自治体でこれまでの住民サービスを維持できない厳しい実情を抱えている。自分たちの住むまちの現状と将来について、生活に身近な問題を
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記者コラム「清流」 「活躍」は変わらない
910円。能登半島地震の被災地に派遣された浜松市消防局職員に支給される1日の特殊勤務手当だ。災害支援という趣旨なので、金銭の問題ではないかもしれない。金額の評価も人によってさまざまだろうが、個人的には低額で驚いた。 市消防局は地震発生の1日から17日までに陸上、航空の両部隊を合わせて延べ175人を派遣。職員らは石川県珠洲市を中心に被災者の捜索救助活動に当たっている。被災地での活動は心身の負担も大きいはず。余震の不安の中で被災地を支える姿には頭が下がる。 一方、昨年12月~1月に市消防局の消防士2人が相次いで逮捕された。16日の市議会常任委員会では太田陽視消防長が声を詰まらせながら謝罪した
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記者コラム「清流」 語らない議員たち
楽観視し過ぎていた。裁判のやり直しに関する法律(再審法)の国会議員アンケート。忙しくても答えてもらえるよう設問を絞り、回答依頼の電話も掛けた。 与野党が対立するようなテーマではない。日弁連は各地の単位会ごと地元議員を訪ね、問題点を説明。にもかかわらず、自民党の回答率は2.9%。380人中11人しか答えなかった。 興味がない、票につながらない、責任を負いたくない、検察ににらまれたくない―。口を閉ざす理由を、そう解説する議員がいた。 県内も自民党議員の半数以上が無回答。裏金事件に揺れ「信頼回復を」と勇ましいが、都合のいいことしか語らない姿が不信を招いていると気づかないのか。 再審法の改正
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記者コラム「清流」 龍
2024年は辰(たつ)年。龍は天を昇るとされ、昔から縁起物として人々の信仰の対象になった。 御前崎市の桜ケ池には龍神伝説がある。仏道の極め難きを知った比叡山(京都)の名僧・皇円阿闍梨(あじゃり)が未来仏を求めて池に沈み、一番長生きする龍に化けたと伝わる。彼岸に営まれる奇祭「お櫃(ひつ)納め」では、池の龍神に五穀豊穣(ほうじょう)を感謝するのが伝統だ。今年は龍をあがめて運気を上げるのも良い。「龍の水を得る如し」ということわざがあるように龍が水を得て昇天するような飛躍の1年にしたい。 しかし、思い上がりは禁物だ。「龍を描きて狗(いぬ)に類す」とは、力量の劣るものが優れた人のまねをして軽薄にな
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記者コラム「清流」 タクシーなき夜
師走の下田。バーでほろ酔い気分でいたら、マスターから衝撃的な一言が飛び出した。「タクシー、深夜営業やめたんだってさ」 (酒好きの)新聞記者とタクシーの関係は深い。飲酒中に事件が起きるとタクシーに頼らざるを得ず、長年幾度も助けられてきた。 事業者の深夜営業終了は運転手の不足と高齢化によるところが大きい。近隣の町議会では政府が推進する「ライドシェア」の夜間活用も話題になったが、そもそも運行管理するタクシー会社が人手不足なので、過疎地の伊豆南部に有効かは不透明と言うほかない。 今後は需要を見極めつつ、官民一体での議論が必要だろう。とはいえ、下田支局の“夜の足”確保は喫
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記者コラム「清流」 届かぬ賀状に誓い新た
駆け出しの時の話だ。深夜のサイレンで飛び起き、工場火災の現場へ。幸いぼや程度で済み支局に朝方戻ると地元県議から「支援者の会社なので記事を差し止めてくれ」と電話が。不当な要求は当然断り、すぐ続報取材で警察署に向かった。 腹の虫が治まらず「意地でも記事にした」と感情をぶちまけると、なじみの刑事課長に「記者がそんなことを言っては駄目だ。私情を挟まず、常に公正な判断をしないと」と諭された。 あれから四半世紀。感謝を込め賀状を出し続けているが、いつも元旦に来る達筆の賀詞が今年は届かなかった。当時既に白髪交じりだったこわもて刑事は80歳近くになっただろうか。SNSの発達で最近は「年賀状じまい」する友
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記者コラム「清流」 副市長、もっと発信を
沼津市の頼重秀一市長はSNSを積極的に活用し、自身や市民の活動を広く伝えている。足を運んだイベントの様子や、表敬に訪れた市民を収めた写真をアップし、丁寧に発信。もちろん、地元に関するSNS上の話題に対するチェックも欠かさない。 同市には市長を支える副市長に、吉沢勇一郎、塚本秀綱の両氏がいる。吉沢氏は静岡市葵区生まれの40代で国土交通省出身。塚本氏は裾野市に自宅があり、県OBだ。いずれも仕事に厳しいが、性格はくだけたところがある。人望は厚い。人付き合いが良く、酒宴は嫌がらない。 こうした人柄や仕事っぷり、担務といった両副市長の詳細を市民にアピールしても良い。市政の重要な決定にも関わっている
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記者コラム「清流」 医療のたすきリレー
「私たちには帰る家があるが、被災地の医療従事者に終わりはない」 能登半島地震で被災した石川県珠洲市の病院で災害派遣医療チーム(DMAT)として活動した聖隷三方原病院(浜松市中央区)の医師ら4人が帰還した。124時間ぶりにがれきの下から救出された90代女性の治療などに当たった。 約1週間の派遣期間を振り返る言葉には、過酷な現場を乗り越えた充実感とともに、被災地を離れる後ろめたさをにじませた。 車で戻ってきた4人を出迎えた同僚たちはホッとした表情を浮かべ、抱き合う姿も見られた。送り出す側も大きな不安を抱えていたのだろう。高い技能を持つプロが現地で任務を全うし、無事に戻ってきて次の部隊に託す
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記者コラム「清流」 最大の武器
昨年10月に発足したクラーク記念国際高静岡キャンパス男子サッカー部。練習初日の帰り道、部員5人はJR静岡駅付近で女性のスカートの中を盗撮していた男を取り押さえ、摘発に貢献した。犯人を追う役、交番に向かう役などを瞬時に分担し、部発足から間もないにもかかわらず抜群のチームワークを見せた。 警察によると、盗撮は被害が顕在化しにくく目撃者の協力が重要という。現場は地上につながる地下階段。少しでもためらえば、犯人は逃げてしまったかもしれない。犯罪を目の当たりにしても臆することなく、とっさの判断で連係した5人。「考える前に体が動いていた」と振り返る。 同部は今年の春に初の公式戦を迎えるという。彼らの
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記者コラム「清流」 教員の職場環境改善を
浜松市立中の教諭を務める鴨剛太朗さん(49)が、教員たちが部活動の顧問を拒否しやすくするための職員団体を設立したというので話を聞いた。本来業務でもなく、どうしても嫌なことは嫌と言える職場にしようとの思いに共感した。 鴨さんは20年近い教員生活で、休日も長時間にわたって拘束される部活動の顧問という役割に疑問を感じていた。市教育委員会は勤務時間外の部活指導を強制していないものの、鴨さんは「実質的には多くの教員が管理職から子どものためなどと説得され断れる現状にない」と指摘する。 教員の多忙化の一因ともいわれる部活。市教委も地域移行を探るなど対策を取らないわけではないが、教員一人一人が声を上げる
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記者コラム「清流」 指導者確保 企業連携を
沼津市は昨年11月から、中学校の部活動の地域移行に向けた「休日移行」の実証事業に取り組んでいる。休日移行では、休日の活動に顧問が帯同せず、地域の競技団体が派遣した指導者が生徒を指導する。最終的には、平日を含めた完全移行を目指している。 ただ完全移行を目指すにあたり、課題の一つになっているのが指導者の確保だ。実証では顧問経験のある教員が指導に当たっているが、平日は勤務のため、確保が難しいのだという。 それならば、地元企業内のスポーツ人材が、地域貢献の一環で指導に当たる仕組みを整備できないものだろうか。ボランティアではなく業務の一環として、地域の生徒と交流を深めることで得るものも大きいのでは
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記者コラム「清流」 ライドシェアを体験
一般ドライバーが自家用車を使って有償で客を運ぶライドシェア。国内で導入に向けた検討が進むが、海外では日常的に利用できる国も多い。昨年、東南アジアを旅行した際に初めて利用した。 スマートフォンに配車アプリを入れ、乗車地と目的地を選択すると、近くの登録車両が見つかり乗車できる仕組みだ。事前に目的地までのルートや料金が示されるため、海外旅行で警戒する料金の「ぼったくり」の心配はほとんどない。運転手の評価に関わるからなのか、車内も比較的きれいで、親切な人は天候や観光地の情報も教えてくれた。 安全性や既存の交通産業への影響、地方での採算性など、導入に向けては課題が多いだろう。利用者、運行する側の双
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記者コラム「清流」 歓声を浴びる仕事
清水町で開かれた20歳を祝う式典。中学時代に指導を受けた教員が壇上に姿を見せると会場から歓声が上がった。歓声を浴びる機会がある職業はスポーツ選手やアーティストなどに限られる。身内に関係者がいることを差し引いても先生はすてきな仕事だと思う。 一方で、業務の多忙化などから敬遠され、採用試験の競争率は低下する。過剰な要求をする保護者への対応に苦慮する現場もあるという。子どもに向き合い育むという役割に注力できるよう働き方改革を着実に進めてほしい。関係機関や地域の協力も欠かせない。 式典では恩師にインタビューする形で、学びやでの思い出を振り返った。時が流れても先生と生徒の関係は変わらない。年賀状の
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記者コラム「清流」 中小の機動力を武器に
海外企業と取引がある県内製造業の経営者から、「『日本は、一度投げかけてもなかなか回答が返ってこない』とよく言われる」と聞いた。関門が多い大手ほどその傾向が強いそうだ。経営者は商機を逸することによる日本全体の競争力低下を案じていた。 一方で、自分が接したある浜松市の中小製造業の幹部は、取材の問い合わせの返信が迅速で日頃の経営判断の早さも想起できた。記者の視点でみれば、予定が立てやすく円滑に取材ができて紙面に早期に載りやすいし、その後も候補に挙がる可能性がある。 経済は緩やかに回復基調とされるが、2024年も原材料高や人手不足など中小の経営を取り巻く環境は依然厳しい。機動力と柔軟さを武器にし
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記者コラム「清流」 図書館が守るべきもの
静岡市駿河区の南部図書館で2022年に起こった浸水被害を受け、静岡県内96の公立図書館が抱えている災害リスクについて各館の司書に話を聞いた。 「あらゆる災害を想定した対策は難しい」。司書らは異口同音に本音を吐露した。浸水被害を防ぐため、なるべく棚の上部に所蔵する。しかし地震が起きたとき、棚の上部に置いた重い本は意図せず利用者や職員を襲う凶器となる。だからといって開架図書を諦めてしまえば、利便性や「知る自由」が失われかねない。 図書館には守るべきものがたくさんある。「本は市民の財産。なのにすべてを守りきるには人も予算も足りていない」と悔しそうな司書の姿が忘れられない。いつ起こるかわからない
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記者コラム「清流」 団子と参拝はセット
お茶、みたらし、ほうじ茶、栗―。結局どの限定だんごも買えずに2023年が終わってしまった。静岡県内外に根強いファンがいるということを調べていなかったことが敗因だった。 法多山名物の厄よけだんご。定期的に季節に合わせただんごが個数限定で販売されることを袋井に赴任してから知った。発売日は深夜から並ぶ人や車で2時間かけて買いに来る人がいるなど驚きの人気ぶり。 一方、少し悲しい話も。だんごは買いに来たが、その先の石段を上がらず帰る方もいるらしい。個人の自由ではあるが、せっかくならもう一汗流して参拝してから、味わってほしい。 例年、春には桜だんごが販売される。何時に並べばいいか読めないが、限定だ
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記者コラム「清流」 訓練「参加してみた」
年末、名古屋市の実家に帰省した。のんびり過ごすつもりだったが、同市の認定NPO法人「レスキューストックヤード」が訓練を兼ねて、里親の会のイベントに届けるカレーの炊き出しを行うと聞き、参加した。 防災訓練の取材に赴く機会は多いが、実際に参加することは少ない。やってみると、分量を間違えてカレーが必要な量の倍近く出来上がったり、道具の保管場所が分からなかったり、想像以上にばたついた。 災害時には、訓練以上に慌ただしくなり、初めて顔を合わせる人たちとの連携も必要になる。能登半島地震が元日に発生し、南海トラフ地震への不安が募ったのは記者だけではないはず。今年も防災に関する取材の機会はあるだろう。い
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記者コラム「清流」 本を積み上げた先は
年末、本棚を久々に整理した。ほこりとともに、1度もページを開かなかった本、「いつ買ったっけ?」という本が続々現れた。同じ文庫本も数冊出てきた。 10年ほど前に取材した詩人管啓次郎さんのエッセー「本は読めないものだから心配するな」に、手が止まる。「読んだ本の大部分が読まないのとまったくおなじ結果になっている」の一文に励まされたような…。 整理に取りかかった理由は、文庫本を次の読み手につなぐホテルのユニークな取り組みを取材したから。 宿泊者が1冊持ち帰れる形。旅の思い出に加えてもらえるなら提供したいと仕分けし始めると、いつか読むかも、と未練が残る。管さんの本にも「すべての文章
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記者コラム「清流」 ありがたい24時間営業
浜松市中央卸売市場で5日開かれた「初競り」。威勢の良いかけ声の方に目を向けると、142キロのクロマグロなど水産物が並ぶ。青果物も見てしまえば、おなかがすかないわけがない。空腹を満たそうと、午前7時過ぎに車に乗り込み、早朝から営業しているはずの店に向かった。 最初に到着したチェーン店は「9時から営業」の張り紙が掲示されていた。2軒目も同様。少し遠回りになる老舗喫茶店は24時間営業だったはず。そんな期待も裏切られ「朝8時~深夜1時」の看板を横目に店の前を通り過ぎたところで、市場内のラーメン店が営業中だったことを思い出す。 働き方改革や人手不足、新型コロナの影響などで年末年始は数年前のようにい
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記者コラム「清流」 援農の“恩返し”
昨年末、沼津市特産「西浦みかん」の収穫を取材した。対応してくれた農家によると、農家も援農ボランティアも高齢化が進んでいる。快く取材に応じてくれた農家に恩返しをしようと考え、休日に2日間、援農ボランティアに参加した。 普段の職場と違い、自然に囲まれた畑での作業は想像以上に楽しかった。鮮やかに色づいたミカンを1個ずつ素早く、丁寧に収穫する作業は、あっという間に時間が過ぎた。大量のミカンを1カ所にまとめる力作業もあり、若い働き手の必要性を痛感した。農業に興味のある東京の大学生が参加した日もあった。 どんなに豊作の年でも、人手がなければ収穫が追いつかない。いつまでも安定してミカンが食べられるよう
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記者コラム「清流」 記憶、記録
取材した高校の美術展で民家の庭を描いた1枚の絵が目に留まった。昔ながらの家には扇風機。夏の日が降り注ぐ庭では、植えられた木々が涼しい陰を作る。 作品のそばには作者の言葉が添えられていた。祖父宅を訪ねた際によみがえった幼き日の思い出が、制作の起点だったという。最後の数行には作品に込めた思いがつづられていた。もし、この先この場所がなくなっても思い出せるように―。その言葉の前から、しばらく離れられなかった。 過疎化や高齢化、社会情勢の変化などで消えゆく文化や移ろいゆく町並み。変化の是非は簡単に答えが出せない中、どう取材に臨むのか。そんな迷いが高校生の言葉でクリアになる。そこにあった景色を、人の
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記者コラム「清流」 脈々と続く「坂もの」魂
箱根西麓で栽培した大根をPRする祭りが、13年ぶりに復活した。かつての祭りを発案した生産者団体の「のらみちの会」と、その思いを受け継ぐ「箱根ファーマーズカントリー」「のうみんず」の話を聞く機会に恵まれた。 「自分たちで作った野菜を自分たちで消費者に届ける。今も昔も変わらない」。のうみんずの前島弘和代表の言葉が頭に残った。 かつて「坂もの」として東京や大阪の市場で引っ張りだこだった三島の大根。伝統芸能として伝わる「農兵節」は昭和初期のPRソングだった。まちおこしに奮闘した平井源太郎が歌とともに大根を宣伝し、全国に広めたそうだ。 箱根西麓で育った野菜のおいしさの源は良質な土壌だけでなく、農
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記者コラム「清流」 サポートの必要性
昨年12月の週末の夜、JR浜松駅が騒然とした。「新幹線の車内でスプレーがまかれた」―。正体はクマ撃退スプレーだった。登山帰りの乗客が誤噴射したとみられている。 クマによる人的被害は全国で後を絶たない。本年度の死傷者数は同月末時点で217人に上り、過去最多だった2020年度の158人の記録を更新した。 取材でスプレーの噴射を体験し、噴射物の刺激は想像以上だった。身の安全を確保する効果的な手段といえる。需要は高まる一方、スプレーの相場は1本1万円台と安くはなく、手が出しにくいのも現状だろう。 青森県や山梨県ではスプレーの購入費を補助する取り組みがある。山間部を仕事場としている人などには携帯
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記者コラム「清流」 野球しようぜ!
野球を始めた小学校時代、スーパースターはイチロー選手や松井秀喜選手だった。みんなで打撃フォームをまねして遊び、選手の使用品を模した「プロモデル」の道具を持つ友人をうらやましく眺めていた記憶がある。 2023年はWBCで世界一を奪還するなど野球界が盛り上がりを見せた。同大会で大活躍し、米大リーグでア・リーグMVPを獲得した大谷翔平選手は、今の球児が最も憧れる存在だろう。 そんな大谷選手が全国の小学校に寄贈すると発表したグラブが、静岡県内各校にも届き始めている。添えられた「野球しようぜ!」のメッセージに触発されて野球に興味を持つケースもあるだろう。競技人口の減少に歯止めをかけ、次世代のスーパ
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記者コラム「清流」 苦難からの「自己救済」
狂気すら感じる細かな幾何学模様が連なる抽象画。恐る恐る作者の画家本田照男さん(77)=沼津市=と話すと、元々焼き肉店を営んでいた商売人らしい気さくな人柄でホッとした。 60歳を過ぎて絵を描き始めた本田さんは創作を「自己救済」と語る。自身への差別、心臓の病、家族との離別―。音楽を聴きながら絵筆を走らせることで、苦難を作品に昇華させてきた。ストレス過多の現代。ふと、私にとっての「自己救済」は何なのだろう―と考えてしまった。 世界では戦争が続き、SNS(交流サイト)でも苦しさやねたみを背景にしたとげとげしい言葉であふれ、争いが絶えない。「絵が描ける世界は平和」と語る本田さん。絵を描く (東部総
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記者コラム「清流」 能登半島と伊豆半島
「発災から少なくとも3日間は救助が来ないと覚悟してほしい」。かつて赴任した伊豆半島のある自治体の首長が、南海トラフ巨大地震を想定した訓練で参加者に呼びかけた。静岡県内外で甚大な被害が想定され、救助や支援が追いつかないだけでなく、道路の寸断によって孤立する可能性のある半島ならではの地理的特徴を踏まえた発言だった。 晴れやかに新年を迎えていたであろう北陸地方の人々を襲った能登半島地震。道路の不通により、静岡県から向かった消防の救助隊も能登半島先端の石川県珠洲市に入るのが難航した。 美しい海岸線や海の幸など半島ならではの恵みは数え切れない。通算6年間過ごした愛すべき伊豆半島。沿岸も、山あいも、
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記者コラム「清流」 いまさらXの謎
冬の紙面上に何度も現れた「Xマス」の3文字。「クリスマス」を指す略語と了解しているが、読み方はエックスマス? そもそもクリスマスの頭文字はXじゃなくてCではないか。どこから湧いて出たこのX。 調べてみればXはギリシャ文字のΧ(カイ、キー)が元という。クリスマスはキリスト教における救世主イエスの降誕祭であり、救世主を意味するヘブライ語メシア(原意は油を注がれし者)の古代ギリシャ語訳「ΧΡΙΣΤΟΣ」をカナに音写したのが「キリスト」。この頭を取ったわけだ。新聞で使う略語にしては意外に知的だ。クリ祭とかになりそうな
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記者コラム「清流」 月曜日の過ごし方は?
裾野市議会12月定例会の一般質問で、公共施設のほとんどで導入している月曜日休館がテーマになった。討論を聞きながら、月曜日と火曜日が連休になった12月上旬、「せっかくなのでどこかに行こう」と県外の観光案内本を眺めていたところ、多くの施設と店舗が月曜日休みで諦めた記憶がよみがえった。 公共施設だけでなく、接客業を中心に民間事業所でも月曜日休みは多い印象を受ける。かき入れ時の週末を乗り切った翌日だからだろうか。だとすれば、毎週月曜日に仕事を休む人が一定数存在することになり、図書館を利用できないなどの行動制限に不便を感じているような気もする。 人手不足で運営は難しくなっているが、臨機応変に休館日
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記者コラム「清流」 外国人が働きやすく
海外との往来が活発化し、静岡県内に住み始める外国人とふれ合う機会が増えた。多くが製造業や建設業、介護・福祉の分野で働くアジア圏の人材だ。 「明るく社交的。サービス業の現場に向いている」。金融機関主催のセミナーで、フィリピンの送り出し機関幹部が強調した。「日本で働きたい若者はたくさんいる。良い就業先を見つけたい」と企業とのマッチングを進める。 昨今は在留資格をめぐる新制度の議論が進む。人手不足に悩む中、外国人が働きやすい環境の整備が大前提で、就労先に選んでもらうための努力が欠かせない。 日本語教育や宗教対応など課題は山積する。「多文化共生社会」がかけ声で終わらないよう、できることとは。現
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記者コラム「清流」 PFASと「人新世」
静岡市清水区三保地区の化学工場周辺の井戸から高濃度のPFASが検出されている問題。市の調査では、同区の他地区でも指針値を超える濃度で検出され、新局面を迎えた。煙突からも大気を通じて拡散、土壌に残留しているとみられる。 「人新世(ひとしんせい)」という言葉がある。地層に人間の影響が記された地質年代で、コンクリートや放射能、化学物質が増えた産業革命以降くらいの時代を指す。PFASの問題もこの文脈で語られることが増えているようだ。 海洋プラスチック問題も二酸化炭素(CO2)による地球温暖化も「便利さ」と常に表裏一体の関係にある。排出している企業はもちろんだが、現代人のわれわれ一人一人が真正面か
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記者コラム「清流」 熱海に大衆浴場もっと
一日の疲れを癒やすのには風呂が一番だ。熱海は国内有数の温泉地。熱海の住民であれば気軽に温泉に入れると思ったが、そうでもない。大衆浴場が意外と少ない。 源泉かけ流しのホテル・旅館が立ち寄り湯を提供しているものの、当然、宿泊客が優先で、繁忙期に電話をかけると「いちげんさんお断り」の状態。値段も1000円超の施設が多く、躊躇(ちゅうちょ)してしまう。 寒い冬、温泉好きの記者がひいきにしているのは、500円の熱海駅前温泉浴場と300円の山田湯だ。いずれも熱々の源泉かけ流しで、入浴後はこの上ない多幸感を味わえる。 ワンコイン以内で楽しめる温泉がもっと増えたら、毎日でも入浴したいと思っている。熱海
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記者コラム「清流」 地元より詳しい
着々と居住地域に詳しくなれるのは、この仕事の役得だろう。三が日は、森町一宮の小国神社で行われた恒例の神事「田遊び祭」を初めて取材した。 田づくりから刈り入れまでを演じて、その年の米の豊作を祈願する。厳かに披露される演目を参拝客もじっと見守り、境内は独特の空気感に包まれていた。 米の豊作を祈ることは地域の平穏を願うこと。その思いで、鎌倉時代中期から絶えず続けられてきた。改めて町の歴史の深さが身に染みたが、地元神奈川県の神社にも同じ趣旨の神事が鎌倉時代から伝承されていることを後で知った。 おそらく、20年住んだ地元より、着任数カ月のこの地域の方がすでに詳しい。地元に無関心で生活していたこと
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記者コラム「清流」 時代が遠ざかっても
2011年3月11日、当時小学4年で授業中だった私は、机の下で揺れが収まるのをひたすら待った。帰宅後、テレビで見た津波の映像は今も忘れられない。 静岡市立南中は10月20日、東日本大震災時に宮城県石巻市立雄勝中の校長だった佐藤淳一さん(63)を招いた講演会を開いた。当時、まだ幼かったため震災の記憶はほとんどないという生徒が、講演をどう受け止めるのか気になった。 親を亡くし生きる意味が分からなくなっても、それでも前を向いて生きようとする被災者の話を、生徒は涙を流しながら聞いていた。震災から12年がたち風化が懸念される中、理解しようと努める生徒の姿が目の前にあった。 どんなに時代や場所が遠
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記者コラム「清流」 伝統行事継承の難しさ
静岡県指定の無形民俗文化財・西伊豆町宇久須の牛越神社の人形三番叟(さんばそう)が今秋、休止となった。住民は「教える側の高齢化や若者の流出で継続が難しい」と吐露する。地域を象徴する伝統行事がなくなるのは寂しい。だが継承するのも容易ではない。 最古の記録では江戸時代中期に奉納されたとされ、3人一組で1メートルほどの人形1体を巧みに操る。技術や体力がいるので、まとまった練習時間が必要という。舞を簡略化したり、町外から参加者を募ったりするのも一手かもしれないが、議論の余地があるだろう。 思い出のある催しがもしなくなることになったら、やはり切ない。行事は地域への帰属意識につながる。人形三番叟は住民
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記者コラム「清流」 地元のシンボルの節目
10月、掛川城の復元30年記念事業を検討する会が市内で開かれた。産官学の委員が案を出し合う場に、違和感を抱く一幕があった。 インパクトある試みを考える中、徳川家康の側室、西郷の局の生誕地にちなみ大勢の着物姿の女性による行列が提案された。その場は「女性が輝くまちはいいね」「掛川美人を探す」と盛り上がった。 確かに着物姿の女性は美しいと思う。ありがちな武者行列から離れようという前段もある。ただ私は、着物姿で練り歩くことが女性の輝きだと安直に捉えられた気がして悲しかった。男性の着物姿も見たい、と発言した委員がいたが「男性はおまけでいいね」と意図が伝わらなかった。 せっかくの節目。多くの人が歴
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記者コラム「清流」 音楽を通じた交流
最初はよそよそしかったが、音楽という共通項を通じて、距離を縮めていく。焼津市内4中学校の吹奏楽部の合同練習会で見た光景だ。音を合わせてみると、しょっぱなこそどこかぎこちなさを感じたが、指導者のアドバイスも相まって、やがて一体感が生まれていった。 生徒たちが所属する各校の吹奏楽部は少子化の影響もあって決して大人数ではないらしい。日頃は少数精鋭で鍛錬を積んでいるが、60人規模の楽団での演奏を経験することは貴重な経験になるだろう。 仮に4校合同でクラブ化した場合、コンクールで上位を狙うには多くの困難が待ち受けていると思う。ただ、普段接する機会が少ない子どもたちが部活動をきっかけに交流を深めてい
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記者コラム「清流」 挑戦する女性
80歳でバレーボールに励む磐田市の女性を取材した。練習におじゃますると、ボールを追いかけて走り回り、滑り込んでレシーブを上げる光景が。女性のアグレッシブさにしびれ、ある意味冷や汗もかいた。 「家の中で静かにしているよりも、身体を動かす方が好き」という女性。移動手段は基本バイク。さらに驚いたのが、女性の両股関節には人工股関節が入っていること。76歳で手術を受けると、厳しいリハビリを経て4カ月後に試合に出場した。医者から「お化けみたい」と笑われたという。 自分自身を顧みると、学生時代は陸上やハンドボールなどのスポーツに夢中だった。今は少し走るだけで息が切れるほどの体力。常に挑戦する女性は、表
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記者コラム「清流」 かわいくて強い力士に
大相撲九州場所で秋場所に続き優勝争いを演じ、2場所連続で敢闘賞を受賞した熱海富士。出身地の熱海市に凱旋(がいせん)した時の取材で、初めて本人を目の当たりにした。 終始、くしゃくしゃの笑顔を振りまいていた。年配の女性からは「かわいい」「愛してる」との声も。その度に大きな背中を丸め、会釈を繰り返す熱海富士の姿が印象的だった。 「優しくて力持ち」「謙虚で正直」。熱海富士を幼い頃から知る関係者を取材すると、ほぼ決まってこう返ってくる。変わらぬ立ち居振る舞いがファンの心をつかんでいるのだろう。 21歳の若い力士の知名度は全国区になりつつある。次こそ幕内優勝か、それとも三役昇進が先か。来年は人気だ
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記者コラム「清流」 サポーターへの「姿勢」
Jリーグの今季が閉幕した。取材に携わる清水エスパルスは昇格プレーオフ決勝で敗退し、初の2季連続J2が決定。ただ、その結果以上に残念に感じる出来事の多いシーズンだった。 コロナ禍が過ぎ、5月に3年ぶりに解禁された練習場でのファンサービスは、1カ月後に感染リスクの観点から一時中止したまま、再開することはなかった。満員となったホーム最終戦後のセレモニーで山室晋也社長があいさつに立つことはなく、毎年恒例の選手とファンの交流イベント「サポーターサンクスデー」も今年は開催されなかった。 今季、敵地のスタンドの大半がオレンジ色に染まる光景を何度も目にし、サポーターの思いの強さを実感してきた。そんな支え
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記者コラム「清流」 呼子坂のロマンス
富士市原田地区にある「呼子坂」。名称の由来は、富士川合戦の際に源氏の軍勢がこの坂に陣を敷き、呼子笛を吹いて軍勢を集めたというのが定説だ。地元の小学校で地域学習の授業があり、博物館の職員が別の説についても触れていた。 田子の浦の女性と愛鷹山の向こうにいた青年。恋仲の2人は坂を待ち合わせ場所にしていたが、青年が通えなくなり疎遠に。坂には女性の青年を呼ぶ悲しげな声だけが響いていた-。 戦場か、あるいはロマンスの舞台か。文脈や歴史によってその土地の見え方が変わるのは、アニメのモデル地を巡る「聖地巡礼」や、戦跡や被災地を訪れる「ダークツーリズム」など、近年の観光形態にも通じる。 「恋バナじゃん」
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記者コラム「清流」 最初の一歩
「血液が不足しています。ご協力をお願いします」。買い物のため、浜松駅前を歩いていると献血を呼びかける声が聞こえてきた。注射への抵抗感や時間がないことを理由にして、これまで目をそらし続けきたことに罪悪感があった。勇気を出して「初めてなんですが」と声をかけた。 簡単な問診と血液型の検査を受けた後、15分ほどであっさりと献血は終了。看護師が体調を気にかけながら採血してくれたので、不安も感じなかった。献血を定期的に続けているという人を何人か知っているが、最初の一歩を踏み出してしまえば、その後のハードルは低くなりそうだ。 帰り道、自分の一日の価値が少し高くなった気がして、足取りが軽くなった。きっと
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記者コラム「清流」 詩が書けるということ
小学生時代、国語は得意だったが、詩の授業は苦手だった気がする。教科書に載っている情感たっぷりな言葉を少し恥ずかしく感じていたと記憶している。 本年度末で閉校する島田市の神座小。詩人の谷川俊太郎さんとの交流を契機に「詩の学校」として歩んできた。その集大成となる発表会があり、児童は家族関係や季節の変化、学校生活を自らの言葉で表現した。擬音語や擬態語を使い、時には韻を踏む。子どもたちの表現力に驚かされた。 閉校で活動は一区切りを迎える。それでも、磨いた表現力はこれからの人生を豊かにするはず。試しに自分も約30年ぶりに詩に挑戦してみた。仕事なので記事は書けるが、詩はやはりなかなか進まなかった。詩
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記者コラム「清流」 自浄の約束がかすむ
富士宮市議会が、不祥事が相次ぎ政治倫理条例を定めてから1年以上が過ぎて初めて倫理研修を行った。「市民の信頼回復に向けて動き出した」という取材の見立ては早々に崩れた。 22人中6人が欠席。不祥事に関わった議員の姿もなかった。研修は学識経験者が地方議員の資質や住民の期待を2時間に渡って説明したが、不祥事は個人の問題とでも言いたげに目をつぶる議員、とがめられる境界線を知りたくて質問する議員、国政に話題を転換する議員の姿があった。 倫理条例は議会一丸となって自浄すると市民に約束するものではなかったのか。4月の選挙で有権者の投じた一票には、健全な議会を望む声もこめられていた。22人全員が市民13万
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記者コラム「清流」 夢をかなえるよりも
夢をかなえるよりも大事なことは、人に優しくすること―。母校の芳川北小(浜松市南区)で児童の目をまっすぐ見つめ、語りかけたのはJ1復帰を決めたジュビロ磐田の主将山田大記選手。国内外の厳しいプロの世界で戦ってきた山田選手は、思いやりの心を持つ大切さを訴えた。その言葉を聞いた児童は「明日からは笑顔で周りの誰かを助けたいな」とほほ笑んだ。 山田選手が学校を去る時には熱き小さなサポーターたちが列を作って待ち構えていた。「喜ぶかな」と顔を見合わせたり、チャントを大声で熱唱し始めたりした。周りは拍手で見送り、その場の誰もが“ホーム”の雰囲気を楽しんでいた。 夢をかなえ、第一線で