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医療改革、DX推進 待ったなし【日常へ 新型コロナ5類移行㊤】

 新型コロナウイルスは5月8日、感染症法上の位置付けが2番目に厳格な2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に移行される。社会的対応を緩和することで医療や市民生活にどんな影響があるのか。現場の備えを探った。

第8波が収まり、落ち着きを取り戻した医療現場。5類移行の先に待つ変化とは=3月初旬、県内
第8波が収まり、落ち着きを取り戻した医療現場。5類移行の先に待つ変化とは=3月初旬、県内

 「情報の一元管理が欠かせない」
 県病院協会の毛利博会長は、5類移行の転機を捉え医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を図るべきと盛んに訴える。
 8度にわたる感染拡大は医療のアナログな実態を浮き彫りにした。患者の入院調整は保健所が病院に「電話をかけまくって」(関係者)受け皿を探す連続だった。入院調整は今後、行政の関与を薄め、病院間で行う。インフルエンザとの同時大流行のような状況になれば医療現場の手間が増すのは明らか。負の遺産を残すわけにはいかない。
 県は4月に三島市に新設する感染症管理センターでデータ集積のシステムづくりに着手する構えだ。患者情報や空き病床が一目で分かるプラットフォームを想定する。14日の県医療対策協議会で青山秀徳感染症対策局長は「情報を見える化できなかったことは反省点」と3年間を振り返った上で、デジタル化の方向性を説明した。将来的にほかの疾患での活用も視野に入るだけに、実行力が試される。
 5類移行後は「すべての病院が機能に応じて対応する」とした政府方針を実践できるかも焦点になる。
 受け入れ病院に支給される病床確保料(空床補償)は段階的廃止が決まった。県内のある病院を例にとると、同補償はコロナ前に単年度で約6億円あった赤字を黒字に転換させたほどの“恩恵”。医師法は医療者に原則として診療を拒めない応召義務を課すが、医療機関のコロナに対する抵抗感は根強い。複数の病院幹部は「メリットがなくなれば(受け入れを)ためらうところは当然出てくる」と口をそろえる。
 後方支援病院が協力に応じるかの懸念も残る。高齢患者の療養期間が終わっても回復期の転院先が見つからず病床が空かない悪循環は、ずっと解消されなかった。
 医療はもともと、超高齢化の進行を背景に地域医療構想や医師の働き方改革が議論され、デジタル改革と機能分担の必要性は指摘されていた。そこへ新型コロナが直撃し、古くて新しい問題として再認識された。「今度こそ先送りすれば地域医療の行く末に関わる。行政も医療界も覚悟を持って臨まなければならない」。毛利氏の危機感は強い。

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