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新たな「しずまえ」の誕生 サーモン、サバを三保の「ご当地名物」に

 静岡市清水区の三保半島でご当地サーモンの三保サーモンを陸上養殖する日建リース工業(東京都)が、第2弾としてマサバの陸上養殖に挑戦し、近く試験出荷が可能になりました。同社が事業主体となり、三保でトラウトサーモンの養殖に乗り出したのは2019年のこと。サーモン、サバで地域ブランド化を目指す動きをまとめました。

陸上養殖「三保松さば」試験出荷へ サーモンに続きマサバ挑戦 静岡・日建リース工業

 静岡市清水区の三保半島でご当地サーモンの三保サーモンを陸上養殖する日建リース工業(東京都)が、第2弾としてマサバの陸上養殖に挑戦し近く試験出荷が可能になった。生食文化がない静岡や関東地方でサバの刺し身が食べられるようになるという。同社は地元の三保松原にちなみ「三保松さば(みほのまつさば)」と名付けた。

新ブランドの「三保松さば」を示す管理スタッフ=静岡市清水区三保の日建リース工業養殖場
新ブランドの「三保松さば」を示す管理スタッフ=静岡市清水区三保の日建リース工業養殖場
 20日に同社が発表した。「騒音などストレスに弱くデリケート。いけすの壁にぶつかって死んでしまう個体もいる」と話すのは管理スタッフの佐藤豊さん(50)。三保サーモンも養殖してきたが、魚種ごとの成育方法の違いをクリアするため、手探りで試行錯誤してきた。1年ほど前に和歌山県内の業者から養殖の稚魚1500匹を購入。今では体長約20センチ、重さ400グラムまで育ち、これまでサーモンを育ててきたいけすで元気に泳いでる。
 三保松さばには、年間18・5度で一定している清浄な地下海水を掛け流しで利用する。天然ものの場合、生食には寄生虫などのリスクが伴うが、三保松さばは寄生虫を殺すための冷凍などは不要だ。酢で締める必要もなく、刺し身で味わうことができる。
 同社営業本部事業開発部の渡辺将介部次長は「九州の一部にはサバの生食文化がある。三保松さばの身質は脂がのっていて刺し身に向く。レバーや白子など内臓も生で味わってもらえる」と味に太鼓判を押す。
 全国的にはJR西日本が鳥取県で地下海水を使って陸上養殖し、「お嬢サバ」の名前で売り出し中のマサバが有名。他にもサバの陸上養殖の例はいくつかある。ただ、サバは足が早いため地元でしか味わえない面もあり、関係者は「まさに『しずまえ鮮魚』として、地元向けの水産物として根付かせたい」と期待する。将来的には年間2トン程度の出荷を目指すという。
(清水支局・坂本昌信)
〈2023.6.21 あなたの静岡新聞〉

寄生虫なしのトラウトサーモン 清水区に新養殖施設 静岡市支援へ

※2019年6月4日(火) 静岡新聞夕刊から

 寄生虫アニサキスの心配がない「アニサキスフリー」のトラウトサーモンを養殖する国内初の施設が、静岡市清水区三保に整備されることが4日、分かった。市は同日発表した2019年度一般会計6月補正予算案に施設整備の助成費4千万円を計上し、支援することを明らかにした。
 トラウトサーモンは海水で養殖されたニジマスの総称で、サケとは異なる。施設はアニサキスが存在しない三保の地下海水をくみ上げて、海水適応能力がついたニジマスの稚魚を水槽に入れ、食中毒予防のための加熱や冷凍をせずに活魚のまま流通させることができるトラウトサーモンを養殖する。旧三保文化ランドの敷地内に整備する。事業主体の日建リース工業と、東海大、地元金融機関、市が連携して地域ブランド化を目指す。
 市は食品加工業や観光業など地域経済への循環と活性化が期待できる事業として、今月中に総務省の「地域経済循環創造事業交付金」に申請する。
 出荷開始は2020年6月を予定。生産量を段階的に拡大し、24年度に55トンを目指す。
 補正予算案は19億4600万円の追加。ほかに日本平公園の駐車場整備に9100万円、サクラエビの記録的な不漁に伴う漁業者、食品加工業者、飲食業者の支援に1500万円を盛り込んだ。同市駿河区久能の国道150号拡幅工事などの道路整備には9億1千万円を計上した。
 企業会計は、下水道施設の浸水対策費8億1500万円などを含め、計10億4700万円を追加する。

陸上養殖「三保サーモン」出荷本格化 大手外食チェーンとも連携

 静岡市清水区のご当地サーモン「三保サーモン」の出荷が養殖開始から1年を経て本格化しそうだ。12月17日には区内のホテルで田辺信宏市長らが参加した試食会が行われるのをはじめ、大手外食チェーンによる販売促進キャンペーンなどが発表される予定。関係者は「持続可能な開発目標(SDGs)にかなった食材として全国にアピールしたい」と陸上養殖サケに期待を込める。

三保半島の地下海水で育った出荷直前の「三保サーモン」
三保半島の地下海水で育った出荷直前の「三保サーモン」
 三保サーモンは総合リース業の日建リース工業(東京都)が手掛ける。ことし11月から数百キロを都内の高級すし店など10店舗に試験出荷したところ、「滋味のある上品な味わい」と好評だった。清浄な地下海水を掛け流しで陸上養殖に利用していて、寄生虫などを殺すための冷凍をする必要がないという。地下海水は水温が一定しているため安定的に通年出荷できるのも売りだ。
 「信州サーモン」など先駆的なご当地サーモンに比べ、1本当たり1・5倍する高価格が最大の課題となっている。同社は本年度、回転すし「かっぱ寿司」などを展開するコロワイドグループなど数社と消費拡大で連携する。「水産庁バリューチェーン改善促進事業」にも採択された。日建リース工業の渡辺将介部次長は「まずは販売の道筋を作り、このチェーンを太くしていきたい」と話す。
 連携企業で構成する「地下海水陸上養殖サーモンバリューチェーン改善促進協議会」はこれまで、オンラインで全体会合を2回開催した。「優れた食味の理由を科学的に追究するべき」などといった声が出たほか、生産コストを下げる方法について議論した。持続可能な海洋資源の利用を掲げるSDGsにかなった食材として付加価値をアピールすることも検討する。
 養殖場は静岡市などの補助を受けて2020年10月に完成し、11月に養殖を始めた。出荷計画では、21年度に20トン、22年度に30トンを目指すという。
(清水支局・坂本昌信)
〈2021.12.13 あなたの静岡新聞〉
 

給食に三保サーモン 静岡市立小中で提供 児童ら笑顔、食育の一環

 ご当地サーモンとして売り出し中の三保サーモンを子供たちに味わってもらおうと、静岡市は本年度最後の「わくわく給食」で市立小中学校120校の児童生徒約4万5千人に「三保サーモンバーガー」を提供している。19日は清水駒越小の児童らが三保半島で陸上養殖された三保サーモンを味わった。

三保サーモンバーガーをほおばる児童=静岡市清水区の清水駒越小
三保サーモンバーガーをほおばる児童=静岡市清水区の清水駒越小

 提供は16日から24日まで。地産地消の食育の一環で年6回あるわくわく給食。本年度はサクラエビのかき揚げやシラス丼がメニューになってきた。清水駒越小には養殖施設を運営している日建リース工業の担当者が訪れ全校児童らにオンラインで「健康でおいしい三保サーモンを味わって」と呼びかけた。
 陸上養殖には温度が一定している清浄な地下海水を掛け流しで利用しているため、魚が病気になりにくいとされる。教職員も含めて約300食分のサーモンのフライを挟んだバーガーが提供された同校の1年2組ではおかわりをする児童も。北川雄貴君(7)は「身が柔らかくておいしかった」と笑顔だった。
(清水支局・坂本昌信)
〈2023.1.20 あなたの静岡新聞〉
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