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静岡県内で大麻事件、摘発相次ぐ 若年層への拡大防げ!

 静岡県内の大麻事件の摘発者数が2022年に初めて覚醒剤事件の摘発者数を上回りました。また、ここ数カ月、大麻取締法違反の疑いのよる逮捕者が静岡県内で相次いでいます。大麻の摘発者は30歳未満が7割近くを占め、若年層の乱用拡大が深刻な状況となっています。静岡県内での大麻事件、また若年層への拡大を防ぐための啓発活動などをまとめました。

大麻摘発者、覚醒剤超え 30歳未満が7割 22年の静岡県内

 静岡県内の大麻事件の摘発者数が2022年に初めて覚醒剤事件の摘発者数を上回ったことが30日までに分かった。大麻の摘発者は30歳未満が7割近くを占め、若年層の乱用拡大が深刻な状況となっている。県は関係機関と連携し、大麻の危険性や有害性に関する情報発信を強化する。薬物問題に悩む若年層を支援するため、相談窓口の周知を図る。

県内の大麻と覚醒剤事件の摘発者数推移
県内の大麻と覚醒剤事件の摘発者数推移

 県によると、県内で22年に大麻事件で摘発されたのは158人。過去最多の180人となった21年からは22人減少したものの、30歳未満はほぼ横ばいの106人に上り、3年連続で100人を超えた。一方、覚醒剤事件の摘発者は減少傾向が続く。22年は前年比52人減の152人で、大麻事件の摘発者を初めて下回った。
 大麻は薬物依存の「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」とも呼ばれ、22年は初犯者の割合が65%を占めた。交流サイト(SNS)の普及で大麻を入手しやすい環境にあることに加え、「健康に害がない」などの誤った情報がインターネットに氾濫していることが要因とされる。
 県は「今後の薬物乱用は大麻を中心に広がる恐れがあり、乱用期とも言える極めて憂慮すべき状況」と指摘。県警や東海北陸厚生局麻薬取締部とつくる県薬物乱用対策推進本部で、学校や地域社会での広報啓発活動の推進、取り締まりと監視指導の徹底、薬物問題を抱える人への支援に取り組む。
 23年度は新たに高校や特別支援学校の保健主事を対象とした薬物乱用に関する研修を実施し、学校現場での指導充実につなげる。静岡デザイン専門学校(静岡市葵区)の学生の協力を得て、薬物乱用の専用相談窓口をPRするポスターを製作し、大麻問題に悩む若年層が相談しやすい環境をつくる。
 対策推進本部の本部長を務める森貴志副知事は「大麻の危険性や有害性を軽視するような情報がネットで簡単に手に入り、極めて大きな問題」とし、ウェブ動画広告やSNSを活用した情報発信に継続して取り組む必要性を指摘する。
(政治部・森田憲吾)
〈2023.5.31 あなたの静岡新聞〉
 

伊豆の別荘で大麻草大量栽培 暴力団組幹部ら5人逮捕

 伊豆市内の別荘で大量の大麻を営利目的で栽培していたとして、大仁署と静岡県警薬物銃器国際捜査課、組織犯罪対策課、捜査4課は7日までに、大麻取締法違反(営利目的所持・栽培)の疑いで指定暴力団山口組系組幹部ら5人を逮捕した。静岡県警によると、別荘などから押収した大麻草や乾燥大麻は計6キロに上り、末端価格約3千万円。組幹部らの活動拠点は長野県内とされ、静岡県警は密売ルートの特定を急ぐとともに、暴力団組織の指示系統などの突き上げ捜査を続ける。

伊豆市の別荘内で水耕栽培されていた大麻草=4月(県警提供)
伊豆市の別荘内で水耕栽培されていた大麻草=4月(県警提供)

 逮捕されたのは、長野県に拠点を置く山口組系組織でともに組幹部の無職の男(45)=長野県諏訪市=、会社経営の男(58)=伊豆の国市南條=、同組員の無職の男(28)=長野県下諏訪町=、会社役員の男(43)=伊東市宇佐美=、無職の男(50)=浜松市南区安松町=の5容疑者。
 5容疑者は何者かと共謀して4月5日、伊豆市の別荘で、営利目的で大麻草66本(約1・3キロ)を栽培し、乾燥大麻約3・4キロを所持した疑い。無職の男(28)と会社役員の男(43)は3月30日、伊豆市の飲食店駐車場で乾燥大麻約1・2キロを所持した疑いも持たれている。回収役などを務めていた両容疑者を、同駐車場付近で大仁署員が職務質問し、栽培拠点の摘発につなげた。
 薬物銃器国際捜査課によると、無職の男(45)は会社経営の男(58)と無職の男(28)の上位に位置する指示役とみられる。無職の男(50)が別荘の現在の名義人とされ、会社役員の男(43)は栽培の実行役とみられる。
 人目につきにくい別荘をアジトに、遅くとも冬ごろから室内で栽培を続けていた可能性が高い。雨戸を閉め切り、エアコンは常時稼働している状態で、サーキュレーターやLED太陽光器具も備えていた。栽培環境の維持管理は会社役員の男(43)が担っていたとみられる。
 県警によると、大麻栽培に暴力団幹部が直接携わるアジト摘発は極めて珍しい。県警は5容疑者の具体的な役割や伊豆市に拠点を構えた経緯を調べるとともに、栽培された大麻が県内のほか、関東圏に流れていた可能性も視野に組織の実態を解明していく方針。  見慣れない人物出入り/段ボール箱搬出
 長野県を拠点とする指定暴力団山口組系組幹部ら5人が共謀して大量の大麻を栽培していたとされる現場は、付近に木々が生い茂る伊豆市山間部の別荘地。人通りは少なく、周りは静寂に包まれている。近隣住民によると、見慣れない人物の出入りが今年に入ってから確認され、警察からも状況を聞かれたという。
 近隣住民によると、別荘には元々高齢夫妻が住んでいたが、昨年末ごろまでに引っ越し、建物は売りに出されたという。今年に入り、毎週木、金曜の昼ごろから県外ナンバーの車やトラックが数時間にわたり駐車していた。見慣れない男が別荘から段ボール箱を搬出したこともあったという。付近に住む70代男性は「こんな所で大麻栽培が行われていたのは驚いた。(暴力団が関与していたというのが)何より怖い」と話した。
〈2023.6.8 あなたの静岡新聞〉

液体大麻密輸容疑のベトナム人3人 荷受け複数回 押収量、静岡県内最多 焼津署など

 ベトナムから液体大麻約1キロを密輸入したとして、焼津署と県警薬物銃器国際捜査課に大麻取締法違反(営利目的輸入)の疑いで逮捕された団体職員の女(36)=大阪市西区=らベトナム国籍の男女3人が、液体大麻が隠された国際郵便物を「荷受け」役として複数回受け取っていたとみられることが3日、県警への取材で分かった。発覚を恐れるための工作とみられ、県警は配送先などを指示する別のベトナム人の仲間の存在を視野に突き上げ捜査を継続する。

金属製のシャンプーボトルに入れられた液体大麻(写真手前)。ベトナムの食料品などと一緒に密輸入された(県警提供)
金属製のシャンプーボトルに入れられた液体大麻(写真手前)。ベトナムの食料品などと一緒に密輸入された(県警提供)
 同課によると、押収した液体大麻は約965グラムで、統計が残る1999年以降で県内の最多量になった。
 液体大麻は昨年8月6日、国際スピード郵便物で成田空港に到着。金属製のシャンプーボトルに入っていて、ベトナムの調味料や食料品などと一緒に梱包(こんぽう)されていた。通報した名古屋税関清水税関支署と県警で共同捜査した結果、3人がベトナム人同士でSNSなどを活用し、同様の手口で密輸入を重ねていたことが判明した。
 3人は荷物を受け取った際、自分の生活品を取り出して新たな送り先に転送していた。県警は3人が手数料などを得る形で荷受けを担っていたとみて、組織の実態を解明する。
〈2023.3.4 あなたの静岡新聞〉

大麻危険性、若年層へ啓発 静岡県対策本部 ウェブ広告活用へ

 静岡県や県警でつくる県薬物乱用対策推進本部はこのほど、県庁で会合を開き、大麻事件の摘発者が急増していることを受けて若年層への啓発活動を強化する方針を決めた。インターネット上で「有害性はない」などの誤った認識が広がっているとして、ウェブ広告を活用した情報発信に取り組む。

静岡県内の大麻事件摘発者の推移
静岡県内の大麻事件摘発者の推移
 静岡デザイン専門学校(静岡市)の協力を得て大麻の危険性や有害性を伝える動画を制作し、ユーチューブやテレビ番組配信サイトを視聴する若年層向けに広告として流す。不動産会社を通じ、1人暮らしを始める学生らに薬物乱用防止を呼び掛けるリーフレットも配る。
 県内で2021年に大麻事件で摘発されたのは前年比17人増の180人と過去最多だった。増加は7年連続。10~20代の青少年が全体の6割を占め、初犯者率は8割を超えた。
 会合では若年層のまん延に関し「極めて憂慮すべき状況」との認識を共有した。ネットの普及で大麻を入手しやすい環境にあることや、危険性に関する誤った情報が氾濫していることが要因とみられる。
 本部長を務める出野勉副知事は「関係機関が連携し、啓発活動と取り締まり、(薬物依存者の)フォローアップに取り組んでいきたい」と話した。
 21年度に県内の小中高校や大学で実施した薬学講座や講習会の実施率が100%に達したことも報告した。22年度も引き続き全校実施を目指す。
(政治部・森田憲吾)
〈2022.5.31 あなたの静岡新聞〉
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