聖地ウェンブリーでイングランドを撃破!静岡ゆかりの選手も貢献。森保ジャパンのイギリス遠征を振り返る。

サッカージャーナリスト河治良幸

森保一監督が率いる日本代表は“フットボールの聖地”ウェンブリーで、イングランドに1−0で勝利した。これは単なるフレンドリーマッチの勝利以上の意味を持つ。指揮官が強調したのは、座右の銘である「凡事徹底」と「細部へのこだわり」だ。日々のトレーニングで戦術理解を高め、コンディションを整え、選手とスタッフが一体となって準備を積み重ねたことが、指揮官も北中米W杯の優勝候補と認める相手を敵地で封じ込める土台になった。

試合内容を見ても、その言葉には十分な説得力がある。トーマス・トゥヘル監督のもと、エースでキャプテンのハリー・ケイン(バイエルン)を欠きながらも、2ウイング2シャドーという特殊なシステムを操るイングランドの圧力を受ける時間は長かったが、日本は受け身になりながらも組織を崩さず、集中力を切らさなかった。もちろんGK鈴木彩艶(パルマ)のビッグセーブに助けられるシーンはあったが、それも守備が完全に崩された訳ではなく、守備陣との協力関係の中で、想定内の対応だったと言える。

森保監督が繰り返し口にした「理想通りでなくても守り切る」という姿勢は、まさにこの試合で体現された。FIFAランキング4位のイングランドに対して、スコットランド戦に続いて無失点で終えたことは、本気で優勝を目指す本大会を見据えたうえで大きな自信材料だ。W杯では押し込まれる時間帯が必ずある。その局面を冷静に耐えながら、ボールを奪えば効果的なカウンターを繰り出す。

イギリス遠征の2試合では全く異なる相手に対して柔軟に戦い、ゲームをコントロールしながら勝ち切った。スコットランドのように構えて速攻を狙う相手にも、イングランドのように高い位置から圧力をかけてくる相手にも冷静に、時に粘り強く守り、攻撃面で決め手を発揮した。また森保監督が語ったように、ポゼッション能力の高いイングランドに対しても前線からのハイプレスと、自陣でブロックを組んで守る戦いの両方を使い分けることができたことは結果にプラスして、大きな収穫だ。

スコットランド戦、イングランド戦ともに1得点だったが、監督自身が「2点目、3点目を取れるチャンスはあった」と語ったように、ボールを持たれる時間が長いイングランド戦にあっても、守備から攻撃への切り替えは鋭かった。高強度のプレッシャーを受けながらも、中盤を経由して前進し、左の中村敬斗(スタッド・ランス)と三笘薫(ブライトン)、右の伊東純也(ゲンク)と堂安律(フランクフルト)が絡むサイドから崩し、鎌田大地(クリスタル・パレス)の配球能力を軸に、中央での起点作りを両立できた点は、本大会での再現性を期待させる。

森保監督はプラン通りにリードを奪い、逃げ切る戦いをやり切れたことに、ホームで歴史的な勝利をあげた昨年10月のブラジル戦ともまた違った手応えを得たことを明かすが、同時によりポゼッションを高め、相手にシュートチャンスを与えないという部分では、残り2か月半でも改善の余地があることを認める。もちろん何度かあった追加点のチャンスに仕留め切ることができたら、終盤に相手のパワープレーからスリリングな時間帯も回避できただろう。

今回は遠藤航(リバプール)、久保建英(レアル・ソシエダ)、南野拓実(モナコ)、板倉滉(アヤックス)、冨安健洋(アヤックス)と言った“第2次・森保ジャパン”の主力を欠く状況ではあったが、イングランド戦では現在考えられる本番のベスト布陣というものが、概ね想定できる試合でもあった。当初、心配されたシャドーも、これまでウイングバックで起用されることが多かった三笘と伊東が縦の推進力を発揮しながら、守備では同サイドのウイングバックとうまく協力関係を築き、時間帯によってポジションを入れ替えることができる柔軟性を示したことで、森保監督の選択肢に幅ができた。

ボランチに回った鎌田もボール奪取力に優れる“相棒”佐野海舟(マインツ)と良い補完関係を作り、中盤から効果的な攻撃の起点となったことは森保監督も高く評価する。3バックもスコットランド戦に続き、スタメン起用された左の伊藤洋輝(バイエルン)、中央の谷口彰悟(シント=トロイデン)、右の渡辺剛(フェイエノールト)ともに連携面、個人の対応ともに高水準で、何より集中力が高かった。まさしく怪我人の不在を感じさせないパフォーマンスだったが、決勝まで最大8試合を戦う本大会で、選手層の厚さは躍進の鍵になる。

通常はサブの選手が多くスタメン起用されたスコットランド戦は結局、伊東など後半に投入されたメンバーの活躍で決勝点を掴んだが、後藤啓介(シント=トロイデン)、鈴木唯人(フライブルク)、佐野航大(NECナイメヘン)というフレッシュなトリオ、伊東のゴールをアシストした初招集の塩貝健人(ヴォルフスブルク)と言った選手たちのアピールは大きな意味を持つ。またイングランド戦ではスコットランド戦で出番の無かった小川航基(NECナイメヘン)がスタメンの上田綺世(フェイエノールト)に代わり、1トップとして終盤の戦いを引き締めた。

“静岡県勢”という視点で見れば、1年ぶりに怪我から復帰した元磐田の伊藤は2試合ともスタメンで起用されて無失点に貢献しており、最終メンバー入りはほぼ確実だろう。元清水の鈴木唯も攻撃の中心を担ったスコットランド戦だけでなく、すでにリードした状況で投入されたイングランド戦も本人が強みとして自負する運動量や守備の貢献でも価値を示しており、大きなアピールとなった。磐田の先輩と後輩に当たる小川と後藤に関しては、FWの編成プランにもよるが、所属クラブでのパフォーマンスも生き残りの鍵になる。

また今回は残念ながらメンバー入りはならなかった“静岡県勢”にも最終メンバーの有力候補は多い。特に所属クラブのセルティックのホームタウンである、グラスゴーのハムデンパークで、スタンドから日本代表の戦いを見届けた旗手怜央(セルティック)、イングランドのチャンピオンシップで奮闘が目立つ森下龍矢(バーミンガム)など、最後まで諦めることなくアピールを続けてもらいたい。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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