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あわしまマリンパーク 閉館発表から激動の1カ月

 25日に惜しまれつつ閉館した沼津市のあわしまマリンパーク。「思い出の場所にお別れを」「最後の聖地巡礼に」と、たくさんの観光客が訪れました。人出は施設周辺の公共交通機関やホテルにも波及し、特需とも呼べるような事態に。マリンパーク自体も、営業を当初予定から2週間延長する異例の対応を取りました。ひとつの水族館が、多くの人に長く愛されてきたことをしみじみと感じさせた、そんな閉館発表からの1カ月をまとめました。

【発表直後】来館者数が10倍に 静岡県外からも観光客殺到

※2024.2.7 あなたの静岡新聞(内容は当時のまま)

 12日の営業を最後に閉館する沼津市の淡島にある水族館「あわしまマリンパーク」に、静岡県内外から来館者が殺到している。水族館ファンや同館が登場する人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のファンが入場券を求めて連日行列を作り、来館者数は閉館発表前の5~10倍に急増した。駐車待ちやマナーに関するトラブルも生じている。
 2日、営業開始1時間半前の午前8時半。平日にもかかわらずチケットを求める人が約30人並び、駐車場はほぼ満車。バスなどによる来館も加わり、周辺はごった返した。埼玉県から家族で訪れ、最前列に並んだ会社員剱持未菜さん(32)は「休日は避けて、午前2時に家を出た。子どもが大きくなってからまた来たかった」と閉館を惜しんだ。
 船の第1便に乗り込んだのは定員いっぱいの80人。島に着くと「ラブライブ」限定メニューを求めて早速レストランに並ぶ人も。同作とコラボレーションした限定グッズ約10種は、閉館の発表直後に売り切れた。国内最大規模とされる「カエル館」も人気を博した。
 幼い頃から水族館に通う沼津市の飲食業杉山圭介さん(33)は「飼育員との距離の近さやショーの手作り感、ゆっくりと流れる島の時間が魅力。飼育員や動物の今後のことと、島に渡る手段が心配」と案じた。
 同館によると、1月22日の閉館発表以降、収容120台の駐車場は連日満車状態が続き、近隣の施設や民家の敷地内に無断で駐車するマナー違反や、周辺道路の渋滞が起きた。現在は近隣住民の協力を得て、駐車スペースを300台前後に増やした。来館状況を見ながら入場や駐車を規制している。
 閉館を発表したものの、現場サイドでは継続を模索する動きもある。閉館後の従業員や動物について、伊藤裕館長は「現状再開に向けて活動中なので、今しばらく見守ってほしい」と話す。船は従業員と荷物運搬のために必要に応じて運航するという。

【予想以上の反響に対応】「最後の機会」閉館を2週間延期

※2024.2.10 あなたの静岡新聞

 12日の営業をもって閉館するとしていた沼津市の淡島にある水族館「あわしまマリンパーク」は9日、閉館を約2週間延期し、25日に変更すると発表した。理由は予想以上の多くの来館者が訪れていることなどを挙げている。同水族館は「これが最大限の延期であり、最後の機会」としている。
 先月22日の閉館発表後、入場制限するほど来館者が県内外から訪れ、入場しても混雑で水族館を楽しめていないとの声が出ているという。同水族館は「マリンパークを愛するより多くの皆さまに、楽しい思い出をご提供できるよう、精いっぱいのおもてなしに努める」とコメントした。
 水族館ファンのほか、同館が登場する人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のファンが入場券を求めて連日行列を作り、来館者数は閉館発表前の5~10倍に急増。駐車待ちやマナーに関するトラブルも生じていた。
 同水族館は2019年ごろから、オーロラグループ(名古屋市)が経営。立て直しを図ったが、資金繰りが悪化し、施設の老朽化を理由に閉館を決めた。

【水族館周辺でも特需】バスやホテルにも人の波「うれしい悲鳴」

※2024.2.13 あなたの静岡新聞

 沼津市の水族館「あわしまマリンパーク」の閉館を惜しむ駆け込み来館者が1月下旬以降に急増し、地元経済に特需が起きている。水族館が登場する人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」との相乗効果もあり、交通機関や宿泊施設などはにぎわいを見せている。
 東海バスが運行する水族館経由の路線バスは1月22日の閉館発表後、乗客が以前の3倍以上になった。週末を中心に可能な範囲で増便し、10~12日の3連休は乗り場に案内係を配置した。担当者は「平日も乗りきれない場合がある」と驚きを隠さない。入館制限を見越して早朝から訪れる人も増え、混雑のピークとなる時間帯は早まっているという。
 JR沼津駅前の沼津観光案内所が販売するバス往復乗車券と水族館入園券のセットは売り上げが5倍以上に伸びた。混雑で入館を諦めた人からの問い合わせには、別の観光名所を紹介している。
 水族館と同じ離島の淡島にある「淡島ホテル」は、閉館発表からの2週間程度で通常の1カ月分の予約が入った。週末はほぼ満室。運営会社の杉森大樹社長(41)は「短期間でここまで予約が集中することはない」と話す。直前の予約も多く、「従業員に勤務時間や業務内容を変えてもらうなど懸命に対応している」とうれしい悲鳴を上げる。
 影響は水族館から離れた沼津駅周辺にも及ぶ。ラブライブ!で登場した「沼津あげつち商店街」は、水族館の前後に立ち寄るファンでにぎわう。韓国やシンガポールから足を運んだファンもいるという。
 地元の事業者は水族館の営業再開に向けた動きを注視する。宿泊業者は「一定の需要が長く続くのが望ましい。そのために観光施設があるのは強みになる」と期待した。

“聖地巡礼”の大きな効果 沼津市もPR後押し

※2024.2.7 あなたの静岡新聞(内容は当時のまま)

沼津市役所
沼津市役所
 沼津市南部の内浦地区が主な舞台のアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」は放映開始から7年を過ぎてもなお、ファンを引きつける。“聖地巡礼”と呼ばれる作品の舞台巡りは、沼津の重要な観光素材の一つに成長した。一方、息の長い人気となる中で、最近では聖地にも変化が訪れている。
 今月12日には、重要な聖地の一つの水族館「あわしまマリンパーク」が老朽化を理由に、15日にはJR沼津駅南口の公式カフェが再開発の一環で相次ぎ閉店する。両施設には別れを惜しむ来訪者が殺到する。
 聖地巡礼は沼津に多くの観光客を呼び込んだ。市によると、放映翌年の2017年度は、戸田村との合併後最多の462万人を数えた。ただ、コロナ禍で20年度に201万人に減少。その後回復傾向だが、22年度も327万人にとどまる。多くのファンが訪れる三の浦観光案内所の来訪者も17年度の8万4千人をピークに、20年度以降は3万人台でほぼ横ばいだ。案内所の大村文子さんは「23年度は増えそうだが、かつてほど戻っていない。安定したリピーター客は増えた」とみる。
 市は新年度、新たな観光客誘致の軸に台湾からの訪日客を据え、現地旅行会社とのプロモーションやトップセールス費として960万円を計上する。海外でも人気のラブライブとともに売りとするのは、海越しの富士山。頼重秀一市長が昨年11月に訪台、同月には来日した台湾のメディア関係者が自転車で市南部の海岸線を走り、好評だったことに手応えを得た。市観光戦略課の担当者は「ラブライブと合わせ、南部の観光振興を図りたい」と狙う。
 今年1月には台湾の観光関係者が沼津を訪れ、交流を始めた。台湾大手旅行予約サイト「KKday」日本商品開発部責任者の林恭慶さんは「沼津には景色に加え、おいしい海鮮もある」と評価。「当社だけで台湾から月3万人が訪れる御殿場のプレミアムアウトレットから足を延ばすことも可能」と期待する。
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