能登、みなし仮設2800戸利用 輪島珠洲に賃貸物件少なく

 能登半島地震で、自宅が全壊するなどして住めなくなった人に賃貸のアパートなどを自治体が借り上げる「みなし仮設住宅」の利用が8日時点で2873戸になったことが17日、石川県への取材で分かった。入居先は多い順に金沢市、野々市市、内灘町、七尾市などで、県外も26戸。人数は不明だが、同県の世帯平均人数からの推定では約6700人になる。被災前に住んでいた地域から遠く離れる場合が多く、孤立化対策が重要になる。

石川県輪島市で建設が進む仮設住宅=15日
石川県輪島市で建設が進む仮設住宅=15日

 建設型の仮設住宅は5382戸が予定されており、近年の災害で主流となっているみなし仮設の割合は低くなる見通し。被害が甚大な輪島、珠洲両市など奥能登地域での賃貸物件が少ないことが影響している。
 みなし仮設は整った環境に迅速に移れることもあり、近年の災害では建設型よりも多く利用される傾向となっている。
 2016年4月の熊本地震では7カ月後に建設型4303戸が完成した時点で、みなしの入居申請は約1万1千件あった。18年の西日本豪雨では、1年後に岡山、広島、愛媛の3県で建設型に約1200人が住んでいたのに対し、みなしは約8200人だった。
 一方みなしでは、従来のコミュニティーから切り離されるため支援の手が行き届かず、入居者が孤独死するケースも過去の災害ではあった。また入居先で生活が安定した場合、元の居住地に戻らず、人口流出につながることも懸念されている。
 能登半島地震でも、みなし仮設は金沢市周辺に多く、奥能登地域まで現状では車で2~3時間かかる。片付けや手続きなどで通う人もおり、県に協力する不動産業者団体は「奥能登には物件がほとんどなく、高齢者は地元を離れることに抵抗感もある。輪島や珠洲に近く通いやすいところから埋まる印象だ」と話す。

 みなし仮設住宅 災害救助法に基づく応急仮設住宅の一つ。プレハブなどの建設型仮設住宅とは異なり、アパートなど民間賃貸住宅を仮設住宅とみなして自治体が家賃などを払って借り上げ、自宅に住めなくなった被災者が入居する。用地の確保が必要なく、迅速に入居できるため、東日本大震災以降の大規模災害では主流になっている。入居期限は建設型と同様に原則2年で、延長される場合がある。被災者が自力で物件を見つけるほか、自治体が確保して提供することもある。

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