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電動キックボード 7月1日から規制緩和 利用の変更点をおさらいします

 次世代モビリティー(移動手段)として注目される電動キックボード。道交法改正で7月1日から規制が緩和されました。市街地で安全に快適に利用するためにどのようなことに気を付けたらよいのでしょう。新制度の内容をまとめます。

利用の変更点は? 16歳以上は免許不要/ヘルメット努力義務/自転車と同様の扱い

 電動キックボードは、電動式モーターを搭載し、立った状態で運転できる二輪車。7月1日から最高速度が20キロ以下で、長さ190センチ以下、幅60センチ以下は「特定小型原動機付自転車」に分類され、運転免許は不要になるが、16歳未満は運転できない。

電動キックボードに乗る人
電動キックボードに乗る人
 ヘルメット着用は努力義務になり、車道左側や自転車レーンを走行する。最高速度を6キロ以下に制御できれば、自転車通行可の歩道や路側帯も走れる。違反は交通反則切符(青切符)と放置違反金制度の対象で、3年以内に2回違反をすると講習の受講が義務付けられる。
 
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接触事故の増加懸念 静岡県警、指導取り締まり態勢構築急ぐ

 静岡県内での普及速度は都内などに比べて遅いと想定されるが、歩行者などとの接触事故の増加を懸念する声は多い。静岡県警は研修などで複雑とされる基準やルールの周知に力を入れ、指導取り締まり態勢の構築を急いでいる。

規制が緩和される電動キックボードの基準や注意点を地域交通安全活動推進委員に解説した研修会=6月下旬、静岡南署
規制が緩和される電動キックボードの基準や注意点を地域交通安全活動推進委員に解説した研修会=6月下旬、静岡南署
 「この車体に7月から自転車と同様の交通ルールが適用されるためには、ナンバープレートや方向指示器などを付ける必要がある」「交差点は二段階右折を」
 6月下旬、静岡南署での研修会。展示した電動キックボードを指し、鈴木英文交通課長が地域交通安全活動推進委員に呼びかけた。
 電動キックボードは現行法では原動機付自転車に分類されるが、7月以降は基準を満たせば「特定小型原動機付自転車」に。新制度では、最高速度6キロ以下に設定した場合は歩道も走れるため、歩行者との接触には特に注意が欠かせない。
 自動車のように免許取得の試験や教習はないため、車体販売店やシェアリング事業者などには、年齢の確認作業にも工夫が求められそうだ。警察庁などでつくる官民協議会が取りまとめたガイドラインでは、購入者らの新ルールの理解度を測るテストの実施を求め、16歳未満に使わせたり貸したりすると違反になるとの説明も必要とした。ヘルメットを車体とセットで販売することも要請している。
 関係者によると、一般的に車体は10万円前後から買えるが、県内の流通速度は首都圏より鈍い。ネット販売が主流で、納品が加速するのは8月以降とみられ、今後の具体的な普及予測ができていないのが実情だ。
 県警交通企画課によると、統計開始の2021年8月から23年6月29日までに、県内で発生した物件事故は3件。2件は単独で、残り1件は21年11月、浜松市で男性のボードが軽乗用車と出合い頭に衝突。男性はナンバープレートや方向指示器などを備えていない整備不良状態で無免許運転し、交差点で一時停止しなかったとして、道交法違反の疑いで書類送検された。
 全国で23年4月までに把握する人身事故は86件で、都内では22年9月、飲酒運転が疑われる死亡事故が全国で初めて起きた。マンション駐車場で、50代の男性が運転して車止めに衝突し、頭を打って死亡した。
 県警交通企画課の担当者は、「原付」と同様に車体ナンバーの交付作業などを担う市町との連携も加速させるとした上で「非常に複雑なルールの周知に力を入れる」と強調。適正な指導取り締まりに向け、各署で研修も進めているとした。
 (社会部・荻島浩太、大村花)
〈2023.6.30 あなたの静岡新聞〉

昨秋、沼津で社会実験 一定の需要うかがえるも課題は安全面

 沼津市は、市中心部や沼津港周辺で2022年9~10月に実施した電動キックボードの社会実験結果を公表した。国内類似の社会実験と比べて3~4倍の587回、約15万5千円の利用と売り上げがあり、一定の需要がうかがえた。一方、利用者アンケートでは3割が「危ない」との感想を記すなど、安全面での課題も浮かび上がった。

電動キックボード社会実験利用者の年代
電動キックボード社会実験利用者の年代
 実験は9月17日~10月16日に実施した。国の特例を使い、ヘルメット着用は任意とした。利用者は226人で、平均走行距離は2・18キロ、利用時間は12分だった。利用者は47%が市内在住、26%が県外在住で、観光と街乗り需要が併存する傾向がみられた。利用者の世代別では55%が30代以下だった。
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社会実験を前に電動キックボードの試走をする市職員=2022年9月、沼津市大手町

 140件の回答があったアンケートでは、複数回答の感想で66%が「移動が楽しい」とする一方、34%が「危ない」とした。路面のへこみによる振動で体勢が不安定になる点や、車による幅寄せなどの危険を訴える声もあった。
 市の関野勇治まちづくり統括監は「新たな移動手段としての潜在力がある。一方で安全面の問題は対応を検討したい」とした。
(東部総局・尾藤旭)
〈2022.11.25 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞